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河本家住宅家相図の研究(1)

河本家 家相図 スキャン_01web 0803河本01家相図01縦sam


河本家家相図について

 東伯郡琴浦町箆津の河本家住宅は、1期生のタクヲが卒業論文で取り組み、その成果を編集して報告書を刊行した。その結果、敷地内のほぼすべての建造物が重要文化財に指定されたのだが、報告書刊行から指定に至る2006年ころに大きな家相図が発見された。これについては、坂本啓司さん(当時県博)が短い紹介文を残している。その書類から基本情報を転載しておこう。
  (1)材質 紙本彩色
  (2)法量 227.5×142.5㎝
  (3)年代 嘉永七年(1854)年9月 *袋表紙の記載
 発見後、十年以上が経過してしまったが、重要な資料であることは承知しつつ、一般的な指図ではなく、「家相図」ということで分析を躊躇していたところもある。しかしながら、今春より4年生のうち1名の卒業研究として取り組んでもらおうと考えはじめ、5月下旬に土間に展示されている家相図の複写を拝借し、複写の複写をさせていただいた。ところが、原図があまりにも大きいものであり、複写図は全体をカバーしていないことが判明した。また、就活のため担当学生が本格的に分析する時間も限られていたので、オープンキャンパス前に有志で原図を調査することになった。以下は卒論担当の小次郎さんの感想文を生かしながら、8月3日の調査成果をまとめたものである。(教師)


0803河本01家相図02 20180803河本家 11


卒論調査へ

 8月4日(金)、相変わらず日差しが強く暑い一日でした。私(小次郎)の卒論のテーマである河本家住宅の家相図の調査をおこないました。メンバーは先生、会長さん、院生、4年二人、3年一人の計6名です。私は河本家を訪れるのは今回が初めてです。門をくぐるとそこは別世界。茅葺の屋根にしばらく目を奪われました。
 元気で明るい奥様に挨拶をした後、畳二畳ほどもある実物の家相図の調査を始めました。想像していたより色が鮮やかで印象的でした。前日まで会長さんと先生は、この絵図の全体をどう撮影すべきか考えをめぐらされていたようで、研究室から数十ものクリップを持ち出していたのですが、結論から申し上げますと、全景の撮影は断念しました。部分撮影を重ねあわせフォトスキャンを活用し合成写真として仕上げるしかない、と判断したのです。真上から撮れないところは4方向から写し重ねることでなんとかオルソ写真を作りたいのですが、成功するかどうかは分かりません。


20180805230437d9f.jpg


 これまでフォトスキャンと言えば、何度もマックにバグを発生させ学生を苦しめてきましたが、前週末、フォトスキャン専用のハイスペック・パソコンが保存修復スタジオに搬入されたばかりです。今年はおもに摩尼山の空撮による地形・植生合成CG制作に使う予定を組んでいましたが、家相図のオルソ写真作成にも貢献してくれることを期待しています。現場での絵図撮影は時間がかかりました。下(↓)にみるように、自然光の濃度が室内は微妙にグラデーションしているので、LEDで2方向から照らしながら光をできるだけ均一化しつつ撮影したのです。
 午前中はこの作業に集中しました。途中、琴浦町教委のNさんが来られ、基礎資料をご提供いただきました。いままさに発掘現場に出てらっしゃるそうで、こんがりと焼けた肌から過酷な現場の様子が想像できました。ご本人が「タイ人か」と言われるとおっしゃると、先生が「タイ人はそんなに黒くないよ、パプア人レベルだ」と返されたぐらいよく焼けておられました。


201808052304292dd_20180806132013c09.jpg


 
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↑袋  ↓(左2枚)貼り紙 (右1枚)家相図北西の家系図
0803河本01家相図03貼り付け01 0803河本01家相図03貼り付け02 0803河本01家相図04干支03家系01


