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『鳥取県の民家』を訪ねて(45)

1120 先人記念館 森家住宅 正面


麒麟特別研究、但馬地域にむかう

 11月20日(水)、教授が中国から帰国されていましたがダウン状態であり、3年生とともに兵庫県但馬地区の新温泉町へむかいました。今年7月に採択された麒麟特別研究「昭和49年刊『鳥取県の民家』を訪ねて」では、『鳥取県の民家』報告書(1974)と「失われゆく古民家」新聞連載シリーズ(1974)に掲載されてある鳥取県内の民家を回ってきました。しかしながら、「麒麟」地区とには兵庫県の但馬地域も含まれています。こうした地域設定から、早めに兵庫県教育委員会著書『兵庫の民家-播磨地区調査概報』報告書(1969)と広瀬安美『兵庫の民家』(1974)の2冊を取り寄せ読み進めておりました。前者は副題にあるように播磨地区に限定されるので、但馬を含みません。一方、広瀬さんの『兵庫の民家』(1974)は今和次郎の『日本の民家』を思わせるスケッチと随想であり、但馬地区の民家を含んでいます。

 というわけで、広瀬さん著書のデータを参考に民家調査へむかいました。調査は2班に分かれ、『兵庫の民家』(1974)掲載民家の調査と浜坂から新温泉町にかけて谷筋の民家、集落等を調査・撮影しました。私の班はまず登録文化財「旧森家住宅-浜坂先人記念館 以命亭)へ。


1120 先人記念館森家住宅スケッチ(1974) ←広瀬さんのスケッチ(1974)


 森家は七釜屋という代々庄屋の家で、明治中頃の130年前に建てられたとされます。仏間を中心とした九間取りで、お店に入ってきたお客様からみて仏壇と神棚が一直線上に並ぶ珍しい間取りでした。吉方に森家の宝蔵、鬼門の先に寺など、風水に良い配置であるようです。2代目の建てた茶室が「以命亭」であり、改修時に撤去されてしまいました。浜坂先人記念館は資料館としての機能を持ち、一般公開していない二階部分を浜坂資料の収蔵庫にあてています。浜坂先人記念館の主屋、北ノ蔵、酒蔵、乾蔵、石垣は2008年登録有形文化財になっており、浜坂先人記念館の周辺民家も景観形成地区に指定されています。


1120 先人記念館森家住宅 神棚と仏間 1120 先人記念館森家住宅 酒蔵


 森家9代目が戦時中にお亡くなりになられ、そこから奥様は一人暮らしであったそうです。下宿などを開いて生活していましたが、平成の手前で10代目の居られる関東へ移り住みました。そこから20~30年ほどは空き家となっており、一時期は撤去の話も出たらしいのですが、「何とかして民家を残せないだろうか」と地域の人と町が話し合い、町が買いとり、改修を行ったことで今の浜坂先人記念館があるようです。
 1992年に開設された浜坂先人記念館は二代目の建てた茶室から名前を取り「以命亭」の愛称で地域の人に親しまれています。酒蔵部分では地域の作品展示から地元のアーティストを呼び催し物を開催するなど、記念館としてだけではなく地域の交流の場として活用されています。明るい館内に今日も小学生の習字が展示されており、地域の公民館のような優しい雰囲気を感じました。
 民家変容パターンはA類:A-1現地保存に分類されます。


1120 浜坂景観形成地区③ 1120 浜坂景観形成地区①


浜坂景観形成地区の調査とヒアリング


 浜坂先人記念館で案内してくださった職員さんとお話をしている中で景観形成地区に指定された民家資料のコピーをいただくことができました。それをもとに川沿いの遊歩道を歩きながら写真を撮っていきます。この景観形成地区は遊歩道と川を挟んだ岸に民家が連なり、遊歩道から各民家の裏口に向けて1本ずつ橋が架かっています。中には橋が架かっていない民家もあり、表の道路から見てみると倒壊しており空き家のようでした。住んでいる民家又は最近まで住んでいたには橋が架かり、住んでいない民家の橋は撤去されているのではないかと考えられます。木の格子が今でも残るような民家が並び、遊歩道から古い町並みを見ることができました。


