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風の谷 ポプジカ紀行(1)-第8次ブータン調査

0905ネーフック遺産001 ネーフック遺産中心施設


初めての海外旅行-ブータンへ

 9月4日(水)。ブータンに向けて出発するため、午後2時ころ関西国際空港に集合しました。私は海外に行くのは初めての経験だったのですが、他の学生はみな海外旅行の経験があったので出国手続きのやり方などを教えてもらいました。とても頼もしく感じました。手続きを終えて午後5時半ころ関西国際空港を離陸、6時間ばかりのフライト後、タイ時間の21時半にスワンナプーム国際空港に着陸しました。例年はこのまま空港内で早朝の飛行機を待ってブータンにトランジットしたそうですが、今年はタイムテーブルが突然改変されて午後発となり、初日の夜は空港近くのホテルで一泊しました。簡単な打ち合わせの後、翌日に備えて就寝しようとしましたが、男3名は冷蔵庫の缶ビールに手がのびて・・・ 


0905ネーフック遺産002 0905ネーフック遺産003sam


 9月5日(木)。朝食はホテルのプールサイド・レストランでいただきました。初めて食べるタイ米と生姜の味が強い肉野菜炒めがとくに印象に残りました。どちらもとても美味しかったです。朝食後、リムジンバスでスワンナプーム国際空港へ戻りました。ボーディングまでの時間を利用して、日本円の両替の仕方について先輩方に教えてもらいました。午後1時ころ飛行機は離陸し、約3時間フライトの後、ブータン時間の15時ころパロ空港に着きました。鉄筋コンクリートの空港のデザインがブータンの伝統的な建物のデザインを踏襲しており、改めてブータンに来たのだと実感しました。空港を出ると、ガイドのウゲンさんとドライバーのドルジさんが待ち構えて迎えてくださいました。ウゲンさんは鹿児島で4年間も仕事をされていた経験があり、日本語を流暢に話されます。英語が苦手な私はとても安心しました。車に乗るとまもなくウゲンさんのブータン概説が始まり、ICレコーダーをまわします。とくにブータンでは自然保護のため工業などによる経済発展策はとらず、自然を維持したまま発展を目指しているというお話が印象に残りました。


0905ネーフック遺産007 0905ネーフック遺産008


ネープック遺産

 そのような興味深いお話の後、最初の目的地に着きました。シャヴァ(SHAVA)村にある ネープック遺産(NEYPHUG HERITAGE) です。この場所は2016年まで版築壁の廃墟がぽつんと残る空き地であり、2016年に壁跡の中心部から皮付木片(辺材)を採取して帰国後、炭素14年代を測定したところ、15~16世紀に遡る可能性が高まりました。その翌年(2017)、版築壁跡は改修・増築されて屋根がかかっており、その状況は昨年(2018)もほぼ同様でしたが、この春から多機能施設としてオープンされたようです。


0905ネーフック遺産006 売店内部 階段


 この日はオーナーの僧侶が来店されており、事情をうかがったところ、土地を所有する農民が近くに境内を構えるネープック(NEYPHUG)寺に廃墟ごと不動産を売却し、18世紀に再建されたネーフック寺本堂の建て替えにあたって古寺の部材を再利用して版築壁廃墟を2階建の楼閣に再生させ、周囲に平屋のカフェやファーマーズ・マーケットを設置したとのことです。楼閣入口の階段側壁にはネープック遺産の大きなサインボードが立てかけてあります。ネープック遺産とは「明るい未来のための教育と自力更生(エンパワーメント)」の施設であり、以下の諸施設を包含しています。赤字が楼閣に含まれる機能です。

   カフェ (your cafe) 売店(your shop)  ビジネスセンター(business centre)
   ギャラリー(art gallery)  静養所(retreat cetre) 足マッサージ(foot reflexology)

   農家直売場(farmers market)


0905ネーフック遺産005 YourCafe前の売店 外観


 この複合施設の営業収益は寺の運営、とくに修学僧の教育経費に供されるとのことです。ネーフック寺の僧侶は、壁跡の有機物から得られた科学的測定年代が15世紀に遡りうるという情報に大変驚かれました。ネーフック寺の縁起伝承が開山を16~17世紀としており、おそらく同時代の僧院跡だろうと推定されていたからです。
 わたしたちはパロ川の棚田に面する your cafe で窓外の景色を楽しみながら、今回の旅で最初のミルクティーをいただきました。とても美味しかったです。その後、廃墟から再生した楼閣内部をひとめぐりしました。古い版築の壁とネーフック寺本堂の古材がごく自然にとけあっており、階段も古式につくりあげたそうです。


