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『鳥取県の民家』を訪ねて(27)

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2019年度公立鳥取環境大学麒麟特別研究費助成に採択!

 TUES麒麟マイスターとは、COC(Center of Community: 文科省が大学を対象とし「地域の課題解決」や「地域活性化についての立案」等をサポートする)事業の一環として、本学が今年から発足させた学内資格です。ここにいう「麒麟」地域とは主に麒麟獅子の分布する鳥取県東部と兵庫県北部の自治体をイメージしていますが、実際にはもう少し広い範囲を含みます(鳥取市・岩美町・八頭町・若桜町・智頭町及び新温泉町)。これらの地域に関わる活動や研究、また意欲的に地域問題に取り組む学生が申請を認定されます。TUES麒麟マイスター申請書には「これまでに取り組んできた地域活動や地域研究に関する経験、今後鳥取県東部で取り組みたい地域活動や地域研究に関する目標及び意欲」を記入して提出します。7月18日(水)の教授会で、教授はわたしがマイスターの資格を取得したことを知り、「なんの役にも立たない学内資格」だと最初は鼻で嗤っていたそうですが、麒麟マイスターの取得を前提とした研究費助成が1名しかなく、追加申請のあることを知り、わたしに研究申請することを薦められました。

 その後、7月29日(月)、TUES麒麟マイスターに合格した学生の認定式が本学サスティナビリー研究所で開催されました。麒麟マイスターに認定された四人の学生と、マイスターのロゴを作成した学生が出席し、研究所長から証書をいただきました。非常に少人数の認定式であり、学生同士もほぼ友人同士であったため、和やかな雰囲気で会が進みました。所長からは「麒麟の地だけでなく、将来卒業してさまざまな土地での地域問題を 解決し、活躍できる人材になってほしい」とのお言葉をいただきました。資格に恥じぬよう、卒業研究に取り組んでいきたいと思っています。
 一方、麒麟特別研究費については、この春からゼミ全体で取り組んでいる「『鳥取県の民家』を訪ねて」を主題として申請しました。ゼミをあげて調査するが、卒論としてわたしがまとめるという構想です。ところが、申請書は科学研究費の様式そのもので、分量は多く、内容もすごく複雑なものです。これだけの申請を学生にせよ、というのは酷なことだと教授もおっしゃって、何度も添削をしてくださいました。改めて感謝いたします。
 以下に採択された研究の主題・概要等を抜粋して掲載します。(八木部長)

  1.研究課題名:  昭和49年刊『鳥取県の民家』を訪ねて
  2.研究代表者:  野口さやか(指導教員:浅川滋男)
  3.研究費:     50,000円
  4.研究の目的と概要: 「続き」参照


野口4



研究背景
 昭和40~50年代の日本は高度経済成長期にあたり、全国的に国土開発が急速に進行していた。それに伴い国民の生活スタイルも大きく変化し、伝統的な住まいとしての民家は著しく数を減らしつつあった。この状況に危機感を抱いた文化庁は、全国47都道府県において民家の緊急調査を実施することとした。昭和47年度には鳥取県でも緊急調査がおこなわれ、翌48年度末(1974年3月)に『鳥取県の民家-鳥取県民家緊急調査-』報告書が刊行される。主任調査員は大阪市立大学家政学部住居学科の白木小三郎教授であり、報告書の編集・発行者は鳥取県教育委員会であった。
 『鳥取県の民家』報告書(1974)が刊行されてから45年が経過した。「成長」の昭和戦後から「停滞」の平成を飛び越えて、年号は令和に変わっている。この間、日本全体で生活空間は欧化・近代化し、国民の価値観も変わり、開発が激化する一方で、中央都市部の過密と地方の過疎が極端に先鋭化しつつあり、とりわけ地方の置かれた状況は深刻である。こうした時代の流れの中で、『鳥取県の民家』報告書に掲載された県内の代表的な古民家はどうなっているのか。そうした素朴な疑問が湧いてきた。

研究目的
 『鳥取県の民家』報告書(1974)において古民家調査は第一次から第三次まで序列的におこなわれた。まず市町村教委スタッフが担当した第一次調査で108件がピックアップされ、そのうち比較的重要な80件に絞って建築士事務所協会の会員が第二次調査をおこない、最終的には白木主任調査員が文化財保護の対象になりうる39件を選定して第三次調査を実施した。本研究では、第三次調査対象の民家39件に係る情報をデジタルデータ化して整理したうえで現地を訪問し、現在の状況をできるだけ正確に把握することを目的とする。鳥取県東部ではすでに国指定重要文化財2棟(矢部家・福田家)、県指定保護文化財3棟(三百田家・木下家・奥田家)が文化財保護の対象になっており、県内でも最古級の民家を残す地区であり、本研究ではこうした県東部の状況分析を中心に、可能な範囲で対象を中部から西部へとひろげていこうと考えている。時間と経費の関係で全39件を訪問できるかどうか分からないが、できるだけ多くの民家を訪問したい。いずれにしても、調査対象の民家を「どうすべきか」という計画的思考はひとまず封印し、なにより「45年間の変容を経て今どのような状況にあるのか」をできうる限り深く理解することをめざす。現状に対する深い理解こそが、解決すべき課題の抽出や今後の計画的戦略の根本的なベースになると考えるからである。物的にみた場合、文化財保護の指定対象になった民家もあれば、未指定のまま改造されたり、撤去された例も少なくないだろう。また、社会的にみた場合、高齢化の問題や空き家化の問題も当然のことながら絡んでくるだろう。そうした状況を類型的に分析し、理解したいと考えている。