1120 浜坂の和菓子屋


 途中で立ち寄った懐かしさを感じる和菓子屋さんで小休憩。店主に浜坂の町について聞いてみると快くお話ししてくださいました。この和菓子屋さん自体は昭和の建物であるようですが、道路を挟み正面にある民家が浜坂でかなり大きな家であったようで、そのお家についてお話を伺いました。
 井上家は代々続く庄屋であり、児島屋の屋号をもち浜坂では有名なお家であったようです。切妻造瓦葺民家高2階の民家で、入口は妻入でした。書道家の井上寒甃(1807)~(1880)はこの一族であり、8代目の息子であったという記録が残っています。民家はいつからのものか判別できませんが、玄関部分や壁など増改築の部分が多く、跡地に新築住居を建てたのではないかと推測されます。浜坂小学校校門という石碑があり、明治7年より明治8年まで仮校舎として借用、と刻まれていました、この家は子供たちの学びの場でもあったのでしょう。今はご子息も都会に出ており空き家となっているようです。
 民家変容パターンはD類:D-2 撤去後べつの建物を新築で、無住状態のパターンと考えられます。(八木部長)


1120 井上家住宅① 1120 井上家住宅②


【連載情報】
(01)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2042.html
(02)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2044.html
   №016④三百田家(若桜吉川・県指定)  №012③矢部家(八頭用呂・国重文)
(03)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2046.html
(04)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2050.html
(05)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2051.html
(06)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2052.html
(07)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2053.html
(08)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2054.html
(09)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2055.html
   №027⑦福田家(紙子谷・国重文)  №025⑥西尾家(八頭万代寺)
(10)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2056.html
   №021⑤谷上家(佐治余戸)
(11)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2059.html
   No.011②木下家(布袋・県指定)  No.006①米山家(岩美外邑)
(12)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2060.html
   №023⑧西尾家(赤子田)  №030⑩奥田家(猪子・県指定)
(13)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2061.html
   №029⑨松本家(江津)
(14)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2069.html
   №040⑯小椋家(木地山)
(15)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2070.html
   №029⑨松本家(江津)2回目
(16)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2071.html
(17)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2075.html
(18)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2076.html
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(20)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2078.html
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(22)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2080.html
(23)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2081.html
   №023⑧西尾家(赤子田)2回目
(24)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2082.html
   №086㉝福田家(日南上萩山)  №082㉜長谷家(日南萩山)  №088㉞石川家(日南笠木)
(25)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2083.html
   No.104㊲乃木家(日野黒坂)  №103㊱細木家(日野黒坂)  №097㊱内藤家(日野板井原)
(26)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2084.html
(27)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2085.html
(28)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2086.html
   №.051㉑小木家(東伯赤碕)  №052㉒門脇家(東伯赤碕)
(29)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2087.html
(30)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2088.html
   No.044⑱牧野家(関金町郡家)  No.041⑰鳥飼家(関金町大鳥居・県)
(31)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2089.html
   No.033⑫前家家(青谷奥崎)  №031⑪小谷家(鹿野町鹿野)
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   No.076㉚下原家(江府町俣野)  No.081㉛車家(江府町貝田)
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   No.106㊳生田家(伯耆町三部)  No.107㊴足羽家(伯耆町二部)
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   新聞No.16奥本家(用瀬町)  新聞No.17徳永家(用瀬町)
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   No.045⑲河本家(琴浦町箆津)  No.046⑳河本家(琴浦町箆津) 
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   №074㉙門脇家(大山町所子)
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   №072㉘山本家(大山町長田) №062㉕吉持家(南部町田住)
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   №038⑭尾崎家(湯梨浜町宇野)
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   №060㉔高田家(米子市福万) №058㉓後藤家(米子市内町)
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   旧森家住宅-浜坂先人記念館 以命亭(新温泉町浜坂)
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   新温泉町民家調査(新温泉町浜坂)
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   新聞No.15小島家(八頭町石田百井) 新聞No.22今嶋家(八頭町西御門)
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   新聞No.21保木本家(八頭町小別府) 新聞No.07大村家(八頭町富枝)
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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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