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『鳥取県の民家』を訪ねて(25)

180808乃木家01空撮 180808乃木家02報告書03配置図


日野町の民家を訪ねて

 No.104㊲乃木家住宅:  乃木家は日野町黒坂の町家で、現在の所有者は調査時の世帯主の息子さんです。乃木家周辺には古い町並みが残っていて、根雨宿に比べても県西部地震(2000)の被害も小さく、乃木家を中心として周辺数軒の連続写真を撮影し、フォトスキャンで連続立面図を作成することにしました。


180808乃木家01外観 
↑現状(2019)  ↓報告書(1974)
№104㊲乃木家住宅1974 190808乃木家02報告書01復原図


 乃木家の主屋自体、西部地震での被害も少なく、トオリニワ上の梁の1本がずれて噛みあいがわるくなっただけの軽度の損傷で、20年ほど前に部分修理を施したのみだそうです。結果として、報告書掲載時の姿を今もよくとどめています。背面側の付属屋3棟も残っています。構造形式は切妻造桟瓦葺中二階平入、主屋規模は間口7間×4.5間の四間取です。現在はわかりませんが、当時は間仕切りすべてが古式の建具であり、田字形4室の続き間を1部屋にできる「門徒造」でした。天台宗の弾圧を逃れた北陸の真宗門徒が山陰にやってきて道場を開き、門徒たちは道場の周辺に門徒造の民家集落を築いたのです。


180808乃木家01架構 180808乃木家02報告書04架構
↑乃木家土間上の梁組


 さて、報告書では建築年代を江戸時代中期と推定していますが、元世帯主さん(昭和13年生)は松江城築城と年代が近くおそらく1610年くらいだとおっしゃっていました。その年代は、むしろこの土地への帰農・土着年代であり、現在の建物は18世紀に再建されたもおとみるべきかと思われます。なお、世帯主の息子さんは別居しており、家を引き継ぐ予定はとくになく、将来的に空き家になる可能性が高いそうです。


190808細木家跡地02 №103㉟細木家住宅1974配置図


 №103㊱細木家住宅;  細木家は乃木家と同じ黒坂の近所に建つ町家でした。しかし、残念ながら、現在は建物が完全に撤去されて空地になっています。報告書刊行時は、間口10間×奥行8間の「九間取」であり、構造形式は切妻造茅葺二階建平入です。建築年代は江戸時代中期と推定されています。もともと街道沿いに長屋門を構え、土塀をめぐらした屋敷構えだったのですが、1974年には、主屋と土塀の一部を残すのみとなっていたようです。報告書では六間取に復原されています。民家変容のパターンでは、D類(未指定のまま撤去)に当てはまります。
 隣家の主婦、内藤さん(昭和4年生)にお話をうかがうと、家屋が撤去された時期ははっきり覚えていないが、鳥取県西部地震以前だっただろうとのことです。当時の所有者は亡くなられており、現在の所有者は米子に住まれているそうです。


190808細木家跡地01 
↑細木家跡地 現状(2019) ↓報告書(1974)
№103㉟細木家住宅1974外観 №103㉟細木家住宅1974復原図



180808内藤家01空撮 板井原


県指定保護文化財の指定解除例

 №097㊱内藤家住宅:  内藤家が位置するのは日野町板井原の内井谷(うついだに)という山間部です。報告書(1974)によると、構造形式は寄棟造茅葺、主屋規模は間口6.5間×奥行3.5間、主屋平面は広間型三間取(復原)となっています。建築年代は幕末と推定されています。報告書刊行前後に県保護文化財にいったん指定されました。しかし2001年、指定解除になっています。


