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風の谷 ポプジカ紀行(5)-第8次ブータン調査

ケワンラカン03 アーチェリー01


ケワン寺と門前のストゥーパ群

 9月8日(日)。ブータンでの調査も折り返しです。道を車で走っていると、ブータンの国技であるアーチェリーをしている人たちに出会いました(↑右)。村ごとで戦うそうです。
 この日ははじめに、ポプジカにあるケワン寺(Khewang Lhakhang)を訪ねました。ケワン寺は、少年僧の学校も設けています。ここで修学した少年僧たちは、適齢になると、ガンテ寺仏教大学に進学し、さらに修行を重ねるのです。


ケワン寺外観a ケワン寺02少年僧01


 ケワン寺は15世紀ころに開山したニンマ派の寺院です。寺ができる前は湖があった場所で、この地域で水を意味する"ケ"という言葉が寺の名前の由来になっているそうです。寺の手前の建物は新しく修復されたものでしたが、本堂自体は古く、歴史を感じます。案内してくださった僧侶のRinzin Dorjiさんは28歳と若く、現在は3年間の瞑想に向けて準備をしているとのことでした。


ケワン寺外観07


 本堂の外陣にはカンリン(Kang Ling)という人の膝骨で出来ている棒状のものがありました。ガイドのウゲンさんによると、これがあるのはチベット仏教だけだそうです。本堂の中なので写真は撮れませんでしたが、紅白に彩色されていました。本陣には釈迦過去仏、釈迦、弥勒菩薩が祀られていました。ブータンでよく見られる過去・現在・未来の釈迦の姿を現したもので、「リスムサンゲ」と言われています。この寺の仏像はスサ混じりの土で作られた塑像であることが特徴的です。他にもタラ菩薩の像がいくつかみうけられましたが、これは近所の民家から寄進されたもので、偶然タラが多くなったそうです。


ケワン寺03外観03 ケワン寺外観06 ケワン寺外観04 ケワン寺外観05


 本陣には壁画もあり、もともとは別の場所で布に描かれたものが壁に貼られていました。8大菩薩やグルリンポチェだけでなく、タンディン(Tamdin)という護法尊が描かれていました。日本語では馬頭観音と言い、元々はインド神話に出てくる悪魔だったようです。やはり、護法尊は壁画やタンカに描かれることがあっても、偶像として存在することはなかなかありません。これまで私たちの研究室の調査で発見した、チメラカンの魔女アムチョキムやナギリンチェン崖寺のギュンダップとツォメン、八地区民家の赤鬼ジョーと青鬼チュンドゥは語法尊が偶像になっている極めて例外的な存在であることを実感しました。


ケワンラカンとストゥーパ02 ケワン寺06ストゥーパ02


 ケワン寺の門の斜め前、約220m離れたところに5基のストゥーパが並列していました。修復工事の直後であったため、わってすぐのようで、仏龕に仏像は飾られていませんでしたが、ウゲンさん曰く、祀られているのは、アシュク仏(Ashobyak)、無量光仏(Amitaba)、法相如来(Ratna Sambhava)、不空成就如来(Amoghasiddni)、大日如来(Vamocaua)の五大如来だろうとのことです。中央の1基がもちろん大日如来です。


オグロヅル01 オグロヅル02


オグロヅル保護センター

 ケワン寺からこの日もガンテ寺をめざします。道中、オグロヅル保護センターを訪れました。オグロヅルは11月ごろにチベットから飛来して、2月にチベットもどっていきます。ポプジカ谷は冬越をする暖かい棲家なのです。センターには、ケガをして飛べなくなったオグロヅルが一羽保護されていたので、私たちはツルを見ることができました。オグロヅルの飛来シーズンは、ポプジカのホテルは全て満室になります。世界中から集まったバードウォッチャーたちは。ティンプーやパロに宿をとってオグロヅルを日帰りで見に来るほどだそうです。広い湿地帯に沢山のオグロヅルが舞い降りたら綺麗だろうなぁと思いました。


0908ソナムユデン・ファームハウス001空飛ぶちんちん02アップ 0908ソナムユデン・ファームハウス001空飛ぶちんちん01sam


空飛ぶちんちん正宗

 その後、ガンテ地区のソナムユデン・ファームハウスを訪れました。ここの仏壇はかなり立派なものでしたが、撮影はいっさい認められません。どうやら在家信者の高位の方のお宅らしく、仏像撮影禁止のルールが寺院仏堂に準じているのです。その代わりと言ってはなんですが、正真正銘、オーセンティックなフライング・ファルスが軒先に吊るされているのを確認し、写真をたくさん撮ることができました。これは愉快なできごとです。


壁状ストゥーパ


ガンテ寺-壁式チョルテンの測量

 この日ガンテ寺を再訪したのは、門前から約400m離れた参道の端に建つ壁式チョルテンを測量するためです。今回は3年生二人の実習も兼ねていて、まずは二組に分かれて配置図を描きました。平面は単純ですが、距離が長いので、歩測で配置図を描く方法を教えました。さらに応用として先生が斜面の表し方や、記載しておくべき寸法などの情報を補足的に教えてくださいました。その後、レーザー距離計を使って寸法を略測します。このとき大きな方の機器が動かなくなっていることが分かり、小さなほうの機器で測りました。調査にもっていくカメラや機器は1台ではリスクが大きい。2台以上が原則です。夕食時に各々計算した寸法を照らし合わせて、ストゥーパの全長はおよそ22mだとわかりました。


チメラカン01


チメラカン再訪

 少し遅めの昼食を取り、プナカのチメラカン寺へ向かいました。長い坂道の参道をあがると、大きな菩提樹と、ドゥクパ・クンレーが魔女を封じ込めた黒いチョルテンが建っています。この日はニュンネという法会の日で、大勢の参拝者でにぎわっていました。ここは昨年の調査の際、内陣仏壇の隅に魔女(護法尊アムチョキム)の像をみつけた寺です。写真の撮影はできないので、今年はアムチョキム像のスケッチをするために再訪しました。私たちがスケッチをしていると、人懐っこい少年僧がにこやかにスケッチを覗き見ては褒めてくれたり、バナナを差し入れしてくれたりしました。ところが、チメラカン寺の管理僧があらわれて、スケッチをやめるよう指示しました。心なしか気さくな少年僧も肩を落としています。私たちが帰った後にあの少年僧が怒られていないことを祈ります…

 チメラカンではお土産もみました。ご存知のように、この寺の周辺はファルス信仰が盛んであり、ファルスの置物やキーホルダーなどが土産物屋や参道路肩でたくさん売られています。昨年ゼミ生にキーホルダーを買って帰りましたが、不評だったので今年はお土産にはしませんでしたが、どうやらザキオさんは今年も結構仕入れていたようです。


チメラカン02 チメラカン03


《参考サイト》
風の谷 ポプジカ紀行-第8次ブータン調査
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2094.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2108.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2115.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2095.html
(5)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2109.html
(6)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2099.html
(7)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2118.html
(8)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2100.html

風に吹かれて-第7次ブータン調査
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1883.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1888.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1881.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1886.html
(5)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1892.html
(6)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1891.html
(7)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1895.html
(8)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1900.html
(9)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1896.html
(10)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1899.html
(11)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1893.html

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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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