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『鳥取県の民家』を訪ねて(20)

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2019年度人間環境実習・演習B期末発表会(4)

3.民家変容のパターン

 私たちが訪問した民家はわずか11件だが、それぞれの現状は多彩であり、ここ45年の変容パターンを類型化できる。まずA類からD類の4パターンに大別した。さらにA類とB類については、計7パターンに細分できる。

  A類: 指定による民家の保全
   A-1 現地保存  A-2 移築保存  A-3 指定解除
  B類:未指定だが茅葺き屋根を維持
   B-1 茅葺き露出 B-2 茅葺き鉄板被覆  
  C類:未指定のまま平屋建茅葺きから中二階和風住宅への改修
  D類:未指定のまま撤去


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(1)A類:指定による民家の保全
 A-1 現地保存 文化財に指定され、現地で維持修理がなされているパターン。A-1に分類される民家は以下の4件であり、いずれも旧庄屋クラスの豪農である。

  No.016③ 矢部家住宅(八頭町用呂・国)  No.027⑦ 福田家住宅(紙子谷・国)
  No.011② 木下家住宅(布袋・県)  No.030⑩ 奥田家住宅(猪子・県) 

 指定の制度により、国や自治体から補助金が出ているが、県指定の場合、所有者の負担も小さくない。残念なことに、いずれの指定民家いおいても、定期的な公開はなされていない。内部調査の許可がでたのは県指定の木下家のみだった。補助金で維持保全がなされているのだから、公開・活用は一種の義務でもあり、県民の認知度を高めるためにも、具体策を講じるべきだと思われる。一方、大庄屋の家柄であるが、空き家もしくは空き家寸前の傾向もあり、後継者の確保が必須になっている。


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 A-2 移築保存 №016④三百田家住宅はもともと若桜町吉川にあったのだが、所有者が町に寄付し、のちに若桜郷土文化の里に移築され、常時公開されている。行政が管理しているため後継者問題は発生せず、生涯学習・学生教育・観光などにも貢献できるので、野外博物館における民家の移築公開は十分評価に値すると思った。


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 A-3 指定解除 №016④小椋家住宅は三朝町の指定文化財だったが、平成28年(2016)に所有者が転居する直前、管理困難との理由から指定解除の申請があり、三朝町は指定解除に踏み切った。その直後、2016年10月に鳥取県中部地震、2017年2月には豪雪の被害があり、小椋家も大きなダメージを受けた。とくに妻壁の煙抜きから雨が吹き込んで小屋組や床の材を腐らせており、今は鉄板で仮補修している。この夏には地元の有志で補修をするそうである。過疎がさらに進めば、解体または放置されることになるだろう。


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(2)B類:未指定だが茅葺き屋根を維持
 B-1 茅葺き露出 B類は未指定だが茅葺屋根を維持しているパターンであり、B-1はかやぶきを露出している民家である。市内江津の№029⑨松本家は大庄屋の家柄で、県立中央病院の近くに広大な屋敷を構えている(↑↓)。内部の書院造の座敷も見事である。文化財指定もしくは登録を構想した時期もあったが、今は指定・登録を拒否する決断をしている。それというのも、ニュータウン化している江津地区に複数のアパートを保有し、屋敷林を伐採して太陽光発電事業を進めているからである。その収益で茅葺き民家を維持しようとしている。「大庄屋の意地」としか言いようがない。きわめて例外的な事例だが、後継者の問題はクリアできていない。


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 B-2 茅葺き鉄板被覆 文字通りのパターン。薄くなった茅葺き屋根に鉄板を被せて防水処理している。鉄板は波形の場合もあれば、桟瓦風にデザインしたものもある。佐治町余戸のNo.021⑤谷上家がこの典型だが、さきほど指定解除で紹介した三朝町木地山の№016④小椋家も、物的変化だけみれば、このタイプだ。鉄板被覆の茅葺き民家は、2005年ころの統計によると、県東部だけで200~300棟あると言われている。


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(3)C類:未指定のまま平屋建茅葺きから中二階和風住宅への改修
 未指定のまま平屋建茅葺きから中二階和風住宅へ改修されたパターン。この変化もじつは非常に多く、近代和風住宅にみえる建物の大半はもとは茅葺き民家だったものである。岩美のNo.006①米山家と八頭のNo.025⑥西尾家がこの例に該当する。