№097㊱内藤家住宅1974外観 №097㊱内藤家住宅1974復原図 
↑報告書(1974) ↓現状(2019)
190808内藤家02跡地


 板井原内井谷では、茅葺民家を2棟確認できました。いずれも表札に「内藤」と書かれていたため、どちらかが報告書の内藤鉄太郎家であろうと考え、調査を進めていたそのとき、1台の軽トラックが狭い坂道を駆け上がってきて、集落の入口あたりで停車しました。軽トラの運転手Yさんは10年ばかり前まで町役場に勤めていた方で、鹿・熊の駆除に向かおうとされているところだったのです。内藤家Bの親戚にあたる方でもあります。現存する内藤家Aの御当主は数年前、もう一方の内藤家Bの御当主は昨年逝去され、いま集落は「廃村」の状況を呈しています。しかも驚いたことに、なんと私たちが探していた内藤家はすでに存在せず、ただ敷地を残すのみだったのです。内藤家は西部地震後の2001年ころ、無住であった家屋が自然崩壊したため撤去され、指定解除の運びになったということです。民家変容のパターンではA-3類の指定解除にあたります。


№097㊱内藤家住宅跡地空撮 №097㊱内藤家住宅1974配置図 


 Yさんが通りかかっていなければ、現存する民家を指定解除の物件と勘違いしていた可能性があり、本当に助かりました。内藤家が指定解除されたのは自然崩壊の結果であることがわかり、いちおう納得できました。三朝町木地山の№040⑯小椋家のように転居に伴う安易な指定解除ではない点を確認できたので少々安堵したところです。
 なお、旧指定民家の後継者は米子に住んでいるそうです。Yさん曰く。

   (自分だって)家があるから住んでいるだけ、家がなければ(今の家に)住んでいない。
   人間の体が朽ちていくように、建物も朽ちていく。それだけのことだ・・・

と恥ずかしげにおっしゃいました。たしかにそのとおりだと思います。(ザキオ)


180808内藤家03山川さん インフォーマントとともに



【連載情報】
(01)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2042.html
(02)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2044.html
   №016④三百田家(若桜吉川・県指定)  №012③矢部家(八頭用呂・国重文)
(03)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2046.html
(04)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2050.html
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(07)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2053.html
(08)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2054.html
(09)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2055.html
   №027⑦福田家(紙子谷・国重文)  №025⑥西尾家(八頭万代寺)
(10)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2056.html
   №021⑤谷上家(佐治余戸)
(11)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2059.html
   No.011②木下家(布袋・県指定)  No.006①米山家(岩美外邑)
(12)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2060.html
   №023⑧西尾家(赤子田)  №030⑩奥田家(猪子・県指定)
(13)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2061.html
   №029⑨松本家(江津)
(14)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2069.html
   №040⑯小椋家(木地山)
(15)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2070.html
   №029⑨松本家(江津)2回目
(16)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2071.html
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   №023⑧西尾家(赤子田)2回目
(24)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2082.html
   №086㉝福田家(日南上萩山)  №082㉜長谷家(日南萩山)  №088㉞石川家(日南笠木)
(25)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2083.html
   No.104㊲乃木家(日野黒坂)  №103㊱細木家(日野黒坂)  №097㊱内藤家(日野板井原)
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   №.051㉑小木家(東伯赤碕)  №052㉒門脇家(東伯赤碕)
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   No.106㊳生田家(伯耆町三部)  No.107㊴足羽家(伯耆町二部)
(34)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2106.html
   No.071㉗森田家(淀江町西尾)  No.070㉖田山家(淀江町淀江)
(35)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2096.html
   No.039⑮原田家(湯梨浜方面)  No.037⑫正木家(湯梨浜橋津)
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   新聞No.25中島家(岩美大谷)  新聞No.10福田家(鳥取市国安)
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   新聞No.22吉村家(鳥取市立川)  新聞No.11岩田家(鳥取市立川)
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   新聞No.20岡本家(国府町木原)  新聞No.18 山本家(国府町神護)
(39)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2117.html
   新聞No.16奥本家(用瀬町)  新聞No.17徳永家(用瀬町)
(40)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2122.html
   No.045⑲河本家(琴浦町箆津)  No.046⑳河本家(琴浦町箆津) 

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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