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令和元年度公立鳥取環境大学特別研究費に採択!

四川高原カム地区のチベット仏教と能海寛の足跡に係る予備的調査研究

 ようやく体調が人並に回復してきております。GWあけが締切だった今年の学内特別研究費申請には体調不良のため苦しんで提出しましたが、昨日、正式な通知があり、満額回答の採択通知をいただきました。

   研究題目: 四川高原カム地区のチベット仏教と能海寛の足跡に係る予備的調査研究
   助成経費: 1,000千円

研究の背景
 2012年以降、科研費等の助成によりブータンの仏教(チベット仏教ドゥク派)と崖寺・瞑想洞穴に係る調査を進めてきた(計7回)。ブータンでの活動を継続する一方、チベット(西蔵)・アムド(青海)・カム(雲南・四川の境域)等のチベット仏教圏を包括的に対象とする競争的資金の獲得を目標に据え、これまで3回、中国側の青海・西蔵・雲南を訪問している。 1回目は、2015年度本学教育研究特別助成によって、青海省の西寧~青海湖周辺の主要なチベット仏教ゲルク派の僧院を視察した。2回目は、2017年度本学特別研究助成により、青海湖から鉄道で南下してラサに至り、僧院・宮殿の視察後、さらに南下してツェタンを訪問した。ツェタンはチベット最古の王朝「吐蕃」の初代国王ソンツェンガンポ(581-649)の故郷であり、蔵王墓群や城壁・寺院・城跡が残り、城下町にあたる民家集落の保全状態も良好である。一方、国内では、島根県浜田市出身のチベット仏教求法僧、能海寛(1868-1901?)の著作『世界に於ける仏教徒』(1893)の口語訳と批評に取り組み、昨年度(2018)の本学学長裁量経費特別助成によって12月1日に能海寛生誕150周年記念国際シンポジウムを開催した。また、昨年度の本学特別研究助成により西北雲南を訪問してカム地方の仏教遺産を視察するとともに、能海最期の地となった大理~徳欽の関係地を訪れた。
 このときマニタイ(摩尼堆)と呼ばれる卒塔婆の群集を発見したのは新たな収穫であった。チベット仏教では五種類の葬制があるが、輪廻を重視するため遺体に執着しない。肉体は衣服と変わらないものであり、霊魂は新しい肉体を求めているので遺灰を山水に廃棄し、墓を設けないのだが、墓標に似た極彩色の卒塔婆が存在することを初めて知った。今後の重要な課題だと考えている。これらの研究成果を継続的に発展させる必要がある。

研究目的
 本研究は西蔵自治区等での活動を継承し、四川高原西部(カム地方)におけるチベット仏教の状況を把握することを目的とする。昨年に続いてカム地方に拘るのは、まず第1にブータン国教ドゥク派の開祖パジョ・ドゥゴム・シクポがカム地方の出身であり、生態系もブータンに近似するからである。これまでどおり、おもに仏教遺産と民家仏間に焦点を絞り比較研究を進めていくが、今回とくに注目しているのは、上に紹介したマニタイである。ブータンではみたことのない独特の物質文化であり、輪廻思想との絡みから宗教的背景と地域分布を正しく理解する必要がある。第2に、能海寛による明治31~32年の第1回チベット行(四川ルート)がこの地を経由している。成都より西行し雅安、康定、雅江から巴塘に至るルートを能海は歩いた。当時の日誌が『能海寛遺稿』に残っている。能海は金沙江手前の関所で足止めされ、チベット領に入境できなかった。巴塘は西蔵自治区と接する甘孜藏(カンゼ・チベット)族自治州の辺境拠点であり、昨年訪れた雲南省徳欽とも金沙江を挟んで近い位置関係にある。多くのチベット族が居住し、チベット仏教の盛んな地域である。巴塘を中心にして『能海寛遺稿』の地誌的記録との対照を試みたい。
 こうしてフィールドデータを蓄積するだけでなく、昨年末に開催した国際シンポジウムの成果を整理し、能海の著作『世界に於ける仏教徒』の口語訳とこれまでの調査成果を総合した報告書を完成させる。また、昨年に引き続き、中国のチベット研究者と交流を図る。研究会については、中国で開催するか、日本で開催するかは、研究の進捗をみて判断する。四川の受入機関は、昨年共同研究した雲南民族大学を通して四川省民族研究所に打診し、内諾を得ている。

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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