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『鳥取県の民家』を訪ねて(14)

小椋家空撮 調査の様子(ドローン)


№040⑯小椋家

 6月26日(水)、くもり。三徳山を下りた後、No.040⑯小椋家を訪ねた。東伯郡三朝町木地山に所在しており、木地屋集落といわれるほど木地屋(ろくろを使って木材をくりぬき漆器等の素地をつくる職人)が多い地域であった。報告書によると、当家は幕末に建てられた民家であり、木地師の生業を物語る大小の作品を所蔵している。土間を張り出した五間取りになっているけれども、当初は入側柱を取り込んだ広間型三間取(↓左)に復原される。『鳥取県の民家』報告書刊行後、三朝町の指定文化財になったが、平成28年(2016)、相続者から民家の管理が難しいという申請を受けて指定が解除された。


040小椋家02平面図 040小椋家01配置図


 当家は空き家であるため、近隣住民からのヒアリングを試みたが、あたりを探しても誰一人見当たらない。そこで会長さんが自治会長のお宅を探し、なんとかドローン空撮の許可をいただいた。このほかGPSカメラ・一眼レフでの撮影、調書取りなどをおこなった。
 そうこうしているうちに夕方5時を過ぎ、向かいのご主人が帰宅されたので短い時間だったがヒアリングをおこなうことができた。


0626木地yama01小椋03 小椋家外観
↑現状外観  ↓報告書掲載写真(1974)
040小椋家03立面写真02 調査の様子(調書)


 当家は茅葺屋根に鉄板を被せた入母屋造平入平屋建である。オモヤの現在の屋根は茅葺屋根鉄板被覆だが、『鳥取県の民家』調査時(1972)では鉄板被覆はされておらず、茅葺が露出している(↑)。軒下から見上げると、屋根の茅がかなり抜け落ちて薄くなっており、それを補うために鉄板をかぶせたのかもしれない。付属屋は土蔵2棟とみそ蔵を確認したが、屋根が崩れていた。これらは報告書掲載の配置図にも描かれているが、オモヤ上手のハナレは配置図に描かれていないので、おそらく昭和50年代の新築であろう。


茅葺屋根 付属屋(土蔵)


040小椋家03立面写真01 報告書にみる茅葺屋根の妻側


 本民家調査の際、すでに無住であったと報告書に書かれているが、向かいの家のご主人によると、2016年ころまでは小椋家の次男さんが4年ほど一人暮らしをされていたとのことである。2016年は町指定解除の年であり、さらにまた倉吉地震の年でもある。地震の発生は2016年10月であり、その前にこの家を出て上京されていたらしい。地震だけでなく、2017年2月の大雪の打撃も大きく、二つの災害が重なって屋根の構造を破損させた。雪の重みによる妻側煙抜き付近の鉄板のずれから雨水が内側に侵入し、雨漏りがひどくなったという。それで、下にみるような鉄板の継ぎ足しをしたのである。
 向かいのご主人は小椋家の次男さんから家の管理を任されており、今年の夏に集落の有志で民家の修理や朽ちた畳の処分をする予定だそうだ。血縁関係があるわけではないのに有志で民家の修理に取り組み、それを守っていこうとする姿勢が素晴らしいと思った。

 『鳥取県の民家』に掲載された民家を訪問していく中で、新たに「指定解除」というパターンを知った。これからの調査の中でも指定解除された事例が表れる可能性もあるだろう。今回の指定解除の理由は相続人による管理の難しさにあった。民家の持続的な保全は後継者問題が避けて通れないことを改めて痛感した次第である。(お嬢)


0626木地yama01小椋家02妻01雨漏防ぎ01 0626木地yama01小椋家02妻01雨漏防ぎ02sam


再考-民家変容のパターン

 過疎山間地域における指定解除の例として特筆すべきと思われる。№040⑯小椋家は町指定解除の例だが、県内にはもう1件の指定解除民家がある。

   №097㉟ 内藤家住宅 日野郡日野町板井原109 【県指定文化財 解除】

 わたしの記憶が正しいならば、指定解除はたしか開学の年(2001)であった。内藤家のことは頭から消えていないけれども、三朝町でも同様の事態を迎えているとは知らなかった。しかし、「過疎」という大問題を抱える地方では、今後このようなケースが増えていくだろう。
 今回の調査を踏まえて、民家変容のパターンに修正を加えておく。(教師補遺)

