「寅さんの風景」2コマだけ復活(2)


河原宿での出会い
10月15日(火)、30名近い学生を引き連れて寅さんツアーにでかけてきました。その1週間前にはもちろんDVD「寅次郎の告白」を視てもらいましたが、14講義室での視聴時はシ~ンとしていて、これはやっぱり世代の差かなぁ~と観念したものですが、いざフィールドに出ると、学生たちは活きいきと躍動しました。
昨年までの連続立面図作成は準備が大変なのでやめることとし、DVD鑑賞感想文の最後に現場でのスケッチ希望か、ヒアリング希望かのアンケートをとり、各自の希望に即して河原宿での実習では、スケッチ班を3班(新茶屋・背戸川・森下医院)、ヒアリングを4班(A~D区)編成して実働1時間の作業に取り組みました。


スケッチ班の活動は予測可能でしたが、ヒアリングは初めての試みであり、私も学生もどうなることか、と案じてはおりました。しかし、学生たちは勇猛果敢に民家の戸口を叩いて家人に話を聞いたり、通りすがりの方に話しかけたりして、大いに盛り上がったのでありました。総じて河原宿の住人たち(高齢者)は「寅次郎の告白」(1991)のことをよく覚えていて、写真や冊子・タオルなどの記念品を気前よく提出してくださいました。なかには翌日も話を聞きにきてという嬉しい依頼もあり、わたしがアッシーになり、学生3名とそのお宅を再訪したところ、なんと丹波笹山在住の姉の同級生だったりして・・・わたしは大学に戻りましたが、学生たちは道の駅でオムライスをちゃっかりご馳走になったようです。D班の学生1名の感想文を抜粋して転載します。
(略)最初に話しかけた方がとても良い方で、さらに当時役所で働いており、寅さんの担当を
していたと聞いて、とても幸運だった。一日ではすべて聞くことができず、次の日もおばあちゃん
のところへ行った。まったく苦ではなく、むしろおばあちゃんに会いたい気持ちが大きかった。
本当にいい出会いをした。先生のご家族とも知り合いで、縁ってすごいと思った。パッチワーク
が好きで、私達にもいくつか作品をくださった。大切にしたい。最後に道の駅でとてもおいしい
オムライスと焼き芋をご馳走していただき、さらに大学まで車で送ってくださった。寅さんの映画
に出てきた(倉吉の)駄菓子屋のおばあちゃんのように、鳥取は温かい人ばかりだと思った。
初めて会った私たちにこんなに良くしてくれて感謝しかない。また、集合場所へ向かうとき小学生
の帰りの時間と重なり、みんな「こんにちは」とあいさつしてくれた。温かくいい町だった。
とても楽しい実習だった。ヒアリングを選択してよかった。必ずまたおばあちゃんに会いに行きたい。




日本男児の美学さ
河原宿を離れて、片山の八東川堰堤に行きました。ミツオとイズミちゃんが愛を語りあう場面です。「野に咲く花があるとして、その綺麗な花をそっとしておきたい男と奪い取ってしまいたい男がいて・・・」という有名な科白の舞台となった河岸であり、その説明をすると、「先生はどっちなんですか?」という質問がブーメランで帰ってきた。「そりゃ寅よ・・・我慢するのよ。寅さんはたとえマドンナが自分に好意をもっていることを知ってもその場を去っていく・・・日本男児の美学としかいいようがない」などと分かったような思わせぶりな回答をごまかすようにして足早にバスにもどり、若桜鉄道安部駅へ。

美容院までヒアリング
安部駅ではトイレの修復と新築が進んでいました。トイレを男女別に設けるためだそうです。駅舎内部の展示も更新されています。どうやら観光客増加の影響らしく、河原もこれに倣いたいよね。新茶屋と対面の谷本家の二軒の空き家をひっくるめて「上方往来 寅さん記念館」に再生できないものでしょうか。
さて安部駅では、ガタイのでかい男子学生2名を寅役に指名してプラットフォームと赤電話のシーンの再現撮影をし、後者については女子学生1名もモデルにトライしてもらいました。また、駅舎に食い込んでいる美容室が開店中でお客さんが少なかったので、ヒアリング班を集合させ、だれか聞き取りに挑戦して、と依頼すると、3名の女子学生が店に入って話を聞いてきてくれました。そんなこんなで、わいわいと2コマ分の実習が終わり、即位礼をはさんで2週間後にすべての成果物を受け取りましたが、素晴らしい出来栄えのものが多数あり、嬉しい悲鳴をあげた次第です。


河原宿と阿部駅の両方でヒアリングしたC班の学生の感想も掲載しておきます。
(略)新茶屋の近くを歩いていると家の前でお話しされていたお二人、上田さんと写真を
くださった谷川さんがとても気さくに声をかけてくださった。先生を小さいころから知っていると
いって、懐かしそうに「シゲオちゃん、あそこでラジオ体操して」とか、何かとシゲオちゃんと
嬉しそうに話してくださった。寅さんのことについても、懐かしそうに事細かに話してくださった。
私たちが寅さんのことについて学ぶために訪ねたことを本当に歓迎してくださっているのが
伝わって本当に嬉しかった。通り過ぎる近所のおじいちゃんや、下校途中の小学生に必ず
一言声を掛けている上田さんの姿がとても印象に残っている。小学生も人見知りをほとんど
しなくて、私たちにも何をしているの?と嬉しそうに近づいてきてくれたのがとても嬉しく、また、
この地域での生活の一部がそういった人との関わりの中で見えた気がした。
長い時間インタビューを受けてくださったり、思い出として大事にしていたはずの写真や
手ぬぐいを快く下さったお二人にはとても感謝している。
安部駅を訪ねた際、(略)先生から誰かここの駅を経営していらっしゃる美容院の方にインタビュー
をしてみないか、と言われ、河原でのヒアリングが楽しく、自信にもなっていたので、3人で
インタビューすることにした。(略)寅さんのロケ地だということとは関係なく、ここの場所で美容院を
始めたことや、山田洋次監督がプライベートで駅に来られていたことなど、インタビューをしないと
知り得なかったことを知れてとても嬉しかった。急にちゃんと準備もしていない私たちを温かく受け
入れてくださって本当に感謝している。
いや、人生の画期をなすような実習・演習になりました。教員生活残すところ5年でようやく辿り着いた実習・演習のスタイル。あと5年か・・・

↑↓安部駅赤電話シーンの再現と記念撮影

