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入梅前のこと(2)

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旧陸軍弾薬貯蔵施設の建築部材

 6月17日(月)、奈良の家から鳥取に戻る途中の時間を使って某府文化財センターの分室を訪れた。高速道路の高架下にある施設で、カーナビを使っても右往左往の連続。結局、地下鉄駅前のバス亭まで迎えにきていただいた。
 さて、この機関の名称に注目したい。公立の埋蔵文化財センターではなく、公財の文化財センターである。名称に「埋蔵」があるかないかは大問題であり、かつてわたしたち非考古系の文化財技師は「埋蔵文化財センター」を「文化財センター」に改組することを懇願し続けたものだが、いっさい状況が変わることはなかった。日本の文化財とは埋蔵文化財であり、文化財主事(技師)とは考古系の発掘調査員にほかならなかった。そういう時代がバブル期に延々と続き、その後遺症に全国が悩んでいる。
 いまはむしろ考古系の技師たちが「文化財センター」への改組を願うようになってきている。開発に伴う行政発掘の仕事がなくなってしまい、バブル期に採用された考古屋さんたちの行き場がなくなってしまったからである。某府の場合、余った人員を高速道路工事を抱える鳥取県などの地方自治体に貸し出してきたわけだが、その鳥取県でも高速の工事はほぼ終わりつつあり、他府県と同様、県内の余剰人員の扱いをどうするか、で頭を悩ませ始めている。「埋蔵文化財センター」が「文化財センター」になり、調査研究の対象が建造物・庭園・工芸美術などに拡大したとしても、それらに向き合う人材は変わらない。ほぼ全員が考古系であって、人間の嗜好や能力がそう簡単に変わるはずはないことを私たちはよく知っている。そこにはまた別の問題がおきつつある。


2019火薬庫02梁02 2019火薬庫02梁01 



2019火薬庫03合掌01 合掌(以下すべて)


 わたしを誘ってくださったのは氷下魚さんである。そう、鳥取で松原田中の報告書を編集し、わたしの論文をじつに上手く校正してくださった恩人である。かれが押しつけられ、成し遂げた報告書刊行の仕事は別の人物が半ばかっさらい、昨年末に日の目をみた。多くのメディアで取り上げられ、予算化に貢献したのである。しかし、わたしはもとより、彼には一寸の得もなかった。それが他府県から補助にやってきた必殺仕事人の渡世なのである。


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 氷下魚さんは、いま旧陸軍の弾薬貯蔵施設-通称「火薬庫」の調査報告に携わっている。火薬庫は、昭和14年(1939)3月1日に大爆発事故を起こした。調査では、壊れた建物基礎とともに原型を保った未使用の砲弾や破裂した砲弾片などがみつかったという。そんななかで、爆発によって破壊・焼失した建物の部材が2点見つかり、遺物として持ち帰ったのだが、考古学技師には80年前の建築部材がさっぱりわからない、というので、不肖わたくしの出番となった。


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 正直、写真をみても興味がが湧かなかったが、センターで現物2点を目にすると、すぐにピンときた。洋小屋(木造トラス)の部材である。こうみえて、『秋田県の近代化遺産』の主任調査員・編集者を務めたので、木造トラスについてはざっと学んだ経験があり、パソコンで画像検索を進めてプリントアウトしていくにつれて、二つの部材は合掌と吊束(挟み材)付の梁であると確信した。木柄はさほど太くなく、そば切り「たかや」レベルの農業倉庫の洋小屋に近いと予想された。

 奈良の家の裏庭に二本の琵琶の樹があり、今年はたくさんの実が採れたのでもっていって、作業後、氷下魚さんと談笑しながら食べた。見栄えはわるいが、とても甘くて美味しい琵琶の実だった。とても楽しい時間を過ごせて嬉しかった。


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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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