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囍来登記(3)

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上海の街角で

 大晦日。早くも一年が過ぎ、62回めの誕生日を迎えた。午前に訪れた嘉定区の南翔鎮は、古い町並みを残す「嘉定三鎮」の一つであると同時に、小籠包発祥の地としても知られている。まずは 雲翔寺が旅客を出迎え、まもなく銅製双塔の広場に出る。前者は重建(再建)、後者は修復だというが、こちらも限りなく重建に近い修復であろう。水郷の町並みは見事なものだが、柱や礎石に骨董品の風貌をみとめる以外、多くの部分は新しくなって古色を塗っている。じっさい、取り外された古い両折戸(もろおれど)をみた。
 

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南翔積雪

 寒さはいちだんと増している。桶巻造の平瓦の上に2~3センチの積雪があり、元旦に真冬の風情を添えている。平瓦の雪が少しずつ解けて滴水の先から雨垂となって石畳を濡らす。風流でもあり、衣服を濡らすわずらわしさもあり。街をぶらぶら歩きながら干し肉(ジャーキー)を買いこんだ。一昨年のマカオで味をしめて、正月の酒菜として楽しみな食材になっている。
 その後、大衆食堂で名物の小籠包に舌鼓。前夜の四川料理の唐辛子の影響か、腹具合がいまひとつ。酒精は控えた。


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 南翔をあとにし、豫園と外灘を結ぶ古城公園まで戻った。黄浦江のこちらもあちらも高層ビルだらけ。いちいち写真なんぞ撮ってられるかと思いつつ、その反対のことをしてしまうのだから人間とは不思議な動物だ。そこから豫園商場まで歩き、昨春杭州龍井の新茶に唸った「春風得意楼」を短時間ながら再訪した。
 それにしても寒い。雪はやんだが・・・


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・上海の街角で(東海林太郎)
https://www.youtube.com/watch?v=A9HwHFCTS34


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上海リル

 津村謙が大ヒットさせた「上海帰りのリル」(1951)には元歌がある。米映画『フットライト・パレード』(1933)の主題歌「シャンハイ・リル」を和訳してディック・ミネらが戦前に流行らせていて、「上海帰りのリル」はその焼き直しだったのである。上海をテーマとするこの種の歌曲はじつに多い。それだけ上海は日本人にとって身近な憧れの地であったわけだ(ヴィザなしで入国できた)。当時およそ十万人の日本人が上海にいて、日本人街らしきエリアがあちこちにできていたらしい。しかし、「日本租界」が存在したわけではない。アヘン戦争後の上海にあったのは英米の「共同租界」と「フランス租界」のみである。


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多倫路と日本人

 日本人が比較的まとまっていたのは黄浦江南岸側のバンド(外灘)周辺で、虹口区がその拠点的な場所であったという。今回は虹口区の多倫路を訪れた。ごらんのとおり、古き良き租界時代の建物が今も軒を連ねている。よく考えてみれば、蘇州・無錫などの伝統的市街地は壊滅的な状況であるのに対して、人口2400万人のアジア最大の都市にまで成長した上海は未だ近代魔都時代の匂いをここそこに残している。
 多倫路で目につくのはミナレットのようなキリスト教会「鴻徳堂」(1929)である。軒の反りが激しく、その無骨な隅扇垂木をみて朝鮮風だな、と何気に思った。門前のクリスマス飾りはやはり質素であり、当然のことながら、キリスト教弾圧の問題が頭を掠める。
 
 
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 鴻徳堂の隣には鴻徳書房がある。その前庭に和服を着た内山完三の銅像が立っている。反日思想の蔓延する中国において日本人の銅像があがめられるなど例外中の例外だが、それは内山が魯迅や郭沫若の支援者だったからにほかならない。ちなみに鴻徳書房は内山書店ではない。内山書店は四川北路にあり、大戦後は中国工商銀行として使われている。


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 ちなみに、内山はクリスチャンであり、当然のことながら、鴻徳堂に礼拝に通ったのであろう。鴻徳書房の隣の敷地には魯迅が洋式のイスに腰掛けて友人と雑談(議論?)する銅像もあり、わたしも魯迅に話しかけてみた。多倫路にはまた来ようと思う、もう少し暖かい時季に。


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・上海リル(江戸川蘭子)
https://www.youtube.com/watch?v=-NoCvrg13Nw
・上海帰りのリル(津村 謙)
https://www.youtube.com/watch?v=19n7uyalzmc

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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