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今年も、衝撃の科学的年代測定結果

ブータン版築壁は14世紀以降!?

 今夏のブータン調査でも科学的年代測定用のサンプルを採取しました。帰国後、AMSによる年代測定を依頼していたところ、12月初旬にパレオラボより以下の速報が届きました。

パロ地区シャヴァ村建物跡ポイントB(壁中の炭化材)
 1312-1359 cal AD (信頼限界59.5%) および1387-1415 cal AD (35.9%)
  →14世紀前半~15世紀前半
 調査状況は以下のサイトを参照してください。
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1891.html 

 この建物跡(廃墟B)は2016年に大石・吉田健がサンプル採取した建物跡(廃墟A)から数百メートル離れた位置にあります。廃墟Aの壁土から採取した炭化木片は辺材型で以下の年代結果が得られました。
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1432.html

【試料No.3 シャヴァ村建物跡(廃墟) サンプルA】
  1420-1460 cal AD (信頼限界95.4%) →15世紀前半~中頃
【試料No.4 シャヴァ村建物跡(廃墟) サンプルB】
  1490-1603 cal AD (同75.3%)、1612-1644 cal AD (同20.1%) →15世紀末~17世紀中頃

 今回の廃墟Bの壁中に含まれる木片は廃墟Aよりおよそ1世紀古い年代を示していますが、サンプルは(おそらく)心材型なので、「14世紀前半~15世紀前半」以降という見方しかできません。したがって、廃墟Aより古い可能性もあれば、廃墟Bと同時期以降の可能性もあるということになります。常識的には、(僧院跡?が)国家形成期以前に遡る可能性がさらに高まったという見通しを得たと言えるかもしれません。



屋根裏転用材の年代観

パロ地区T家4FB④柱上カイモノ(一番外側の年輪の測定)
 1685-1731 cal AD (27.3%)、1808-1894 cal AD (56.6%)、1905-1927 cal AD (11.6%)
 →17世紀後半~18世紀前半、19世紀代、20世紀初頭~前半

 費用不足のためウィグルマッチではなく、AMSとしたため、候補年代が3つもでてしまいました。来年度以降、予算の状況をみてウィグルマッチできるかどうか検討する予定です。

 この材と関わるのは2017年に八地区G家天井裏で採取した小屋束の年代です。
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1615.html

 AMSによる測定結果は以下のとおりです。

【遺物No.B⑤ 小屋束 外から1(~2or3)年輪目】
  1641-1667 cal AD (75.9%) および1782-1797 cal AD (19.5%)
  →17世紀中頃~後半および18世紀後半~末

 八区G家の材も(おそらく)心材型ですが、総年輪数は200以上を数えるので、最外年輪は表皮からそう遠くない位置にあるだろうと推定しています。また、この根株状の小屋束は貫穴を伴っており、転用材とみなされます。したがって、古材を使った当初の建物が17世紀に遡る可能性は十分あると思われます。パロ地区T家の材も古材を柱上のカイモノに転用した材であり、17~18世紀の可能性もありますが、現状の測定結果では如何とも言い難いでしょう。

 ・・・というわけで、ようやく2018年ブログの仕事納めとなりました。明日から、ちょっくら南方に飛んでまいります。
 よいお年をお迎えください。


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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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