学術的な特色、独創的な点など
 (1)「地域貢献」という主題が重視され、「まちづくり」や「地域おこし」が称揚されることは結構だが、その前提としての「地域研究」が十分なレベルに達しているかと問えば疑問符のつくケースが少なくない。私たちは、地域貢献への第一歩として、対象の歴史や現状の基礎的分析をより重視し、地域の理解を深めることをめざしている。したがって本研究は「提言型・実利型」ではなく、「現状理解型」であるところに最大の特色がある。
 (2)調査成果の分析に最新のデータベースソフト、GPSデジタルカメラ、ドローン、フォトスキャンなどのソフトや機材を用いる。これらを活用することで、対象古民家の正確な位置情報、配置図、CGなどを作成できる。そして、報告書データとフィールドデータの総合的デジタルデータ化をめざす。
 (3)本研究はすでに刊行されている文化財報告書の追跡調査であり、おそらく今後、全国的に同じような活動が展開される可能性がある。その先駆的な役割を担うものとして鳥取県東部を中心に研究活動を考えている。


【連載情報】
(01)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2042.html
(02)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2044.html
   №016④三百田家(若桜吉川・県指定)  №012③矢部家(八頭用呂・国重文)
(03)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2046.html
(04)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2050.html
(05)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2051.html
(06)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2052.html
(07)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2053.html
(08)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2054.html
(09)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2055.html
   №027⑦福田家(紙子谷・国重文)  №025⑥西尾家(八頭万代寺)
(10)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2056.html
   №021⑤谷上家(佐治余戸)
(11)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2059.html
   No.011②木下家(布袋・県指定)  No.006①米山家(岩美外邑)
(12)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2060.html
   №023⑧西尾家(赤子田)  №030⑩奥田家(猪子・県指定)
(13)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2061.html
   №029⑨松本家(江津)
(14)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2069.html
   №040⑯小椋家(木地山)
(15)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2070.html
   №029⑨松本家(江津)2回目
(16)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2071.html
(17)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2075.html
(18)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2076.html
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(21)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2079.html
(22)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2080.html
(23)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2081.html
   №023⑧西尾家(赤子田)2回目
(24)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2082.html
   №086㉝福田家(日南上萩山)  №082㉜長谷家(日南萩山)  №088㉞石川家(日南笠木)
(25)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2083.html
   No.104㊲乃木家(日野黒坂)  №103㊱細木家(日野黒坂)  №097㊱内藤家(日野板井原)
(26)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2084.html
(27)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2085.html
(28)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2086.html
   №.051㉑小木家(東伯赤碕)  №052㉒門脇家(東伯赤碕)
(29)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2087.html
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   No.044⑱牧野家(関金町郡家)  No.041⑰鳥飼家(関金町大鳥居・県)
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   No.033⑫前家家(青谷奥崎)  №031⑪小谷家(鹿野町鹿野)
(32)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2102.html
   No.076㉚下原家(江府町俣野)  No.081㉛車家(江府町貝田)
(33)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2105.html
   No.106㊳生田家(伯耆町三部)  No.107㊴足羽家(伯耆町二部)
(34)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2106.html
   No.071㉗森田家(淀江町西尾)  No.070㉖田山家(淀江町淀江)
(35)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2096.html
   No.039⑮原田家(湯梨浜方面)  No.037⑫正木家(湯梨浜橋津)
(36)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2097.html
   新聞No.25中島家(岩美大谷)  新聞No.10福田家(鳥取市国安)
(37)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2098.html
   新聞No.22吉村家(鳥取市立川)  新聞No.11岩田家(鳥取市立川)
(38)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2116.html
   新聞No.20岡本家(国府町木原)  新聞No.18 山本家(国府町神護)
(39)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2117.html
   新聞No.16奥本家(用瀬町)  新聞No.17徳永家(用瀬町)
(40)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2122.html
   No.045⑲河本家(琴浦町箆津)  No.046⑳河本家(琴浦町箆津) 

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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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