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いい加減に学ぶ中国語講座(11)

関口欣也博士に贈る詩

 研究所と学会から関口欣也博士(横浜国立大学名誉教授)ご逝去の報せが届いた。博士はかねてより慢性閉塞性肺疾患により自宅療養されていたが、 5 月 24 日に永眠された(享年 87 歳)。あまりの大家であり、個人的にはほとんど接点がなかったが、上海の母校、同済大学に日本人研究者で初めて留学されたのは関口博士であり、わたしはまだプロになっていない大学院生として2番目の留学を果たした。
 関口博士については一度だけLablogで記事を書いたことがある。昨年(2019)春、共通の指導教官であった故陳従周先生(同済大学名誉教授)の生誕百周年文集に一文を寄稿するにあたって、『陳従周詩詞集 山湖処処』(浙江人民出版社)を読み直したところ、関口博士に係る詩を二篇発見した(28頁)。陳先生は文革(1966-)以前にいちど浙江省武義の延福寺を訪れ、大雄宝殿が元代14世紀の再建であると鑑定されたのだが、すでに記憶が曖昧になっておられた。もういちど尋ねたいとの思いが強く、関口博士を同行して再訪された前後の二篇である。陳先生の詩は古典文と現代文がミックスした独特の文体であり、とても難しく感じた。いったん訳したものの全然自信はない。関口博士追悼に因んで再訳を試みる。前回は読み下し文をつけなかったので、まずはそこから再開します。


浙遊雑詩

 1980年、日本の工学博士、横浜国立大学助教授の関口欣也君が同済大学に留学してきた。わたしが指導した。いっしょに浙江省中部に赴き見学・調査した。たまたま感ずるところあり、詩にして記録した。これを友人の横山正、田中淡両君にもみせた。関口さんを連れて陳先生は浙江省武義県の延福寺を訪れた。

1.漢文→読み下し(もどき)

 武義延福寺
軽舟導夢到桃渓  軽舟桃渓に到る夢を導き
延福相迎喜上眉  延福相迎し喜んで眉をあげる  
我未忘情重到此  我未だ此に到る情を忘れず
風雲十裁記依稀  風雲十裁記するに依稀す
(贈関口欣也)     (関口欣也に贈る)


 別延福寺     延福寺を別す     
西来中土寄深思  中土に西来して深思を寄せ
両国文明欲永垂  両国文明永垂(千古)を欲す
難得関君能解意  得難き関君能く意を解す  
帰程回首又遅遅  帰程に回首し又遅遅とす          
(贈関口欣也)     (関口欣也に贈る)

*和訳文は「続き」に配しています。

2.和訳文

 武義延福寺
小舟に乗れば桃渓に行く夢をみる
延福寺は歓迎し喜んで眉をあげるだろう  
私はここを再訪する気持ちをなくしてはいない
千切れた風雲をぼんやり覚えている
(関口欣也に贈る)

 さよなら延福寺     
西方中華の地に足を運んで深い思いを寄せ
日中両国文明の永垂千古(永遠に後世に伝わること)を願う
得難い人材である関口君はその意義をわかっている 
帰途、ゆったりゆったり(小舟から)寺を振りかえる          
(関口欣也に贈る)

 謹んで関口博士のご冥福をお祈り申し上げます。


【関係サイト】陳従周先生生誕百周年
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2020.html

【連載情報】いい加減に学ぶ中国語講座
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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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