2018人間環境実習・演習B期末発表会(1)

能海寛生誕150周年記念シンポの報告
7月18日(水)、表記の会が開催され、ASALABは大トリを務めました。中間報告に引き続き、能海寛『世界に於ける仏教徒』輪読および口語訳だが、 今回はこの本の最も重要な位置を占める、第八章と第九章を訳すことにした。また、7月8日(日)に浜田市金城町で開催された能海寛生誕150周年記念シンポの概要についても報告する。

最初に能海寛と彼の著作『世界における仏教徒』について簡単に復習しておく。能海は島根県浜田市の浄蓮寺に生まれた明治の僧侶である。明治維新後、西洋文明と科学技術が流入する時代にあって、衰退するキリスト教にとってかわる世界宗教としての「新仏教」を構想した若い革新的な僧侶である。とりわけサンスクリット(梵)語で書かれた古代インドの仏典に注目し、その直訳経典を残すチベットへの入国をめざした。
明治26年(1893)に出版した『世界における仏教徒』で、能海はアジア各地の仏教国を訪問してサンスクリット古典やチベット仏典を収集し、その翻訳、とくに英訳により宗派を超えた普遍的宗教としての新しい仏教を提案する。

今年は明治150年にあたる年だが、じつは能海寛生誕150周年でもある。7月8日、これを記念するシンポジウムに5名で参加してきた。まずシンポジウムが始まる前に能海が生まれ育った浄蓮寺を訪れた。江戸時代から続く浄土真宗の古刹だが、現在の建物は、能海寛がチベットに旅立つ前に設計を依頼しておいたものである。能海の死後、大正5年(1916)に本堂や山門が竣工した。山門脇の顕彰碑は、昭和57年に町民の寄付によって完成したものである。
下にシンポジウムのチラシと構成を示す。主催は能海寛研究会、会場は金城町波佐の公民館(ときわ会館)である。基調講演からパネルディスカッションの終了まで4時間を要する長丁場だった。ここでは、印象に残ったパネラー3名の発言を取り上げる。


まず能海寛研究会長の岡崎さんは、能海に関わる研究が著しく進展していることを強調された(↑)。著作集の刊行がその代表的成果である。今後は研究会で『世界に於ける仏教徒』を現代語訳される予定だと言われた。環境大学の若い学生たちがすでに口語訳にチャレンジし始めているが、自分たちは若者とちがう「大人」のやりかたでやっていくと宣言された。 私たちの訳については、影響されるのがこわいので、敢えて読まないようにしているそうだ。

高野山大学の奥山さんは仏教学の専門家である(↑)。能海寛を調べているほとんどの人がチベット学者ということで、能海寛=チベットというイメージが定着しているけれども、チベットは能海の一部でしかないことに注意すべきだと述べられた。能海は地域貢献や若い世代の教育にも尽力しており、もしチベットから生きて帰ってきたら、故郷の浄蓮寺に戻って地域貢献をしていただろうと想像されていた。また、仏教者としての能海については、西洋の宗教学者が主張する「大乗非仏説」に納得できないようだと述べられた。大乗非仏説については、あとで説明する。
飯塚さんは東洋大学東洋文化研究所の客員研究員で、やはり仏教史の専門家である(↓)。東洋大学の前身は能海が語学などを学んだ哲学館であり、飯塚さんは能海を尊敬すべき大先輩と考えられており、この秋には大学で能海生誕150周年事業を開催するという。(Task)


↑発表風景
《連載情報》中間発表
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1802.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1803.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1804.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1805.html
(5)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1806.html
(6)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1807.html
《連載情報》期末発表
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1850.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1851.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1852.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1853.html
(5)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1854.html