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『鳥取県の民家』を訪ねて(15)

0709松本家01茅葺01妻01 庭からみたオモヤ背面側


№029⑨松本家住宅 2回目の調査

 7月9日(火)、晴れ。鳥取市北部に広がる江津地区の№029⑨松本家住宅 は前回(6月12日)の調査時にご不在であったので、その後、先生が何度も電話されて調査の内容を説明し、ようやく内部の調査を実施する日を迎えた。
 インターホンを押すと元気で気品のある奥様が玄関まで迎えにこられ、すぐに「お茶でも飲みますか?」とのお誘いをうけた。床の間のある奥座敷に通され、和風のテーブルで冷たい麦茶とお茶菓子をいただいた。とても暑い日だったので冷茶が身に染みてありがたかった。世間話もそこそこに家と民家の変遷についてかなり詳しいお話を聞かせていただいた。


0709報告書1974 松本家外観 報告書1974


 松本家の建物は200年前ぐらいから続いているそうだが、大庄屋としての最盛期は江戸中期に迎えたというから、現存する幕末の建物は最盛期後の再建ということになるのだろう。しかし、農地改革により多くの土地を失い現在に至る。
 松本家の所在する江津は千代川の河口に近く、古くから川が暴れて流路を変えた。その詳細は橋本寿雄(1983) 『千代水村誌』に記載されている。驚いたことに、茅葺屋根をいちど総改修した際には屋根裏から水車が三基も見つかったそうだ。


0709松本家01茅葺02座敷01 0709松本家01茅葺02座敷01sam


 数年前に屋敷林を伐り、ソーラーパネルを設置したことで、今のように茅葺が外からも見えるようになったのだという。さらに、40年ほど前、奥様の嫁入りのさいにも水まわりなどを近代的に改修されたそうだ。内部改造が多いので、文化財指定は早くから見送りとしたが、登録については検討された時期もあったようだ。しかし、ご主人が「指定・登録しなくていい」との遺言を残されたため、文化財保護の対象となる考えはない。そうしたお気持ちでありながら、茅葺き露出の屋根を継承されている点はあっぱれというほかない。茅葺きには郡家の職人さんを使われ、4面のうち1面ずつ4回にわけて葺き替えをおこなわれるという。


0709松本家06旧駐車場01 駐車場を改装した洋間



0709松本家01茅葺02座敷02長押01 半丸太の床柱と書院造式長押・釘隠


 現在では奥様が一人暮らしをされているが、民家の周辺で起業されており、後継者の問題が悩みの種であるという。江津地域は開発が進みニュータウン化している。そのような開発の波にのまれながらも、 茅葺き屋根の民家を維持しているのはなくなられたご主人の意思であるとおっしゃられた。奥様は民泊など今風な活用をやってもいいかなと思われている。ひとしきりお話を聞かせていただいたあと家屋外観の写真撮影とドローンによる空撮を済ませ、今度は駐車場を改装した洋間でコーヒーをいただき、またしても雑談に花を咲かせた。
 松本家住宅は指定・登録されていないが、茅葺き露出の屋根を残す貴重な民家であり、奥様から様々なお話を聞かせていただけたことでとても良い勉強になった。(うなぎパイ)


0709松本家01茅葺02座敷02長押02欄間01 0709松本家01茅葺02座敷03付書院01


細部の意匠について

 最初に通していただいた奥座敷の印象がとても良かった。派手好みではなく、非常に抑制が効いている。床柱と小壁の束を面皮の数寄屋風にしているが、ぐるりとめぐる長押が正統な書院造式で釘隠金物も定型菊御紋。仏間境の欄間も正統的な縦連子であり、下手に数寄屋風に流れていないので、抑制された緊張感があるのだろうと思った。奥行の浅い附書院(↑右)は菱形を多用した幾何学的デザインで、これも派手ではないが上質の意匠であり、欄間は尾崎家の大工彫を思わせる。一方、役場(仕事場)の置床は数寄屋風の瀟洒なものである(↓)。奥様は「改造が多い」とおっしゃったが、外観の茅葺維持だけでなく、内部も要所はきっちり保存されてり、指定民家と比べてさして遜色はないという感想を抱いた。(教師補遺)


0709松本家03役場の置き床01 0709松本家04土間の梁組01
 

0709松本家05庭01土蔵01 0709松本家10空撮01
↑庭からみた土蔵


【連載情報】
(01)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2042.html
(02)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2044.html
   №016④三百田家(若桜吉川・県指定)  №012③矢部家(八頭用呂・国重文)
(03)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2046.html
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   №029⑨松本家(江津)2回目
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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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