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建国七十周年の新中国(三)

図02講演開始web 図01会場前での記念撮影(福州大学)


 12月14日(土)、無事に「魏志倭人伝の新しい解釈」講演会を終えました。自分が発表するわけではなく、ただ司会を務めるだけで、昨年の能海寛生誕150周年国際シンポジウムなどに比べれば気楽なものだとタカをくくっていたのですが、思いのほか準備にエネルギーを費やしました。その影響もあって、ブログには手をつけられない状態が続いていました。というのも、北京の建築学会講演を終えた翌日(11月10日)から1泊2日で蘇州を訪問しており、懐かしい古典園林を視てまわったものですから、その記録を書かねばならぬ、ということで写真の整理がおぼつかなくなり、ブログの全体が動かなくなってしまったのです。このやっかいな作業は冬休みにまわすことにします。


中国科学技術史学会国際シンポジウム「木造営造技術の研究」

 11月12日(火)、私はいったん帰国しましたが、3日後の15日(金)には再び中国に飛び立ち、翌16日は福州大学の演台に立っていました。中国科学技術史学会建築史専業委員会主催の国際シンポジウム「木造営造技術の研究」で「科学的年代測定と建築史研究」と題する招聘講演をおこなっていたのです。会場は福州大学。今回もまた中国語での発表です。恥ずかしながら、すでにふらふらの状態でして、どこまで体力がもつか・・・不安になっていました。
 講演の正式題目と構成は以下のとおりです。

科学性年代测定与建筑史研究           科学的年代測定と建築史研究   
-从日本木构建筑构件和不丹夯土墻廃墟的分析-  -日本の木造建築部材とブータンの版築壁跡の分析から-    
1.建筑年代和科学的年代测定   1.建築年代と科学的年代測定
2.米子八幡神社的栋札和驼峰、神像的年代   2.米子八幡神社の蟇股・神像の年代
3.寻找不丹佛教寺院大殿的成立时期   3.ブータン仏教本堂の成立時期を探る 
4.结束语   4. おわりに


(表紙)科学性年代测定与建筑史研究_01


 歴史的建造物の年代は従来、細部様式の分析と棟札などの文字史料等から検討されてきましたが、近年は木造建築部材の科学的年代測定を積極的に導入するようになってきています。科学的年代測定には、①放射性炭素年代測定、②年輪幅の変動による年輪年代測定、③酸素同位体比年輪年代測定の3種が知られています。いずれも精度を高めていますが、それぞれ一長一短があり、できれば2種以上の測定によって年代をクロスチェックするのがよいでしょう。まず、出雲大社境内遺跡出土柱材などの考古系木材を対象に科学的年代測定結果の相互チェックをした上で、鳥取市の大雲院本堂内陣柱・摩尼寺本堂小屋梁、米子市の八幡神社蟇股などの測定年代結果を棟札・様式と対照し、より正確な年代を特定するための方法を披露しました。さらに、ブータンで取り組んでいる版築壁内有機物の放射性炭素年代測定により、本堂の成立時期が国家形成期(17世紀前半)に遡る可能性が高いことを示しました。中国の建築史研究では、未だ科学的年代測定を導入することはほとんどなく、木造部材や壁内有機物の年代測定法には注目が集まりました。発表後には客家土楼の年代特定に協力してほしいなどの依頼がありました。



図03摩尼寺本堂小屋梁酸素同位体年輪年代測定web


 以下が論文の情報です。

 浅川滋男「科学的年代測定と建築史研究-日本の木造建築部材とブータンの版築壁跡の分析から-」(日本語版)、『2019年中国科技史学会建筑史专业委员会年会及国际学术研讨会论文集』中国科学技術史学会建築史専業委員会・福州大学、 2019:pp.1-16
 浅川滋男「科学性年代测定和建筑史研究-日本木造建筑构件和不丹夯土墙遗迹的分析-」(中文版)、『2019年中国科技史学会建筑史专业委员会年会及国际学术研讨会论文集』中国科学技术史学会建筑史专业委员会・福州大学、 2019:pp.17-32

 以上の論文の粗稿(日本語)は以下のサイトに連載しています。

科学的年代測定と建築史研究
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2120.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2121.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2123.html  


 発表後、会場で眠りに落ちてしまいました。翌日の発表を聞くのはもう無理だと判断し、学食個室での夕食後、奈文研時代の後輩たちに「あとは任せた」ということでぐったり横になった次第です。【続】


図04ブータン版築壁跡からのサンプル採取web


《関係サイト》                       
大学HP
http://www.kankyo-u.ac.jp/tuesreport/2019/20191204/
http://www.kankyo-u.ac.jp/tuesreport/2019/20191213/
 
建国七十周年の新中国
(一)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2135.html
(二)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2136.html
(三)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2148.html   
        

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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