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『鳥取県の民家』を訪ねて(42)

1101 ㉘№072 山本家


静かな長田の村

 次は大山町長田で㉘No.072山本家住宅を調査しました。あまりにも人の気配がなく、村が静かであったため恐るおそる山本家の戸を叩くと、中から奥様が出てきてくださいました。山本家はこの村で最も古く、寛政年間(1789~1800)に庄屋の建物を移築したものらしく、茅葺寄棟造の広間型三間取に復原できます。今でも梁はそのままで、大きく改装した形跡は見られませんでした。奥様曰く、だいぶ前から山が枯れ茅を確保するのが難しくなり、日野町の方から「鉄板が良いよ」とのうわさを聞き、主屋の茅葺屋根を鉄板で覆ったそうです。いつごろ鉄板被覆にしたのかをうかがっていたはずなのですが、気づいたら、ひと月前に亡くなった柴犬るるちゃんの話になっており…奥様は涙を浮かべて「賢くて良い犬だった」と思いをはせていました。鉄板被服にした年は本当に覚えていないそうでした。


1101 ㉘№072 山本家報告書写真
↑報告書(1974)↓現状鉄板被服と鉄板被服内部(2019)
1101 ㉘№072 山本家 細部 1101 ㉘№072 山本家 鉄板の中


 奥様は現在一人でお住まいになられており、お子様も戻っては来ないかもしれない、とおっしゃっていました。長田の村は現在50件ほど民家があり、そのうち数件は空き家だそうです。お一人で住んで居られる奥様を心配して近所の人が見回りに来てくれていらっしゃるようで、安心しました。民家変容パターンはB類:未指定だが、茅葺き屋根を維持のB-2 茅葺き鉄板被覆に分類されます。


1101 ㉘№072 山本家 正面


1101 ㉕№062 吉持家 空撮1


南部町田住へ

 のどかな田んぼ道を歩いていると山の斜面にぽつぽつと民家が点在しており、奥へ進むとひときわ大きな鉄板被覆らしい民家が向かい合わせに建っておりました、㉕No.062吉持家住宅です。なんと奥様が門で待ってくださっていたのです、到着するやいなや、背負ったドローンに興味津々の奥様。「ぜひ飛ばしてみてほしい」と、ドローンの飛んでいる姿を自前のカメラで撮影しておられました。
 『鳥取県の民家』が刊行された昭和49年(1974)。県指定保護文化財に指定された吉持家は戦国時代の武将が発端の家系で、近世初期に帰農したようです。米子市、南部町、伯耆町にまたがる「長者原台地」の開墾、その長者原台地を養う農業水路「佐野川用水」を完成させたのも吉持家の祖先であったようです。現在当主は14代目、代々田住を支えてきた大庄屋です。


1101 ㉕№062 吉持家 報告書写真 1101 ㉕№062 吉持家 復元図
↑報告書写真と復原図(1974)↓現状写真(2019)
1101 ㉕№062 吉持家外観


 初代から家の場所は変わっていませんが、この家は棟札などの資料から文化年代(1804年~1818年)に7代か8代の当主が建て替えたものだそうです。茅葺寄棟造の変形五間取に復原されます。茅葺屋根だったものの職人さんも居なくなってきて、1969年(報告書刊行前)に鉄板被覆工事をおこない、1990年ごろに銅板被覆へ変えたとのことです。銅板被覆の工事費用は鳥取県が半分、南部町が4分の1出資してくれたようです。


1101 ㉕№062 吉持家 中庭 ←中庭の様子


 現在、奥様はご主人と二人暮らしで、お子様はどちらも家を出ておられます。先ほどの銅板被覆の件もですが、町の教育委員会が相談によく乗ってくれるとのことで、奥様の語り口調からも良い関係がうかがえます。奥様は昔の資料を綺麗にファイリングなさっており、歴史や家についてたくさん勉強しておられます。お子様が帰ってこない場合、町に寄付することも考えている、とおっしゃっておりました。奥様は本当に明るく元気な方で、「若い頃は仕事終わりに飲みたいから、米子まで自転車で行った」なんてこともお話ししてくださいました。おいしい柿もごちそうになり、「気をつけて帰ってください、もしよかったらまたおいでください」とお言葉を頂き、暖かい気持ちで帰路に向かいました。
 民家変容パターンはA類:指定による民家の保全のA-1 現地保存に分類されます。

 11月に入り、卒論提出まで4カ月ほどとなりました。教授、会長、ザキオさん、3年生に支えられ『鳥取県の民家』39件の内、未調査民家も残すところあと3件です。(八木部長)

【連載情報】
(01)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2042.html
(02)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2044.html
   №016④三百田家(若桜吉川・県指定)  №012③矢部家(八頭用呂・国重文)
(03)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2046.html
(04)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2050.html
(05)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2051.html
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(07)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2053.html
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(09)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2055.html
   №027⑦福田家(紙子谷・国重文)  №025⑥西尾家(八頭万代寺)
(10)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2056.html
   №021⑤谷上家(佐治余戸)
(11)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2059.html
   No.011②木下家(布袋・県指定)  No.006①米山家(岩美外邑)
(12)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2060.html
   №023⑧西尾家(赤子田)  №030⑩奥田家(猪子・県指定)
(13)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2061.html
   №029⑨松本家(江津)
(14)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2069.html
   №040⑯小椋家(木地山)
(15)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2070.html
   №029⑨松本家(江津)2回目
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   №023⑧西尾家(赤子田)2回目
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   №086㉝福田家(日南上萩山)  №082㉜長谷家(日南萩山)  №088㉞石川家(日南笠木)
(25)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2083.html
   No.104㊲乃木家(日野黒坂)  №103㊱細木家(日野黒坂)  №097㊱内藤家(日野板井原)
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(29)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2087.html
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   No.106㊳生田家(伯耆町三部)  No.107㊴足羽家(伯耆町二部)
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   新温泉町民家調査(新温泉町浜坂)
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   新聞No.15小島家(八頭町石田百井) 新聞No.22今嶋家(八頭町西御門)
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   新聞No.21保木本家(八頭町小別府) 新聞No.07大村家(八頭町富枝)
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   新聞No.06山陰合同銀行若桜支店(若桜町若桜) 新聞No.12中尾家(若桜町中町)

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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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