2018人間環境実習・演習B期末発表会(3)

第九章「仏教国の探検」概要(1)
能海は第9章「仏教国の探検」の前半部分で上のスライドのような内容を述べている。

まず探検(実際に他国へ赴き、様々な調査をすること)の必要性を能海は主張 し、以下のように述べている。
【原文】漢文読み下し調文語体
教家の探検に二種ありて、一は伝道開教の為め(略)。今、予が将に爰に論ぜんとする所は、第二仏教国の探検にして、是最も今日の急務なり、仏書の原本を 得んと慾し、又古今仏教伝播の状況及び仏教の正史を探らんと欲せば是非古来よ り仏教の伝りたる国々に向いて探検を試みざるべからず。
【口語訳】
宗教家の探検には二種類あり、一つは布教のためのものです(略)。いま私がまさにここで論じようとしているのは、第二仏教国の探検であり、これは今日の最大の急務です。仏典の原本を手に入れようと思うのなら、また過去から現在に至るまで仏教が伝わる状況や、仏教の歴史を調査しようと思うのなら、必ず古くから仏教が伝わった国々に出向いて探検を試みなければなりません。
ここにいう「第二仏教国」とは、インドからまず仏教が伝わった国を指すものと思われる。上座部仏教ではスリランカ、大乗仏教ではアフガニスタン、チベット仏教ではチベットが第二仏教国にあたるであろう。

アメリカ大陸の発見について興味深い記録が残っているようだ。
【原文】漢文読み下し調の文語体
鈴木氏著の『亜細亜人』(政教社、1891年)の報に由れば、米国の発見は巳にコロンブスに先だつ数百年前に於て、亜細亜人の発見したりし所にして、特に仏教の僧侶なりと云う。(略)古代の仏教何ぞ夫れ活発なる。
【口語訳】
鈴木券太郎氏の著書『アジア人』などの報告によれば、アメリカ大陸の発見は、コロンブスに先立つ数百年前、すでにアジア人がなしており、その発見者は仏教の僧侶であったといいます。(略)昔の仏教はどうしてそこまで活発だったのでしょう。
つまり、昔の僧侶は布教伝道のためアメリカ大陸にまで遠征していたということである。


布教活動に全力を尽くしたエネルギッシュな昔の僧侶と比較し、現代の僧侶の腐敗について嘆いている。
【原文】漢文読み下し調の文語体
今日の僧侶は交通自由なる上に、且つ欧米に於て求て止まらざる仏教の弘通に尽力せず、僅かに宗派内の争いに汲々として、或は何宗の紛議、或は堂班位階の競争、些細なること齷齪し、虚偽的、野蛮的、無神経無気力事業にむなしく日月を費す。嗚呼、末代なる哉。
【口語訳】
今日の僧侶は交通が自由である上に、欧米の人たちが求めてやまない仏教の布教に尽力しないで、ただ宗派内の争いに汲々として、宗派の紛争・議論が起きたり、権力闘争や出世争いが起きたりしています。些細なことにあくせくし、虚偽的で野蛮で、無神経・無気力な事がらにむなしく時間を費やしています。あぁ、世も末ですね。

次に能海は新仏教徒の必要性を主張する。堕落した仏教を改革するには新仏教徒が必要であり、鑑真和尚を例にとり僧侶のあるべき姿を以下のように述べている。
【原文】漢文読み下し調の文語体
彼等旧仏教の腐敗せる脳髄を撃破し、真正なるブッダの光明を発揮する新仏徒生ぜずんば、此教界の乱世を如何にせん。(略)又鑑真和尚が十二年の日月をば波浪の間に送り、遂に日本に渡りて、戒律を伝え玉いしが如き。東洋諸国の文明は、多く仏教の生み出せし所なりしにあらずや。
【口語訳】
彼ら旧仏教の腐敗した脳髄を打ち砕き、真正なブッダの光明を発揮する新仏教徒が生まれなければ、この宗教界の乱世をどのようにしたらよいのでしょう。 (略)また鑑真和尚が十二年の日月を波の上で過ごし、遂に日本に渡り、戒律を伝えられたような一例もあります。東洋諸国の文明というのは、多くは仏教徒が生み出したものでありませんか。(NS)

チベット入国を急がねばならない理由について、能海は以下のように述べている。
【原文】漢文読み下し調の文語体
固より東洋諸国、皆仏教の伝播せる所なれば、各地皆必要なり。然れども、前後あり順序あり。予が最も急務と感ずるものは、西蔵国なりとす。(略)仏教国の探検、豈仏徒の大に着眼すべき者に非ずや。
【口語訳】
もとより東洋諸国はみな仏教が伝播したところなので、各地の探検が必要です。しかしながら、優先順位があります。私が最も急務だと感じるのはチベットです。(略)チベットのような仏教国の探検は仏教徒がおおいに着眼すべきもの ではないでしょうか。

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