内モンゴルのオボーを訪ねて(3)

バヤン・ボグドオボー
2019年9月15日(日)11時ころダルハン・ムミンガン連合旗に到着し、ガイドの二人と合流しました。本日はダルハン・ムミンガン連合旗の一番有名なオボーに行き、ダルハン・ムミンガンの伝統服装を着て、オボー祭祀をおこなう予定でした。


午前11:30、道路右側の山頂に三段円錐形のオボーをみつけました(↑)。登れるかどうかをハブラーさんに訊ねたところ、「その山全体が私有地になっているので近づけない。しかも、観光やガイドお断りらしい」とおっしゃいます。残念ながら、訪ねることができませんでしたが、車窓からぼやけた写真を一枚取れてよかったです。

昼食を済ませ、13時に海抜1,658mのバヤン・ボグドオボーに到着しました。ダルハン・ムミンガン連合旗所有の群集型オボーになります。連合旗の中で最も歴史が古く、1886年に築かれました。「昔はダルハンとムミンガンは2つの集落でした。このオボーは当時2つの集落が共同に営んでいました。当時のバヤン・ボグドオボーは周辺に9基の小型オボー伴い、大オボーにガンジラを挿し、表にスルデを立てた。チベット文字で書かれた三列の真言までありました。しかしながら、1953年6月15日、鉄鉱の開発のためバヤン・チャガン山の頂に移築され、今に至るまでずっとバヤン・ボグドオボーと呼ばれてきたのです。古いバヤン・ボグドオボーは海抜1,603mのところにありました」とハブラーさんは説明しながら、民族衣装を手渡してくださいました。
着替えた後、今のバヤン・ボグドオボーを略測しました。高さ12m、直径60mに及ぶ大型のオボ-で、周辺に高さ3m、直径2mの三段円錐形の小型オボーを12基伴います。


小型オボーの数についてハブラーさんに聞くと、いろいろ説明していただきましたが、わたしは以下のようにまとめました。オボーを独立系オボーと群集型オボーの2種類に分類します。
①独立系オボー: 一基だけ存在するオボーを「独立系オボー」と呼びます。独立系オボーは「大オボー」「ノヤンオボー(ノヤンは官僚の意)」「将軍オボー」「中心オボー」とも呼びます。一般的にモンゴル人は「円満オボー」と呼ぶことが多いかもしれません。昔からの伝統的オボ-です。モンゴル語で「単独」は「ダン」であり、従って独立系オボ-は「ダンオボー」が現地の表現になります。今回の調査例では、スルデオボーが独立系オボーになります。
②群集型オボー: 一基の大オボーといくつかの小型オボーで構成されているオボーを「群集型オボー」と呼びます。その基数は通常、2、3、4、5、7、9、13、27、33です。2と4以外は奇数の構成となる特徴を有します。しかしながら、2基、4基、27基、33基のオボーはあまり見かけません。
*3基オボーは、仏教用語で「三劫オボー」とも呼びます。それは、前劫アヨシ、今劫釈迦牟尼、未劫ミュルダール三仏のため造営されたオボーです。一方、天・地・人のために建てられたオボーもあります。構造は、真ん中のオボーが両側のオボーより高く、大きくなっています。
*5基オボーについての解釈はさまざまであり、一般的に、「地域天」「父親天」「母親天」「精気天」「生命天」の運命五位天を表現するとされています。構造は中心オボーを囲むタイプや、中心オボーの両側に2基ずつ立てるタイプなどがあります。
*7基オボーは通常子孫の健康を祈願するために建てます。調査例ではホンゴルオボーは幸福を祈る7基群集型です。「あなたの周りに7人の子供がいるように」とよくお年寄りに言われます。構造は中心オボーの両側にそれぞれ3基ずつ小型を立てるるのが一般的ですが、大オボーを中心に三つの方向に2基ずつ小型を並べるタイプもあります。
*9基オボーは方向を示すために建てられたオボーです。9は神聖を象徴する数です。構造はさまざまであり、中心オボーを8基の小型オボーで囲むタイプや、大オボーの後方に8基を一列に並べるタイプもあります。
*13基オボーは群集型オボーの中で一番多い形式です。13は他の民族では「不吉」な数字とみなされがちですが、モンゴル族にとって13は特別に重要な数字です。遙か昔、仏教浸透以前のモンゴル高原においては、シャーマニズム信仰の関係で、13基オボーの造営は13柱の神に祭壇を建てることと同じ意味があると思われていました。しかしながら、チベット仏教の浸透につれて、オボーは釈迦を祭る場所だと教育されてきましたが、モンゴル族はやはりシャーマニズム信仰の解釈を信じていました。調査例ではエルデン・チャガンオボーが13基群集型です。


(↑左)オボ-の分類表 (↓↑右)基壇に置く捧げもの

16:05、わたしは民族衣装を着て、オボーの祭祀をおこないました。お酒、乳製品、牛乳を祭壇に捧げ、幸福を祈りました。お酒と牛乳はオボーを回りながら撒くのが常識です。その後、記念写真を撮り、この日のオボー巡りを終えました。オボーについてハブラーさんはさすがプロだと思いました。


左から筆者 ムンへ・バートルさん、ハブラーさん
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