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四川高原-ストゥーパの旅(4)

190824寿霊寺01 190824寿霊寺05門前マニタイ 


寿霊寺

 8月24日(土)。まずは炉霍県の寿霊寺を訪れました。この寺院は1880年代にパンツェンラマ14世によって建立されたものです。山のふもとの門前には、仏像をレリーフにしたカラフルな板石をがたくさん立てていました(↑右)。本堂(↑左)の前から街の全景が広がり、その向こうの山の間に鮮水河という大河が流れており、風光明媚です。


190824寿霊寺02バターランプ 190824寿霊寺07 


 本殿に入ると、1階の扉に鍵がかかっていたため、2階から見学しました。2階仏殿の前には、バターランプ(↑左)が灯されています。灯明にバターランプを使うのは伝統的なやり方ですが、ブータンではすでに植物油に変わっており、ひょっとしたら初めてみる光景だったかもしれません。扉の内側に入ると、中央に本尊の釈迦牟尼を安置し、その両脇には、弥勒や文殊のほかにバラモン教由来の馬面金剛菩薩も祀っていました。その後、1階のカギを開けていただきました。1階は講堂のようになっており、中心に三世仏(過去釈迦・釈迦・弥勒)を祀り、壁にはせん仏を貼り付けています。1階は仏殿を取り囲むようにしてマニ車を置いています。さいごに僧侶たちとポラロイドで交流し、調査をおえました。


190824ボン教白塔01 190824ボン教白塔02


ボン教のストゥーパ
 
 移動途中10時40分ころ、炉霍県の旺達でボン教の白塔(ストゥーパ)を発見しました。道路のすぐ近くで川のほとりにあり、対岸には大きな集落があって、白塔の対面にボン教寺院の境内を望むことができました。上円下方のチベット仏教型ストゥーパですが、基壇テラスが分厚く、上段5段、下段が6段になっています。一番下の基壇は4,34m四方、高さ約7mほどです。複数のマンダラを配する群集型ではなく、単独型ですが、川向こうの寺院(と集落)を守護しているようにみえました。また、近くにはマニ車の水車もありました。ブータンでいうマニコロです。水流を利用して、常時マニ車を回転させるのですが、ボン教の場合、回転方向は反時計まわりのはずです。
 すでにブータンではボン教寺院は絶滅状態であり、むしろ中国の残存例を早くおさえて調査する必要があるように思います。

190824ボン教ストゥーパ02対面の寺院01 190824ボン教ストゥーパ02対面の寺院02
↑対面集落遠景(左)とそこに建つボン教寺院(右) ↓マニコロ
190824ボン教白塔03 



190824マニタイ工房01  190824マニタイ工房02 作業場


マニタイ工房

 11時20分、炉霍県江多でマニタイ工房を視察しました。私たちが訪れたときは、昼休憩の最中であり、とりあえずポラロイド撮影会で親睦を深めたあとにお話をうかがいました。この工房は、マニタイを自ら刻む時間がなかったり、裕福な人たちにに依頼され、マニタイを機械彫りするところです。男女10人ばかりの職人が顔面マスクをかぶりながらマニタイをドリルで彫っています。手彫りに比べて溝が深くなり、凹凸は目立つのですが、手彫りのような繊細さはありません。彫り終えた品は丘陵側の貯蔵庫に置かれます。彫られる文字はいうれも「オンマニ ぺメホン シュ」です。


190824マニタイ工房03 190824マニタイ工房04 マニタイ置き場

190824マニタイ工房02マニタイの真言02


 ヒアリングしてしばらくすると、この工房の代表の方に身分証を見せるように言われました。どうやら中国政府はマニタイを嫌っているらしく、私たちが政府の関係者ではないのかと確認したっかったようです。そのため、マニタイを置く場所は人がよく目にする場所には置けず、この場所のような目立たない場所に置いているそうです。


190824五明仏学院02 190824五明仏学院06 


ラルンガン大僧院(喇荣五明佛学院)

 マニタイ工房から5時間ほどかけて色達県にあるラルンガル大僧院(喇荣五明佛学院)に到着しました。駐車場で車を下りてからバスにのって参道(山道)を上がり、ようやく境内に至ります。この寺院は高地4,000mの僻地にあるにもかかわらず、約四千人の修学僧・尼僧を抱えるニンマ派最大の寺院です。それどころか、じつは世界最大の仏教寺院と言われており、中国政府から目の敵にされてきた歴史がよく知られています。大講堂など境内の周辺には、赤い色を塗ったログハウス風の修行棟が溢れんばかりに軒を連ねており、その小屋も中国政府によって多数破壊されてきたようですが、チベット仏教の中心地としての勢力はなかなか衰えていません。


190824五明仏学院05 190824五明仏学院01 修行棟群

190824五明仏学院02伝統的な建物02
在家信者の修行棟(1階が石積、2階をログハウス風)


 バスで門前までおりて改めて気づいたのですが、この山麓周辺にはベージュ色の修行棟らしき建物が群集しています。ヒアリングによると、赤色は出家者、ベージュ色は在家信者の修行棟だそうです。さらに男性信者と女性信者で居住区を分けているとのことです。その建物は1階が石積み壁、2階をログハウス風にしています。新築のものも少なくないようですが、そうした構造形式は伝統を踏襲しています(入手した古民家報告書に同種の構造を確認した)。本堂の内部を見学したかったのですが、漢族に対する警戒心は相当なものであり、観光客が内部に入ることは禁止されていました。
 一方、山麓駐車場の対面には群集ストゥーパの方形区画を確認しました。塔数を数える余裕はありませんでしたが、多数の多宝塔を方形の敷地に配する姿はやはりマンダラを立体化したようにみえます。
 この日も前日と同様に帰りの移動時間が長く、道孚県のホテルに到着したのは、21時ころでした。2日連続移動がつらく大変でした。あとで分かったことですが、色達はドライバーのマニさんの実家があるところであり、どうも無理矢理連れていかれたところがあり、教授は「行く必要のないところまで連れて行かれた」と不満を漏らされ、中国側との夕食を断って部屋で休まれました。疲労もピークに達しています。(ザキオ)


190824五明仏学院04 190824五明仏学院03


【連載情報】四川高原-ストゥーパの旅
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2137.html
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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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