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(4)D類:未指定のまま撤去
 鳥取市赤子田の№023⑧西尾家住宅は調査した中で唯一主屋を撤去した例である。基礎の跡がはっきり残っており、庄屋時代の主屋の規模を実感できる。6~7年前に撤去を請け負うコボチ屋がやってきて、「安くするから」と声をかけられ、その誘いにのり撤去したそうだ。撤去費用は思いのほか高くつくので、「空き家を放置しているが撤去できない民家」は数多く存在している。西尾家では、跡地にあたらしい住まいを建てて暮らしている。


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民家「終活」の時代  以上、おもに県東部を歩いた感想を述べる。
 1)まず第3次調査対象の民家のほぼすべてが大庄屋クラスの住宅に偏向していると感じた。小作農クラスの民家も調査に含め、記録保存だけでもしておくべきではなかったか。 
 2)大庄屋クラスの古民家5件が国もしくは県の指定文化財になっているが、A類の4件は、維持修理費を補助しているだけで、公開・活用がなされていない。補助金を投入しているからには、少なくとも年1~2回の公開の義務があり、早急に「保存会」を立ちあげて対応すべきと思われる。 
 3)三朝の小椋家は町指定解除の例だが、日野町板井原の№097㉟内藤家住宅も2001年に県指定を解除されている。こうした過疎地域では、今後も「指定解除」が増えていくと予想されるが、本来「指定解除」はあってはならないことであり、行政は管理や移築に責任をもたなければならない。
 4)放置され空き家化した民家の撤去はやむをえないが、撤去費は二百万円以上かかるため、「空き家としての民家の再生・活用」だけではなく、「廃棄物としての民家」を深く考察すべき時代になってきている。いわば「民家の終活」を考えるべき時代を迎えている。建物をできるだけ安価に解体するだけでなく、煤竹(すすだけ)や床柱などの部材をできるだけ多く売却して転用を図り、その利益で撤去費を補填するようなシステムを構築する必要がある。そのシステムとは居住者・業者・行政が一体になったものでなければならない。(うなぎパイ)


【連載情報】
(01)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2042.html
(02)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2044.html
   №016④三百田家(若桜吉川・県指定)  №012③矢部家(八頭用呂・国重文)
(03)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2046.html
(04)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2050.html
(05)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2051.html
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(07)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2053.html
(08)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2054.html
(09)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2055.html
   №027⑦福田家(紙子谷・国重文)  №025⑥西尾家(八頭万代寺)
(10)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2056.html
   №021⑤谷上家(佐治余戸)
(11)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2059.html
   No.011②木下家(布袋・県指定)  No.006①米山家(岩美外邑)
(12)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2060.html
   №023⑧西尾家(赤子田)  №030⑩奥田家(猪子・県指定)
(13)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2061.html
   №029⑨松本家(江津)
(14)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2069.html
   №040⑯小椋家(木地山)
(15)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2070.html
   №029⑨松本家(江津)2回目
(16)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2071.html
(17)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2075.html
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(23)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2081.html
   №023⑧西尾家(赤子田)2回目
(24)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2082.html
   №086㉝福田家(日南上萩山)  №082㉜長谷家(日南萩山)  №088㉞石川家(日南笠木)
(25)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2083.html
   No.104㊲乃木家(日野黒坂)  №103㊱細木家(日野黒坂)  №097㊱内藤家(日野板井原)
(26)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2084.html
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   №.051㉑小木家(東伯赤碕)  №052㉒門脇家(東伯赤碕)
(29)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2087.html
(30)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2088.html
   No.044⑱牧野家(関金町郡家)  No.041⑰鳥飼家(関金町大鳥居・県)
(31)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2089.html
   No.033⑫前家家(青谷奥崎)  №031⑪小谷家(鹿野町鹿野)
(32)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2102.html
   No.076㉚下原家(江府町俣野)  No.081㉛車家(江府町貝田)
(33)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2105.html
   No.106㊳生田家(伯耆町三部)  No.107㊴足羽家(伯耆町二部)
(34)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2106.html
   No.071㉗森田家(淀江町西尾)  No.070㉖田山家(淀江町淀江)
(35)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2096.html
   No.039⑮原田家(湯梨浜方面)  No.037⑫正木家(湯梨浜橋津)
(36)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2097.html
   新聞No.25中島家(岩美大谷)  新聞No.10福田家(鳥取市国安)
(37)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2098.html
   新聞No.22吉村家(鳥取市立川)  新聞No.11岩田家(鳥取市立川)
(38)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2116.html
   新聞No.20岡本家(国府町木原)  新聞No.18 山本家(国府町神護)
(39)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2117.html
   新聞No.16奥本家(用瀬町)  新聞No.17徳永家(用瀬町)
(40)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2122.html
   No.045⑲河本家(琴浦町箆津)  No.046⑳河本家(琴浦町箆津) 

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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