A類:指定による民家の保全
A-1現地保存  
 №016③矢部家住宅(八頭町用呂・国) №027⑦福田家住宅(紙子谷・国)
 №011②木下家住宅(布袋・県) №030⑩奥田家住宅(猪子・県) 
A-2移築保存  
 №012④三百田家住宅(若桜町吉川→屋堂羅・県)
A-3指定解除 
 №040⑯小椋家住宅(木地山・町)  №097㉟ 内藤家住宅

B類:未指定だが茅葺き屋根を維持
B-1茅葺き露出     
 №029⑨松本家住宅(江津)  
B-2茅葺き鉄板被覆  
 №021⑤谷上家住宅(余戸)  ★ №040⑯小椋家
  
C類:未指定のまま平屋建茅葺きから中二階和風住宅への改修
 №025⑥西尾家住宅(八頭町万代寺) No.006①米山家住宅(岩美町外邑)
 ★ №030⑩奥田家住宅

D類:未指定のまま撤去
 №023⑧西尾家住宅(赤子田) 

  追加凡例: ★は屋根の変化だけみれば、その類型にも含まれる民家を示す。


【連載情報】
(01)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2042.html
(02)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2044.html
   №016④三百田家(若桜吉川・県指定)  №012③矢部家(八頭用呂・国重文)
(03)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2046.html
(04)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2050.html
(05)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2051.html
(06)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2052.html
(07)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2053.html
(08)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2054.html
(09)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2055.html
   №027⑦福田家(紙子谷・国重文)  №025⑥西尾家(八頭万代寺)
(10)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2056.html
   №021⑤谷上家(佐治余戸)
(11)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2059.html
   No.011②木下家(布袋・県指定)  No.006①米山家(岩美外邑)
(12)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2060.html
   №023⑧西尾家(赤子田)  №030⑩奥田家(猪子・県指定)
(13)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2061.html
   №029⑨松本家(江津)
(14)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2069.html
   №040⑯小椋家(木地山)
(15)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2070.html
   №029⑨松本家(江津)2回目
(16)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2071.html
(17)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2075.html
(18)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2076.html
(19)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2077.html
(20)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2078.html
(21)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2079.html
(22)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2080.html
(23)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2081.html
   №023⑧西尾家(赤子田)2回目
(24)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2082.html
   №086㉝福田家(日南上萩山)  №082㉜長谷家(日南萩山)  №088㉞石川家(日南笠木)
(25)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2083.html
   No.104㊲乃木家(日野黒坂)  №103㊱細木家(日野黒坂)  №097㊱内藤家(日野板井原)
(26)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2084.html
(27)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2085.html
(28)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2086.html
   №.051㉑小木家(東伯赤碕)  №052㉒門脇家(東伯赤碕)
(29)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2087.html
(30)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2088.html
   No.044⑱牧野家(関金町郡家)  No.041⑰鳥飼家(関金町大鳥居・県)
(31)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2089.html
   No.033⑫前家家(青谷奥崎)  №031⑪小谷家(鹿野町鹿野)
(32)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2102.html
   No.076㉚下原家(江府町俣野)  No.081㉛車家(江府町貝田)
(33)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2105.html
   No.106㊳生田家(伯耆町三部)  No.107㊴足羽家(伯耆町二部)
(34)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2106.html
   No.071㉗森田家(淀江町西尾)  No.070㉖田山家(淀江町淀江)
(35)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2096.html
   No.039⑮原田家(湯梨浜方面)  No.037⑫正木家(湯梨浜橋津)
(36)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2097.html
   新聞No.25中島家(岩美大谷)  新聞No.10福田家(鳥取市国安)
(37)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2098.html
   新聞No.22吉村家(鳥取市立川)  新聞No.11岩田家(鳥取市立川)
(38)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2116.html
   新聞No.20岡本家(国府町木原)  新聞No.18 山本家(国府町神護)
(39)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2117.html
   新聞No.16奥本家(用瀬町)  新聞No.17徳永家(用瀬町)
(40)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2122.html
   No.045⑲河本家(琴浦町箆津)  No.046⑳河本家(琴浦町箆津) 

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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