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『鳥取県の民家』を訪ねて(38)

0916 新聞№20 岡本家 木原の現状


失われゆく古民家(3)-国府町編

 新聞No.20岡本善造家  9月16日(月)、市内国府町と用瀬町の民家を一人で再訪しました。新聞No.20岡本家をめざして鳥取市国府町木原を訪れたところ、今回はいつもの調査と雰囲気が違います。どの民家からも音がせず、人影が見えません。村全体が静寂に包まれているのです。歩いていると、一人の女性が目に入ったのでお話しを伺いました。
 現在、国府町木原にはこの奥様のお母様一人だけが住んでおられるようです。木原に民家は何軒かあったものの、奥様のご実家以外すべて空き家になっていて、奥様は現在市内にお住まいで、お母様のお世話をするためたまに木原に戻ってきているとのことです。お母様は95歳のご高齢であり、直接お会いすることはできませんでした。


0916 新聞№20 岡本家 当時写真  新聞(1974)


 新聞掲載当時はまだ国府町木原には10~15世帯が住んでいて、子供も居たそうです。次々に市内へ引っ越しする人が増え、今はお母様一人となってしまったのです。この村には岡本姓の家がたくさんありますが、奥様曰く岡本善造という名前は聞いたことがない・・・茅葺き民家が多かったため、新聞の写真を見せてもどの家かわからないとおっしゃいます。もしかしたらお母様がご存知だったかもしれません。今回は調査に行ったものの新聞掲載民家が特定できなかった例です。
 新聞には豪農ではなく、平凡な庶民の素直なすまいであったと記載されています。三間取り広間型の入母屋づくりで、ザシキに一間柱が遺されている昔からの姿をそのままにしていた民家であったとあります。国府の村は破風を小さく作るなど、同じ因幡でも地域により相違がみられることが載っていました。


0916 新聞№18 山本家 神護の村jpg


国府町 神護

 新聞No.18 山本徳松家  国府町神護の土地の起伏が激しい山腹に家の点在する村です。屋根が道路より低い家、道路から数10m上にある家など、新聞の記載通りの景観で、家々へのアプローチも非常に難しく、ヒアリングが難航しました。歩いている方々に電話をつないでいただき、山本さんの奥様と娘さんのお婿さんからお話をうかがうことができました。
 神護は殿ダム建設とともに戦後の歴史を歩んできました。昭和30年ごろから殿ダムの話は出ており、新聞掲載当時の国府町は反対運動が盛んな時期で大変であったようです。そして殿ダム建設が決まり、15年前ダム建設に伴う河川改修が行われ、山本家を含め神護川に沿って軒を連ねる4軒の茅葺民家は立ち退きを要請されます。この時期は環境大学(私立)開学の時期と重なりあい、学長公舎に神護の空き家民家(明治30年ころ)の古材を転用することから接点ができ、4軒の保存運動に係わった先生も苦い想い出しかない、と聞いています。
 奥様も新聞掲載時の茅葺き民家にずっと住んでいましたが、立ち退きにあたって、撤去した茅葺民家の代わりに、山側上流の敷地(元は田んぼがあった)に新居を建てられ、現在、家族はそこに住まわれています。撤去した材は県が回収し、「かやぶき交流館」に再利用したようです。4件の茅葺民家の跡地には砂防能力の高い水路が流れ、橋がかかっています。


0916 新聞№18 山本家 跡地 ←山本家跡地



0916 新聞№18 山本家 移築後の交流館 かやぶき交流館


 山本家は庇(下屋)がなく、大屋根が葺きおろしのままの古い外観をもつ家であったそうです。標準的な農家で広間型三間取に復元でき、裏側は土壁であったと新聞には掲載されています。国府の民家は江戸末期でも座頭柱という入側柱が立っている家が多い中、この家は手斧仕上げの古い家でありますが、座頭柱が無い家であったというから18世紀以前に遡る年代物であったと思われます。


0916 新聞№18 山本家 当時写真 1 ←新聞(1974)


 殿ダムの上流にあたる神護は4軒の立ち退きだけでしたが、下流の拾得という集落は村ごと削りとられてダムに沈んだそうです。奥様と娘さんのお婿様は調査に親身になってくださり、大事な思い出を丁寧に話してくださいました。
 指定・登録ではないが、部分的に古材をリサイクルして、茅葺きの新しい建物を別の敷地に建てた珍しいパターンです。民家変容パターンの新しい例かもしれませんが、基本的にD-1類と考えておきます。


0916 新聞№08 井戸垣家 現状新築民家


国府町 山根

 新聞No.08井戸垣純二家  山根に入ってすぐに井戸垣家住宅を見つけることができました。ヒアリングに応じてくださったのは純二さんの息子さんにあたる今のご当主です。新聞掲載の民家を撤去したのは昭和57年であり、跡地に新居を建て現在息子さんと二人暮らしされています。茅葺き民家を撤去した方が「この材を使用して何かを建てたい」とのことで材を保管していたそうなのですが、どこからか出火して焼けてしまったそうです。ご当主はとてもお忙しい様子であったので早々にヒアリングを切り上げることにしました。
 入側柱が表側と台所側に残されている十六畳の大広間づくりで、建築年代は幕末と推定されますが、それよりも古い形式だとも聞いています。大庄屋の記録がないものの、上段の間がしつらえてあり、規格外の平面規模であることも考えると、豪農系の民家と推定せざるをえません。変容パターンは撤去後新築のD-2類です。(八木部長)


0916 新聞№08 井戸垣家 当時写真 外観 ←新聞(1974)



【連載情報】
(01)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2042.html
(02)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2044.html
   №016④三百田家(若桜吉川・県指定)  №012③矢部家(八頭用呂・国重文)
(03)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2046.html
(04)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2050.html
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(08)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2054.html
(09)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2055.html
   №027⑦福田家(紙子谷・国重文)  №025⑥西尾家(八頭万代寺)
(10)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2056.html
   №021⑤谷上家(佐治余戸)
(11)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2059.html
   No.011②木下家(布袋・県指定)  No.006①米山家(岩美外邑)
(12)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2060.html
   №023⑧西尾家(赤子田)  №030⑩奥田家(猪子・県指定)
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   №029⑨松本家(江津)
(14)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2069.html
   №040⑯小椋家(木地山)
(15)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2070.html
   №029⑨松本家(江津)2回目
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   №023⑧西尾家(赤子田)2回目
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   №086㉝福田家(日南上萩山)  №082㉜長谷家(日南萩山)  №088㉞石川家(日南笠木)
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   No.104㊲乃木家(日野黒坂)  №103㊱細木家(日野黒坂)  №097㊱内藤家(日野板井原)
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   No.076㉚下原家(江府町俣野)  No.081㉛車家(江府町貝田)
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   №060㉔高田家(米子市福万) №058㉓後藤家(米子市内町)
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   旧森家住宅-浜坂先人記念館 以命亭(新温泉町浜坂)
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   新温泉町民家調査(新温泉町浜坂)
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   新聞No.15小島家(八頭町石田百井) 新聞No.22今嶋家(八頭町西御門)
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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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