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風に吹かれて-第7次ブータン調査(1)

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風になびくルンダル

 8月27日(月)。朝8時、ブータンのパロ国際空港に到着しました。今年のメンバーは、教授のほか研究室OBのガキオさん、バレーさんと私(院生)の4名です。第7次調査の初日でもあり、幸先の良いスタートを切りたかったのですが、いくら待ってもガイドのウタムさんが空港にあらわれません。空港で待機中のタクシー運転手などにウタムさんのことを聞いてみますが、知っている人はいないので、教授がパソコンメールの履歴から電話番号を調べコールしてもらうと、どうやら自家用車が壊れてしまい、タクシーで空港に向かっている途中であることが分かりました。私たちが空港で立ち往生していると、しばらくしてツアー・ドライバーのラッチさんが声をかけてきましたが、ウタムさんと契約しているにも拘わらず、ウタムさんの電話番号も名前も知らないのには驚きました。どうもピンチヒッターのような気がします。ラッチさんの車に乗り、首都ティンプーをめざします。


0827 タクツォガン01 0827タクツォガン03


 途中でパロ川沿いに建つタクツォガン寺(↑)の対岸で停車し写真撮影をして、さらに前方に進もうとすると連絡があり、ウタムさんの車はすでに行き過ぎているというので、パロ方向に戻り落ち合いました。タグツォガン寺は、2013年に調査済みですが、新参加のメンバーにとっては、毎回、最初の訪問地になります。それだけ風景の素晴らしいスポットです。
 その後、全員でラッチさんの車に乗り、ティンプー市との境にあたるパロ川の合流地点で鉄橋の上から3つのストゥーパを眺めました。これも恒例の行事です。洪水のおきやすい地点では、仏教関係の施設を設けて「悪霊」の浄化に努めるわけですが、鉄橋の対岸にあたる川の三叉路の岸辺には、向かって左からネパール式・チベット式・ブータン式のチョルテンが並んでいます(↓)。
 写真を撮影した路肩には白い経典旗ルンダルが立ち並んでいます。ウタムさんが説明を始めました。ルンダルとは「風の旗」を意味しています。旗には経文のほかにルンパ(風の馬)が描かれています(一番上の写真の右サムネイル)。谷筋は風が強く、絶え間ない風になびくルンパが人間の体から「悪い霊魂」を外に吹き出し、「良い霊魂」を体内に取りこんで、気持ちを浄化してくれるのです。こういう川の合流点を風の吹くパワースポットだと認識しているから、ブータン人はロンダルを立てルンバを祀るのです。
 一番上の写真(左)がルンダルです。ルンダルの頂部はねずみ返しのような輪を貫いて剣が虚空を切り裂いています。悪霊に対する武具であり、金剛杵の爪に似ていますね。剣も爪も魔女や悪霊と戦う武器なのです。


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↑(左)3つのチョルテンうちネパール式(左)、チベット式(ひとつおいて右端)。(右)木陰でみえなかったブータン式チョルテンを別アングルから撮影


旬の松茸三昧

 次はまた恒例の松茸買いです。昨年は9月中旬の訪問で、松茸のシーズンが終わりに近く、値段が高騰している割には小ぶりなものが多かったのですが、今年はまさに旬の時季であり、サイズが大きく質のよいものがそろっています。素人目には、サイズが大きすぎるのがやや気になりましたが、先生が2000円(1600ヌル)ほど買われました。


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0827所在証明01ブータン文化省03文化大臣(左)とweb 0827所在証明01ブータン文化省02
↑文化大臣(ペマさん:左)と記念写真@文化省歴史遺産保存局(右サムネイル) ↓文化省外構
0827所在証明01ブータン文化省04web 0827所在証明01ブータン文化省05


