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風の谷 ポプジカ紀行(3)-第8次ブータン調査

0906ワンディーポダン城01 遠景 0906 ワンディーポダン城 改訂版 遠景01 


ワンディーポダンゾン

 9月6日(金)午後、昼食を終えた私たちが次に訪れたのは、ワンディーポダン城 WANGDUE PHODRANG DZONG とその濠のように流れる川に架けられた橋の見える場所です。ウゲンさんによると、この城は最近火災で焼けてしまったのですが、多くの人びとからの寄付を受けて再建されたそうです。日本からも千人以上の方から寄付をいただいたとのこと。


0906ワンディーポダン城03 船型の橋


 その橋の橋脚はよく見ると独特な形をしています。先生によると、それは船の形であり、かつて船を横並びにして上に板を渡し橋にしていたため、その橋脚にその名残があるということです。ワンディーポダンゾンがある一帯にはサボテンが多く生えていることが分かりました。これも、外敵からの防御の役割を担っていたそうです。


0906 ワンディーポダン城 道中 糸状のコケ 改訂版01 0906 ワンディーポダン城 道中 ウマエレナ 改訂版01


 ワンディーポダンゾンの見学を終えて車に乗り、高度はぐんぐん上がっていきます。海抜2500mをすぎるころから窓外の樹林にトロロ昆布のような植生が増えていきます。先生によると、それは高地性の苔であるということでした。また、地面に生えている黄色いきれいな花もたくさん見ることができました。先生によるとこの花はウマエレナといい、数多く生えていますが、牛や馬などの家畜は匂いを嫌って決して食べないということでした。


0906ラワラチョルテン01 外観01 0906 ラワラチョルテン 遠景 改訂版01


ラワラ・チョルテン

 まもなくラワラ峠に到着しました。そこにはラワラ・チョルテン(LAWALA CHORTEN)という中型の群集ストゥーパが道の真ん中に建っています。です。このストゥーパは、かなり昔からあり、それを修復して新しくみせているようです。中心ストーパ1、周囲のストゥーパが8基で、計9基が高い基壇上に対称をなして建っています。小ストゥーパの中には文殊菩薩、釈迦如来。無料鉱物などを納めており、大ストゥーパはニンマ派の開祖グルリンポチェ(↓左を祀っています。ここではチョルテンの平面寸法を計測しました。基壇は長辺18m×短辺11mの規模でした。
  峠は天地の境であり、悪霊がいるのでそれを浄化するためにチョルテン(群)を造営するという説明もありました。さらに先生のお話では、このようなストゥーパはマンダラを立体化したものであり、複数の尊格によって構成された仏教的宇宙を表現しているということです。


0906ラワラチョルテン03 グルリンポチェ01 0906 ラワラチョルテン 遠景 改訂版02



0906ガンテ寺01 ガンテ寺外観


ガンテゴンパ

 次に訪れたのは、ガンテゴンパ GANTEY GOENPA という寺院です。ラカン LHAKHANG とゴンパはいずれも「寺」と訳せますが、前者は「本堂」、後者は「僧院」が本来の意味のようです。僧侶を多く抱える大寺はゴンパと考えてよいと思います。ます私たちは寺院境外から約400m離れた参道隅に建つ壁式チョルテン(マニダンリム)を観察しました。
 最近修復されたものだということで、仏像は入っていませんでしたが、壁の両面に仏を描くパネルが入っていました。ウゲンさんのお話では、3体のうち左が文殊菩薩、中が観音菩薩、右が金剛菩薩だということでした。一方の説明を聞いて壁の反対側にまわると別の仏が入っていました。この3体は左が過去釈迦仏、中が釈迦如来、右が弥勒菩薩です。


