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2018年度学内特別研究費実績報告

登録記念物「摩尼山」の景観整備に関する基礎的研究
  -賽の河原と地蔵堂の復元を中心に-


 鳥取市覚寺に所在する霊場「摩尼山」については、2009年以来、摩尼寺「奥の院」遺跡での発掘調査や境内建造物の調査研究等に取り組み、2016年に国の登録記念物(名勝地関係)に登録された。面積約37万k㎡に及ぶ日本最大の登録記念物が県内に誕生したわけだが、信仰の核心に係る鷲ヶ峰「賽の河原」周辺についての調査研究が手つかずのまま放置されていた。そこで2018年度前期より、①鷲ヶ峰一帯のドローン撮影、フォトスキャンによるCG作成、地形測量等を進めるとともに、②すでに遺跡化している地蔵堂等建造物の復元に取り組み、その成果を③登録記念「摩尼山」リーフレット(2018年11月刊行)に盛り込んだ。「摩尼山」リーフレットはこれまでの研究成果をほぼ網羅し、英訳もつけている。プロのデザイナーが腕を振るい、デザイン的にも質が高い。報告書的なリーフレットとして今後の活用整備の基礎となるばかりか、一般向けの概説書としても有効に機能するだろう。2017年度より登録記念物「摩尼山」活用整備事業が3年計画で進められているが、鷲ヶ峰「賽の河原」周辺については基礎研究がなされていなかったため、修復整備の方針を立てられないでいた。今回の調査研究、とりわけ地蔵堂周辺の景観復元によって今後の整備方針を固めることができるであろう。
 また、④江戸期まで遡る「賽の河原」信仰については摩尼寺に残る「西院の河原」和讃本を翻刻して、死んだ子どもと鬼・地蔵の関係を再確認し、その内容を再現する摩尼山鷲ヶ峰「賽の河原」石積みトレック大会を11月10日に開催した。摩尼川源流域を遡行して小石を集め、それを「賽の河原」に積み上げて供養塔をつくるイベントは、子どもを含む家族や高齢者など約50名の参加者があり、活気あるものとなった。門前の山菜料理茶屋との連携も上手く運び、今後のイベント運営の手ごたえを得た(二軒の茶屋のうち高齢化のため老舗の一軒が店を畳んだことは大きな問題であり、この「再開」については多くの部署との協議を要する)。
 こうした山陰の密教系霊場の信仰や祭場の調査研究活動を進める一方、⑤同じ密教系山岳信仰の聖地であるチベットの霊場や巨岩崇拝と比較するため、西北雲南(旧チベット領カム地方)を訪問し、チベット仏教寺院や民家を視察するとともに、チベット族の神の山「梅里雪山」の遥拝に成功した(普段は悪天候が多く山容を露わにしない)。西北雲南の仏教遺産・霊山・巨岩の視察については、さっそく環境学部の広報本(浅川「奇跡の雪山-ブータンとチベットの七年間-」『こちら公立鳥取環境大学環境学部です!』今井出版、2019)に成果を反映させた。今後もチベット、ブータン、雲南、四川などでチベット仏教に係る調査研究を進め、山陰の密教霊場を考察する糧としていきたい。


[関係サイト]
環境大学地域連携事業報告会(2)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2021.html
2018年度 公立鳥取環境大学学内特別研究費に新規採択!
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1824.html

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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