文化大臣と面談

 昼食前、ティンプーに到着し、どういうわけか、いきなりブータン文化省へ連れていかれました。教授はきょとんとされています。どうやらウタムさんの勘違いが原因のようです。わたしたちが調査計画にプナカ城を組み入れていたため、ウタムさんは文化省に対してプナカ城の実測・測量許可を問う申請を出したのですが、みごとに「許可できない」という通知が届いていて、その書類をもっていました。その代わりに「文化大臣」との面談が20分設定されたのです。教授が対話されたのはペマさんという女性の大臣でしたが、あとで今枝先生に教えられたところによりますと、いま国会が解散したため「大臣は不在」の状態であり、教授が面談した女性官僚は「次官クラス」ではないか、とのことでした。教授によると、たしかにその官僚は個室を与えられていなくて、歴史遺産保存局オフィスの一部のデスクを使っていたそうであり、「大臣」には不釣合いな待遇だと思ったそうです。


0827文部科学省04 ナショナルライブラリー


 ペマ大臣?は、プナカ城の実測を許可できないと改めて説明されたそうです。教授は、これに対して「プナカ城を実測しようとは思っていない。わたしたちはプナカ城やチメラカン、あるいは周辺の農家に祭られているボン教起源の護法尊の調査をしたいと思っている」と説明されると、「民家や山寺などはその所有者が調査を許可すればなんの問題もない」という回答されたそうです。それは十分想定内の返答でした。


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 昨年の紀要投稿にあたり、新体制の編集委員会から「外国の歴史的建造物の調査に対して国家の許可が必要ではないか」という大袈裟な質問があり、とても驚きました。日本と同じように、指定・登録の対象になっていない一般の歴史建築については、所有者の許可さえあれば調査し、情報を公開できる、というのが常識であり、紀要編集委員会の高圧的な態度に関係者一同反発を覚えました。今枝先生に問うても問題ないと仰いますし、このたび正式に文化省からも同様のコメントをいただいたので、今後の論文投稿にいっそう自信がもてた次第です。
 大臣と教授が面談されている間、残りの3人は文化省の内部には入れませんで、中庭などで木彫りの職人の方(↑右)としばし歓談していました。ここの文化省の建物の装飾の竜などの装飾(↑右)はすべてこの方が手掛けられているそうです。


0827ドチュラ03web 方形段台型仏塔


霧の峠

 ティンプーで昼食を終え、山越えでプナカへ向かう道中、シムトカゾンを目にしました。ゾンDzongは「城」ですが、防御性の強い城郭というよりもむしろ支配者の居住する行政府であり、必ず僧院を含んでいます。国家形成期以前の中世戦国期-日本の戦国時代とほぼ同時期です-に多数の山城が造営されましたが、17世紀前期のシャブドゥン・ガワン・ナムゲルによる国家形成により廃城や僧院への転換を余儀なくされた城が少なくありません。僧院の管轄組織である点も重要でして、現在も僧院の大本山的な役割を担っているようです。
 シムトカゾンを車窓でとらえてから30分ほど車を走らせると、ドチュラ峠に到着しました。晴天ならばヒマラヤの高山を望める場所ですが、あいにく峠は雲の渦に巻き込まれていました。ドチュラ峠にはボロブドールを彷彿とさせる方形段台型仏塔が建っています(↑)。中心の高台に大きめのチョルテンを配し、その周辺を小型のチョルテンが囲んでいます。すべて石板葺き屋根のブータン式ストゥーパです。ストゥーパの四面に釈迦のレリーフを貼り付け、所々にツァーツァ(遺灰を混ぜた泥づくりの小塔)をばらまいています。この日のトッチェラ峠はあたり一面霧で覆われとても神秘的な風情を醸し出していました。チョルテンの背景に国樹イトスギのシルエットがぼやけて映る姿が幽玄です。(ザキオ)【続】


0827ドチュラ02イトスギ001
↑↓石板葺きチョルテンとイトスギの影
0827ドッチェラ峠05 

0827ドチュラ01釈迦001
↑釈迦像  ↓金色のツァーツァ
0827ドッチェラ峠01


【連載情報】風に吹かれて-第7次ブータン調査
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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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