袋残欠と貼り紙数枚

 家相図がおさめられている袋が表裏剝れた状態で残っています。表に以下の墨書が記されています。

   嘉永七年寅季秋
   家相絵図面
       河本家

 これと関連して絵図本体の北西隅に歴代当主・妻の生年を添書しています。町教委提供の資料もこの点に触れていますが、じつは書いてあることの意味がよく分かりません。絵図の作成は嘉永七年(1854)でよいと思われます。
 さらに絵図に貼り付けていた貼り紙が剝れた状態で9枚残っています。おそらくこの家相図は近代まで使われていて、当主ごとに貼り紙をして間取りの変化を表現したのでしょうが、それが剝れてしまったようです。フォトスキャンで家相図の全体を合成し、貼り紙部分もスキャンすれば、パソコン上の操作でどこに貼られていたか復元できるかもしれません。


0803河本01家相図04干支01


 午前は一時間ばかり撮影をして、昼は近くの定食屋さんで牛骨ラーメンを食べました。午後からは以下の3班に分かれての活動です。

 ①河本家住宅全体の写真撮影(1名)
 ②家相図に表現された庭木・石を番付し、それと対応しそうな現存物をポラロイドで
  撮影し、さらに一眼レフで撮影(2名)
 ③家相図と異なる間取り・配置の場所を観察し、痕跡をチェック(3名)

 院生と私は、先生の指導のもと③の間取り調査班に加わりました。家相図と現状の部材(鴨居・敷居・差鴨居など)を対照し、この「家相絵図面」は家相図というよりも、制作時の現状図を示すものである可能性が高く、幕末期の間取りや建物配置を知る重要な根拠になることが分かってきました。家相図とはむしろ家に財福をもたらすための間取りや建物位置の修正計画図というイメージがあり、だからこそ分析に二の足を踏んできたところもあるのですが、河本家の場合、復原資料としての価値は高いことになります。


0803河本02間仕切りのあった部分01 20180803河本家 5


 現状と家相図で最も異なるのは土間境の広間(イロリ間)とその周辺です。式台から入る前側の玄関は十畳で、四枚障子を挟んで奥側の広間も現在は十畳ですが、家相図は「十五畳半」となっています。つまり、現在のダイニングとの坂の四枚障子は後付けであり、当初はダイニング上部の水平材(↑)に建具が入っていたものと思われます。今は新しい化粧板で覆われていますが、おそらく板を剥がせば差鴨居があらわれるのではないでしょうか。この推定「差鴨居」まで含めると広間は十四畳になります。残る1.5畳はどうやら、土間に張り出す内玄関の部分をさすようです。その上り口から奥側には二畳ばかりの「小座敷」があり、その土間側には小ぶりのクドを配していました。クドは土間の妻壁側にも大型のものを平行に配しています。現状の広間は内玄関との境にガラス戸を通していますが、これは見るからに新しく、当初は土間・広間境は両側を壁として上り口の1.5畳をオープンにしていた可能性があります。
 また、玄関と広間の境の鴨居は3本溝となっていて(↓)、四枚引違の障子と不整合です。他の部分で使われていた鴨居を転用した可能性があり、家相図以前の17~18世紀においては、玄関と広間が一体となった所謂「広間型三間取り」であった可能性が高いと思われます。【続】


2018080523043646f_20180807034525293.jpg


【追記】  河本家ご夫妻には冷えた抹茶やアイスを差し入れていただきました。猛暑中の調査でしたが、北側の縁に座ると心地よい風を感じ、ほっと一息できました。ありがとうございます。(小次郎)


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↑冷たいお抹茶とおはぎで一服

【関係サイト】
2018年度卒業論文概要(1)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2012.html
2018卒業論文中間報告(2)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1919.html
河本家住宅家相図の研究
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1864.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1865.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1868.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1867.html
(5)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1998.html
琴浦町倉長家の家相図調査
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1957.html
フォトスキャンを活用した文化遺産の分析(2)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2011.html

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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