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風に吹かれて-第7次ブータン調査(8)

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屋根裏で年輪サンプル採取

 シャリ村T家は仏壇まわりがとりわけ古風であり、一部の壁画は退色がひどく、その周辺の床板や手すりなどの材は著しく磨耗していたりして、建築年代の古さをおおいにアピールしています。しかしながら、その年代は不明としか言いようがないので、屋根裏にあがって放射性炭素年代測定の年輪サンプルを採取することになりました。最も重要なのは材の選別です。梁・桁・束・柱などの主要材はいずれも新しくみえ、年輪幅が長く年輪数が少ないため、水平材のカイモノとして転用されている古材の一部を調査対象に選びました。
 
 B④最上段カイモノ: バレーさんが担当。正方形に近い角材で総年輪数84。3点でチップを採取した。


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 B④上段めのカイモノ: サキオ君が担当。板状の材だが総年輪数145を確認。3点でチップを採取した。


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 私は年輪サンプルの採取を見るのが初めてで、80~100年輪ほどの部材断面の芯の中央から10年おきにマチ針を黙々と刺していく熱心な学生の姿にすっかり見入ってしまい、ただただ感心するばかりです。年輪の幅は1㎜あるかないかで、これをひたすら数えては部分的に木片チップを採取するのですから、気が遠くなる作業です。この苦労が、期待する年代を示すことを祈るばかり。補足資料として版築壁内から有機物サンプルも採取しました。
 ちなみに、昨年もハ地区マチェナ村のG家屋根裏で転用材と思われる小屋束のサンプルを採取し、帰国後AMS法による測定をおこなったところ、以下の結果を得た。

  G家遺物No.B⑤ 小屋束 外から1(~2or3)年輪
    1641-1667 cal AD (信頼限界75.9%)
    1782-1797 cal AD (同19.5%)

 すなわち、G家小屋束の最外年輪は17世紀中頃~後半および18世紀後半~末をさしており、前者の可能性が高いことになる。このたび調査したT家の木材は肉視だけで比較すると G家以上に古い可能性があり、帰国後の測定が楽しみです。


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シャヴァ村建物跡配置の略測

 8月30日の午後はT家を離れ、前日有機物サンプルの採取をおこなったパロ地区シャヴァ(SAHVA)村の建物跡を再訪し、インパルスで遺構配置を略測しました。2016年に調査した大型の建物跡(現在レストランとして改修中)と今年調査した小型建物跡の位置関係を明確にするためです。ちなみに、大型の建物跡は放射性炭素年代測定の結果、ブータン国家形成期以前に遡る可能性が高くなっています。15世紀に遡りうる建物跡が位置する場所一帯をみると、周辺の田畑より一段高く、平坦な加工段にあることから、2棟の遺構は一連の建物群であった可能性があると教授は注目されています。二つの建物跡が残る平場一帯には僧院が建立されていたのでしょうか。今回の地形測量・サンプル採取が契機となって将来発掘調査がおこなわれるとしたら素晴らしいことだと思います。(ガキオ)


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今枝先生との夕食会

  夕刻には今枝先生ご夫妻との会食がありました。食事はホテルの敷地内にあるレストランでいただきました。奥様が新鮮な松茸で土瓶蒸し風のすまし汁を作ってくださいました。久々に優しい味の和食を喉にとおしてほっとしました。お酒も桃のワイン、琥珀色のアラック、赤ワイン2種類とたくさん用意してくださいました。どれもとても美味しかったのですが、残念ながら、私はお酒に弱いのですぐに真っ赤になってしまいました。今枝先生が「文章を書くこと・読むことはパワーを使うことで、神聖なことだ」と、おっしゃっていたことが印象的です。今枝先生と浅川先生がクロード・レヴィ=ストロース(フランスの社会人類学者)などの著作について語られていましたが、恥ずかしながら、初めて聞く本の名前ばかりで、自分の教養の無さを痛感しました。これをいい機会と捉えて、勉強に励もうと思った食事の席でした。
 翌朝、今枝先生ご夫妻は、ホテルを発つ我々を見送りに来てくださりました。ロビーで奥様がブータンで撮られた写真を見せて下さったり、気さくに話しかけて下さったり、楽しい交流の時になりました。(バレー)


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【教師追記】 昨年はこの時期にラサをめざしていて、ティンプー出張中の今枝先生とお目にかかれませんでしたが、今年はスケジュールがどんぴしゃでして、先生の宿泊する老舗のホテル Yeedzin Guest House に我々も投宿することになりました。夕食の会場はホテルの庭の片隅に隠れ家のようにしてある小さなレストラン Infusion です。シェフは商売欲が薄く、予約がない限りは店を開けないとのことですが、先生ご夫妻は毎日この店で食事されているということですから、店は夏のあいだほぼ毎日オープンしていることになります。
 ずいぶん素敵なお酒と料理をご用意いただきました。産地は忘れてしまいましたが、高級な赤ワイン2本、ブータン屈指のピーチワイン(食前酒)、ブンタンから届いたばかりの琥珀のアラック(焼酎)、同じくブンタンから届いた蕎麦の細麺(冷製パスタ)、特殊なキノコ・・・・さらに新鮮なマツタケの土瓶蒸し風スープ。呑めば呑むほど食は進み、話は弾みました。能海寛のこと、カルマ・プンツォ博士のことなどさんざん語りました。おかげで、わたしは貴重品入りのショルダーバッグを食堂に忘れてしまい、目が覚めてからあわてふためいたほどです。本当に楽しい時間をありがとうございました。


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【連載情報】風に吹かれて-第7次ブータン調査
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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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