河本家住宅家相図の研究(2)

イロリまわりの方位観
河本家の絵図が「家相図」たる所以は、【A】干支(+八卦)と【B】八卦の二つの方位観が図中に示されていることにある。【A】の基点は広間のイロリと大黒柱の中間あたりに確認できる。直径2畳ばかりの範囲に正八角形を描き、全部で24の文字を記す。その文字は干支と八卦を構成する漢字である。
さて、干支(えと/カンシ)とは、十干と十二支を組み合わせた数詞であり、10と12の最小公倍数が60になることから、60年周期で年季を勘定するのに用いられる。この家相図では十干と十二支の漢字を単独で用いている。さらに八卦(はっけ)も併用する。
十干: 甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸
十二支: 子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥
八卦: 乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤
十干、十二支、八卦の文字をすべて加えると30文字になり、24文字を6文字超えてしまう。実際に家相図の文字の並びを八角形の北辺から時計まわりに確認すると、
【北】壬・子・癸 【北東】丑・艮・寅 【東】甲・卯・乙 【南東】辰・巽・巳
【南】丙・午・丁 【南西】未・坤・申 【西】庚・酉・辛 【北西】戌・乾・亥
となっていて、十二支のみすべての文字を使用しているが、十干は八文字、八卦は四文字のみ用いる。各文字は以下のように細かい方位に対応しているものと思われる。
壬(ジン、みずのえ):北北西
子(シ、ね): 北
癸(キ、みずのと): 北北東
丑(チュウ、うし): 北東北
艮(ゴン、うしとら): 北東
寅(イン、とら): 北東東
甲(コウ、きのえ): 東北東
卯(ボウ、う): 東
乙(イツ/オツ、きのと): 東南東
辰(シン、たつ):南東東
巽(ソン、たつみ): 南東
巳(シ、み): 南東南
丙(ヘイ、ひのえ): 南南東
午(ゴ、うま): 南
丁(テイ、ひのと): 南南西
未(ビ、ひつじ): 南西南
坤(コン、ひつじさる): 南西
申(シン、さる): 南西西
庚(コウ、かのえ): 西南西
酉(ユウ、とり): 西
辛(シン、かのと) : 西北西
戌(ジュツ、 いぬ): 北西西
乾(ケン 、いぬい): 北西
亥(ガイ、い): 北西北
それぞれの文字はたんに方位を示すだけでなく、運気の成長/衰退の序列的な意味を担っている。その方位の意味が家相の原点になっているわけだが、河本家の場合、広間のイロリ-大黒柱周辺を軸として間取りの吉凶を占ったということであろう。下の写真は方位観の基点となった場所である。

【関係サイト】
2018年度卒業論文概要(1)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2012.html
2018卒業論文中間報告(2)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1919.html
河本家住宅家相図の研究
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1864.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1865.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1868.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1867.html
(5)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1998.html
琴浦町倉長家の家相図調査
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1957.html
フォトスキャンを活用した文化遺産の分析(2)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2011.html