0906ガンテ寺02 壁状チョルテン01 外観
1枚目 文殊菩薩(左)観音菩薩(中)金剛菩薩(右) 2枚目 過去釈迦仏(左)釈迦如来(中)弥勒菩薩(右)
0906 ガンテ寺 境外チョルテン文殊菩薩観音菩薩金剛菩薩 改訂版01 0906 ガンテ寺 境外チョルテン多宝如来釈迦如来弥勒菩薩 改訂版01


 そこから参道を上り、16時前くらいにガンテゴンパ(ガンテ寺)の山門に着きました。このお寺は、中世の宝物探しで名高いペマリンパの孫が1613に造営したものです。現在は大がかりな改修工事が行われており、ジムカン(僧房)などはほとんどすべてが新しくなりつつあります。


0906ガンテ寺07 ガンテ寺左側 ガルーダ 0906ガンテ寺08 ガンテ寺左側 龍と白獅子 0906ガンテ寺09 ガンテ寺左側 虎 
↑(左)ガルーダ (中上)龍 (中下)白獅子 (右)虎  ↓左から虎 龍 ガルーダ 白獅子
0906ガンテ寺10 ガンテ寺中央 虎 0906ガンテ寺11 ガンテ寺中央 龍 0906ガンテ寺12 ガンテ寺中央 ガルーダ 0906ガンテ寺13 ガンテ寺中央 白獅子


ゾラフラと再会

 本堂の外観を観察すると、建物の両側の窓や正面のマグサあたりには、四大魔除けとされるガルーダ(神鳥)、龍、虎、獅子が飾られています。本堂内部は撮影禁止でしたが、先代の僧侶の遺体が納められた仏塔や、グル・リンポチェの像などが置かれていました。仏壇上には、左に弥勒菩薩、中央に釈迦如来、右に過去釈迦仏となっており、壁式チョルテンと左右反転の配列卯となっています。壁には八大菩薩やタンディン(ボン教の神→護法尊)、バジュラバニ(金剛菩薩、護法尊)、輪廻の世界(人間・修羅・天界・地獄・畜生道・餓鬼)のそれぞれの状況を描いたもの、緑タラ菩薩などの画が数多く描かれていました。


0906ガンテ寺14 壁画 知恵の目 三つ目の四天王?


 壁画には人間とは違って3つ目をもつ仏像の変化(へげ)などが多くみられました。ウゲンドさんによると、第3の目は「知恵の目」とよばれ、仏はこの目で私たちのことを見通しているということです。これらの壁画は結婚?についての考え方など、仏教の知恵を私たちに伝える喚起物としての役割も果たしているというので、複雑で難解な世界だと感じました・・・


0906ガンテ寺15 壁画 ザラフラ ザラフラ


 こうして見学を終え、ガンテ寺の山門をくぐるとき、門中に描かれている壁画についても説明していただきました。すると、山門に入って左手の壁画にある絵が、初日にタクツォガンで話題に上ったザラフラだということが分かりました。怖そうな容貌をしていますが、ニンマ派のありがたい護法尊だということです。

 この日の調査を終えて、ホテルに到着しました。夕食はどの料理も白いご飯に合うもので、非常に美味しくて疲れが吹き飛んでしまうほどでした。とくににエマ・ダツィというトウガラシとチーズを合わせたブータン料理が、美味しいのですがとても辛くて印象に残りました。ブータン人はこの料理を毎日食べるということです。
 このような活動をおこなって1日が無事に終了しました。次の日はガンテ寺仏教大学の校長先生にお話をうかがえるということで少し緊張しながらベッドに入りました。(月市)


0906ポプジカホテル01 お茶の時間 ポプジカホテル


《参考サイト》
風の谷 ポプジカ紀行-第8次ブータン調査
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2094.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2108.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2115.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2095.html
(5)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2109.html
(6)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2099.html
(7)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2118.html
(8)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2100.html

風に吹かれて-第7次ブータン調査
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1883.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1888.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1881.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1886.html
(5)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1892.html
(6)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1891.html
(7)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1895.html
(8)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1900.html
(9)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1896.html
(10)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1899.html
(11)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1893.html

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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