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建国七十周年の新中国(二)

1109講演05看板01


中華人民共和国建国70周年記念 建築史シンポジウム

 11月9日(土)。ネット不通の状況は早朝から良くない方向に影響を与えた。楊昌鳴さんがゲスト全員に送信した集合時間・集合場所の指示を受信できないままレストランで朝食ビュッフェを取り、微かな希望をもってネット接続に悪戦苦闘しているところに長身で美形の女子学生があらわれた。記念撮影があるからただちに会場に来てほしい、という依頼である。それからもまったく意思疎通は不調に終わり、わたし一人が記念撮影に間に合わなかったのである。遅れて会場入りするも、肝心のパソコンは部屋においたままだったので、いったんホテルに戻るしかなかった。長身の女子学生はもう一往復先導役を務めてくれた。お礼に甘栗を一袋プレゼントすると、とても喜んでくれましてね・・・


頭塔講演pdf_01 1109講演02"


 今年の建築学会は特別な意味があった。中華人民共和国建国70周年を記念する大会であり、建築史分会は「近70年建築史学研究と歴史建築保護」を主題とするシンポジウムを企画しており、わたしもその講演者として招聘されたのである。正式なイベント名称はとても長い。

           中国建築学会建築史分会シンポジウム
   「近70年建築史学研究と歴史建築保護-中華人民共和国建国70周年記念」

 わたしは午前のトリを務めた。演題と目次は以下のとおり。
           
 从东大寺头塔的复原看宝塔的起源        東大寺頭塔の復元からみた宝塔の起源
 -与藏传佛教窣堵波的结构和配置相比较-  -チベット仏教ストゥーパとの構造・配置の比較-

1 东大寺与头塔   東大寺と頭塔
2 头塔的遗构解释和过去的复原方案   頭塔の遺構解釈と復元案
3 头塔的系谱和修建背景   頭塔の系譜と建設背景
4 密教的扩散和毘卢遮那佛   密教の拡散と毘盧遮那仏
5 后期密教和立体曼陀罗   後期密教と立体マンダラ
6 浄土与寺院的距离   浄土と寺院の距離


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 この論考を中国建築学会で発表しようと思うに至ったのは、まったくもって岩永省三さんの新著『古代都城の空間操作と荘厳』(2019)のおかげです。大著に含まれる頭塔関係論文2篇を読み、奈文研の考古学者たちが夢想する「頭塔の塼塔起源説」を放置してはおくわけにはいかないという使命感が湧き出てきた結果です。塼を使わない戒壇状の塔を塼塔起源とみるのは、ボロブドールに代表される上座部仏教の立体マンダラと頭塔の系譜関係を認めたくない意志の裏返しなのですが、日本と同じ大乗仏教であるチベット仏教についてはいっさい考察されていません。わたしは後期密教に顕著なストゥーパや立体マンダラの配置や構造から頭塔の起源を捉えなおそうと試みました。 
 東大寺は南大門の約1km南に巨大なストゥーパ、もしくは立体マンダラをつくりたかった。それは複数の尊格によって構成される浄土を表現するモニュメントであった。それは、東大寺境内を正面遠方から浄化し、守護する役割を果たしていたのだが、その水平軸は此岸(世俗)と彼岸(浄土)の垂直軸の遠距離性を投影したものであろう、というのが講演の結論です。



頭塔講演pdf_03 頭塔講演pdf_02


 スピーチは中国語でやると決めていたのですが、なにぶん心配なところもあり、途中で詰まったら大変だということで、唐さんという女性研究者(重慶大学)に演台の脇で待機していただいたのですが、なんとか一人で演じきることができました。唐さんは登壇の直前、「先生の論文は素晴らしいです。自信をもってスピーチしてください」と勇気付けてくれましてね。あれは効果があった。オリンピックの試合にでるアスリートのような心境でした。


1109講演01


以下が論文の情報です。

 浅川滋男「从东大寺头塔的复原看宝塔的起源-与藏传佛教窣堵波的结构和配置相比较」
  『中国建筑学会建筑史分会年会及学术研讨会 2019 论文集(上)近70年建筑史研究与
  历史建筑被保护 -中华人民共和国的建国70周年纪念』中国建筑学会 建筑史分会年会・
  北京的工业大学、2019:pp.58-72

 この論文は翌週開催された中国科学技術学会の論文集にも掲載されました(挿図なし)。

 浅川滋男「从东大寺头塔的复原看宝塔的起源-与藏传佛教窣堵波的结构和配置相 比较」
  『2019年中国科技史学会建筑史专业委员会年会及国际学术的研讨会论文 集』中国科学
  技术历史学会建筑史专业委员会・福州大学、2019:pp.71-85

 以上の論文の粗稿(日本語)は以下のサイトに連載しています。

頭塔再考
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2101.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2103.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2107.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2110.html
(5)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2111.html
要約は以下を参照してください。
《大学HP》中華人民共和国建国70周年記念 建築史シンポジウムでの招聘講演
http://www.kankyo-u.ac.jp/tuesreport/2019/20191204/

 発表が終わり、数名の若手研究者に囲まれました。ほとんどが日本留学経験のある方のようで、流暢な日本語で話しかけてくれました。その感想を聞くと、まぁまぁの出来だったようです。昼食は学食で。昨年お世話になり、今年もまた招聘いただいた福州大学の朱永春先生、そして激励の介護者、唐さんの三人でランチしたのですが、すでにガス欠状態であり、食欲はなし。午後からのセッションは朱先生ほか二人だけ聞いて、咽頭通と頭痛に耐え切れなくなり、ホテルにもどって仮眠をとりました。【続】


2019頭塔CG02 2019頭塔CG01
↑頭塔復元CG(2019)

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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