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『鳥取県の民家』を訪ねて(10)

0605佐治谷民話の里02(福園から移転) 0605佐治谷民話の里01(福園から移転)


佐治歴史民俗資料館

 6月5日(続)。佐治歴史民俗資料館は鳥取市佐治町(旧佐治村)加瀬木にあります。佐治川を挟んで佐治町総合支所(旧村役場)の対岸です。資料館はふるさと歴史館、民話の館、展示館(土蔵)の三館で構成されています。民話の館は茅葺屋根民家を近隣の福園という集落から旧家を譲り受け、移築復元されたものだそうです。建物は幕末のものと言われおり、入母屋造平入平屋建です。


0605⑤(21)谷上家02側面01 0605⑤(21)谷上家03アルミサッシ01


№021⑤谷上家住宅

 『鳥取県の民家』には佐治村余戸の№021⑤谷上家住宅が掲載されており、佐治村民話の館はその移築復元かもしれない、ということで急遽訪ねたのですが、教授が総合支所に自ら赴いて確認したところ、谷上家とは別の建物であることが分かりました。支所で№021⑤谷上家住宅の番地と電話番号を教えていただき、さっそくカーナビに情報を入力して余戸に向かいました。
 №021⑤谷上家も入母屋造平入平屋建ですが、茅葺屋根に鉄板を被せていました。奥様に少しだけ話を聞くことができたのですが、平成になってから鉄板で覆ったそうです。『鳥取県の民家』によると、谷上家は屋号を「大寿屋」といい、はぜから蝋を作る仕事をされていて、主屋の建設は元禄年間(1688-1704)にまで遡り、妻床形式の「広間型三間取り」に復原できると言います。


0605⑤(21)谷上家01外観01 0605⑤(21)谷上家04鉄板屋根sam
↑現状  ↓復原(広間型三間取り 茅葺屋根)
00谷上家01復原平面図01 00谷上家02茅葺屋根01



0605板井原カマド02食事風景01 0605板井原カマド03記念01


県伝統的建造物群保存地区「板井原」

 最後に、私たち3年生の歓迎会と中間報告の慰労をかねて、八頭郡智頭町市瀬板井原にあるお食事処「火間土」を訪れました。山林に囲まれた細い上り坂を登っていき、トンネルを抜けた先に高い山の中にひっそりと板井原集落があります。ここは平家の落人集落の伝説がありますが、確かに外からは見つかりにくいところにあると思いました。また、トンネルができるまでは板井原の出入りは困難でしたが、トンネルが開通すると過疎化が進み、現在では、この集落に住んでいるのは二世帯だけになっているそうです。


0605板井原カマド01食膳01 0605板井原カマド01食膳02メニュー


 民家レストランは原田さんご夫婦が切り盛りしており、日本の山村に特有な山菜料理を食べることができました。また、羽釜のカマドで炊いたご飯を食べることができ、おこげは香ばしくて、ついおかわりをしてしまうほど美味しかったです。おかずは山菜の天ぷらや煮しめ、茶碗蒸しなどがありました。使われている食材に肉・魚はいっさいなく、野菜と山菜がメインになっています。とくに私は「板井原こうこ」という沢庵が美味しく、ご飯との相性が最高に良かったです。この料理は板井原の人にとっては普通の食卓であるそうですが、私には新鮮に感じられ、とても満足しました。


0605板井原05二階高い 0605板井原04川01


 食事の後、4年生は神社から板井原集落を空撮し、3年生は板井原集落を探索しました。まず板井原川の水汲み場に行きました。鳥取の名水百選に選ばれており、飲むことができます。
 板井原は鳥取県の伝統的建造物群保存地区(伝建)に選定されていますが、県選定の伝建地区は全国で板井原だけだそうです。板井原の民家の特徴として、二階で養蚕をするため、二階が高いことが挙げられます。しかし、文化庁では二階が高いのは建物が新しい証拠だとして、むしろマイナスに捉えられ、国の重伝建選定を逃す一因となったようです。教授によれば、2000年前後、全国に重伝建は50ヶ所余りしかなく、たしかにそれらの地区と比べれば板井原はいま一つだったかもしれないが、近年、重伝建は110ヶ所にまで増えていて、ハードルがぐ~んと落ちてしまっているから、板井原は「養蚕の山村集落」として再申請する価値はあるけれども、なにぶん過疎が進みすぎて「限界集落」化しているため、担い手の問題がネックになっているそうです。