0905ネーフック遺産004 YourCafeでいただいたミルクティー
your cafe


0905ザラフラの瞑想洞穴01 0905ザラフラの瞑想洞穴02sam


ザラフラの瞑想洞穴

 ネーフック遺産を後にした私たちが次に訪れたのはタクツォガン寺の対岸です。パロ空港に降りて首都ティンプーにむかうの外国人旅行者が一般的には初めて接する古刹であり、タントン・ゲルポゆかりの鉄吊橋がよく知られています。ASALABの先輩たちは2013年に調査しています。
 対岸からあまり目を引きませんが、注意深く眺めると、向かって左奥の山の斜面に黒い壁の瞑想洞穴を確認できます。ガイドのウゲンさんは、この洞穴にはザラフラという神がいるため現地の人はあまり音をたてないようにしていたと仰います。教授は黒い壁の建物は悪霊を鎮めるためにあるので、ザラフラもまたボン教の神霊を仏教が調伏した護法尊ではないかと推定されましたが、この問題はもっと奥深く複雑であり、ボン教vs.仏教の対立だけでは解けそうにありません。昨年までガイドを務めてくれたウタムさんの情報と異なるところもあり、とくに昨年のブログ(風に吹かれて)の記事については若干の修正が必要になってきています。


タクトォガン ストゥーパ タクトォガン 全景


 タクツォガン寺では、この旅で初めてブータン式のストゥーパ(チョルテン)を見ることができました。平面が長方形もしくは正方形のシンプルな構造物です。このようなストゥーパがブータンでは、峠や寺院境内の外側など多くの場所に建っているというお話でした。この時には小さなストゥーパを遠巻きに眺めるだけでしたが、後日、さまざまな場所でさまざまなストゥーパを観察することになります。


チュゾン 3種のストゥーパ (1) チュゾン 3種のストゥーパ と川


チュゾンのストゥーパ群

 次に訪れたのはチュゾンという場所です。チュは川、ゾンは「つながる」という意味で、ティンプー川とパロ川の合流点にあたります。その合流点の対岸に3つのストゥーパが並んで立っているのです。このような場所では洪水が頻発するので、それを鎮めるためにストゥーパや瞑想施設をおくことが多いそうです。ここのストゥーパは全て異なる形式のもので、左端がネパール式、中央がチベット式、右側がブータン式となっています(じつは小さなラダック式の小塔も含むそうです)。ネパール式やチベット式のチョルテンは「多宝塔」に近い構造物ですが、ブータン式だけが圧倒的にシンプルな構造をしています。


チュゾン ブータン式ストゥーパ


 その後近くの売店(↓右)で、ブータンの食物についても知ることができました。店ではヤクの乳からつくったチーズやダショー西岡がひろめたリンゴなどさまざまな食物が売られていました。ブータン国民が愛してやまない赤米や、激辛の唐辛子にもいろんな種類がありました。標高2000~2500mのエリアでは、気候・生態が日本に近く、アカマツ林がひろがっていることから、マツタケが多く取れます。ガイドのウゲンさんの話では、ブータン人はあまりマツタケを食べないそうですが、日本の旅客を目当てにした路肩の売り場があり、この日も少々買い込んで(↓左)ホテルに向かいました。


0905ティンプー003松茸買い お店


 首都ティンプーのホテルに到着したのは18時ごろで、18時半からホテルの門前にあるインフュージョンというレストランで夕食会が始まりました。ブータン最初の夜、ツアーの手配をしていただいた旅行社の社長、ガマさんとの会食という特別なものでした。じつは、インフュージョンはガマさんのお父様が経営されているお店でして、予約なしでは食べられません。ガマさんは笑顔を絶やさないとても優しそうな印象の方で、私たちゼミ生のことも気にかけてお話をくださいました。また、夕食で出していただいたどの料理も美味しかったです。とくに、乾燥豚肉と大根を使った料理が非常に美味しかったのと、道中で購入したマツタケのソテーが日本では考えられないほど大量のマツタケを使っていたので印象に残りました。


0905ティンプー001


 夕食をいただいた後、しばらくホテル周辺を散策してお土産を探しました。もう夜遅い時間帯であったため開いているお店の数はあまり多くなかったですが、私はマグネットを購入しました。ブータンで最初に購入したお土産です。
 このような楽しい1日を過ごした後、ホテルに戻って撮影した写真などのデータを整理した後、就寝しました。環境が変わると眠れないのではないかと不安でしたが、そんなことはありませんでした。翌日からの本格的な活動を楽しみにブータンでの初日をリラックスして終えることができました。(月市)


0905ティンプー002夕食01 0905ティンプー002夕食02

0905ティンプー002夕食03


《参考サイト》
風の谷 ポプジカ紀行-第8次ブータン調査
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2094.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2108.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2115.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2095.html
(5)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2109.html
(6)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2099.html
(7)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2118.html
(8)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2100.html

風に吹かれて-第7次ブータン調査
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1883.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1888.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1881.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1886.html
(5)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1892.html
(6)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1891.html
(7)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1895.html
(8)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1900.html
(9)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1896.html
(10)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1899.html
(11)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1893.html

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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