0605板井原04藤原家02 0605板井原04藤原家01案内板sam

 いま述べたように、板井原は高二階の民家がほとんどですが、一軒だけ茅葺き民家が残っていて、町の指定文化財として保全されています。「藤原家住宅」主屋は明治中期の建築です。
 今回は美味しい料理を食べることができて、とても幸せでした。また、フィールドワークでは『鳥取県の民家』に掲載されている民家を3件も調査できました。調査していない県東部の第三次調査対象民家は10件中、以下の5件になりました。残りの5件も訪問し、しっかりと現状を調査していきます。 (ころっけ)

 №006①米山家:岩美町外邑 (詳細情報なし) 
 №011②木下家:鳥取市(旧八頭郡)河原町布袋、県指定保護文化財(1974)
 №028⑧西尾家:鳥取市赤子田 (詳細情報なし)
 №029⑨松本家:鳥取市江津 (詳細情報なし)
 №030⑩奥田家:鳥取市猪子、県指定保護文化財(2013)


0605板井原カマド03記念02外


【連載情報】
(01)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2042.html
(02)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2044.html
   №016④三百田家(若桜吉川・県指定)  №012③矢部家(八頭用呂・国重文)
(03)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2046.html
(04)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2050.html
(05)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2051.html
(06)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2052.html
(07)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2053.html
(08)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2054.html
(09)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2055.html
   №027⑦福田家(紙子谷・国重文)  №025⑥西尾家(八頭万代寺)
(10)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2056.html
   №021⑤谷上家(佐治余戸)
(11)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2059.html
   No.011②木下家(布袋・県指定)  No.006①米山家(岩美外邑)
(12)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2060.html
   №023⑧西尾家(赤子田)  №030⑩奥田家(猪子・県指定)
(13)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2061.html
   №029⑨松本家(江津)
(14)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2069.html
   №040⑯小椋家(木地山)
(15)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2070.html
   №029⑨松本家(江津)2回目
(16)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2071.html
(17)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2075.html
(18)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2076.html
(19)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2077.html
(20)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2078.html
(21)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2079.html
(22)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2080.html
(23)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2081.html
   №023⑧西尾家(赤子田)2回目
(24)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2082.html
   №086㉝福田家(日南上萩山)  №082㉜長谷家(日南萩山)  №088㉞石川家(日南笠木)
(25)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2083.html
   No.104㊲乃木家(日野黒坂)  №103㊱細木家(日野黒坂)  №097㊱内藤家(日野板井原)
(26)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2084.html
(27)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2085.html
(28)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2086.html
   №.051㉑小木家(東伯赤碕)  №052㉒門脇家(東伯赤碕)
(29)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2087.html
(30)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2088.html
   No.044⑱牧野家(関金町郡家)  No.041⑰鳥飼家(関金町大鳥居・県)
(31)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2089.html
   No.033⑫前家家(青谷奥崎)  №031⑪小谷家(鹿野町鹿野)
(32)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2102.html
   No.076㉚下原家(江府町俣野)  No.081㉛車家(江府町貝田)
(33)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2105.html
   No.106㊳生田家(伯耆町三部)  No.107㊴足羽家(伯耆町二部)
(34)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2106.html
   No.071㉗森田家(淀江町西尾)  No.070㉖田山家(淀江町淀江)
(35)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2096.html
   No.039⑮原田家(湯梨浜方面)  No.037⑫正木家(湯梨浜橋津)
(36)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2097.html
   新聞No.25中島家(岩美大谷)  新聞No.10福田家(鳥取市国安)
(37)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2098.html
   新聞No.22吉村家(鳥取市立川)  新聞No.11岩田家(鳥取市立川)
(38)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2116.html
   新聞No.20岡本家(国府町木原)  新聞No.18 山本家(国府町神護)
(39)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2117.html
   新聞No.16奥本家(用瀬町)  新聞No.17徳永家(用瀬町)
(40)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2122.html
   No.045⑲河本家(琴浦町箆津)  No.046⑳河本家(琴浦町箆津) 

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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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