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令和二年度公立鳥取環境大学特別研究費に採択!

文化遺産報告書の追跡調査からみた過疎地域の未来像
  
 今年も無事、本学の特別研究(地域連携)に採択されました。大学に感謝します。コロナ禍のなか海外でのフィールドワークではなく、思いっ切り地域貢献と持続可能/不可能性を志向しているのですが、鍵を握るのは「終活」です。

   研究題目: 文化遺産報告書の追跡調査からみた過疎地域の未来像
           -民家・近代化遺産・町並みの持続可能/不可能性をめぐって
   助成経費: 1,000千円

研究の背景
 昭和40~50年代の高度経済成長期の開発と国民生活の変化に伴い、伝統的な民家は著しく数を減らしつつあった。このため文化庁は全国47都道府県で民家の緊急調査を実施する。鳥取県でも昭和47年度に調査が事業化され、翌年度末に報告書『鳥取県の民家-鳥取県民家緊急調査-』(鳥取県教委・白木小三郎編1974)が刊行された。以来45年余が経過し国民の生活スタイルはさらに近代化する一方で、地方の過疎と老齢化が極端に進行し、古民家は増々数を減らしている。こうした時代の流れのなかで、『鳥取県の民家』掲載の古民家は現在どうなっているのか。そうした疑問から昨年度前期、追跡調査に着手し、4年(当時)女子学生が「2019年度麒麟特別研究費」に申請し採択され、卒論としてこの主題に取り組んだ。但し、その卒論は麒麟地域(因幡・但馬)を主対象としたものである。それでも、農村系民家の変容パターン分類を試み、1)指定文化財民家の公開・活用が一部に限られ、2)自治体指定されながら諸々の事情で指定解除となった民家が4件もあり、過疎の嵐が一般民家から指定文化財民家にまで及んでいることを明らかにした点はおおいに評価できる。
 一方、『鳥取県の民家』再訪に刺激された秋田県出身の4年(当時)男子学生は、報告書『秋田県の近代化遺産』(秋田県教委・浅川編1992)掲載遺産58件のうち40件を再訪し、卒論としてまとめた。報告書1992刊行の成果として、重要文化財5件、県指定文化財5件、登録有形文化財10件以上を誕生させたが、同時に撤去や登録解除を余儀なくされた例は20件に及ぶ。この両県の変化に共通する指定・登録解除や家屋の撤去・無住化は、後継者不在/地震・豪雪の被災/財政難/アメニティ(住み心地の良さ)の欠如が原因だと関係者は嘆く。かくして過疎の激化する現状では、新規の指定・登録を控え、指定・登録済み建造物の保全に全力を尽くす以外にない、という発想の転換に迫られている。古民家などの歴史的建造物は、むしろ「終活」の時代を迎えていると考えるべきなのかもしれない。居住者のいない中山間地域や旧市街地で、いかに建造物を終わらせるのかを真剣に考えるべき時代になっている。それは空き家対策や撤去古材のリサイクルに直結している。


研究目的
 本研究は昨年度からの取組みを継承・発展させ、〈1〉『鳥取県の民家』掲載古民家39件をすべて再訪し、ここ45年間の変容と現状を類型的に把握することで、民家という物質文化の変容から鳥取県の近未来を見通すことを第一の目的とする。さらに〈2〉近代化遺産(産業・交通・土木に関わる幕末~戦前の遺産)についても、秋田を再訪して活用と廃絶の状況を把握しつつ、『鳥取県の近代化遺産』(鳥取県教委・浅川編1988)掲載物件と比較する。また、〈3〉研究室の主たるテーマであった「町並み」についても考察をひろげる。過疎の嵐は都市部にも及んでおり、倉吉打吹玉川などの町並み保全地区(重要伝統的建造物群保存地区=重伝建)と重伝建から漏れた周辺地区では、平成初期ころまで風景に大差なかったものの、近年、状況は激変している。申請者は報告書『倉吉の町家と町並み-重伝建地区外側の景観をいかに保全するか』(浅川編2005)以来、倉吉市河原町・鍛冶町の町並みを調査研究しているが、このエリアの空洞化と景観変化を露わにしたい。以上の研究は、おもに日本海側の過疎地域を対象とする。この地域における各種報告書の追跡調査から、「過疎地域の持続的発展の可能/不可能性」を考察したい。キーワードは「終活」と考えている。

学術的な特徴・独創的な点など 
 これまで文化財系の調査と言えば、対象の歴史的価値を明らかにして指定もしくは登録し、将来的な保全を担保することを目的としていた。文化財保護法の制度が歴史的建造物の持続可能性を支えてきたわけだが、昨年の追跡調査で「指定・登録解除」を目の当たりにし、これまで信頼していた制度が揺らいでいることを実感している。それというのも、過疎の深刻さが予想をはるかに超えているからであり、無住化した民家集落において建造物や町並みを保存することの意義を根本から見直す必要があるだろう。むしろ今必要なのは、過疎地の古民家を空き家もしくはその予備群と認識し、それらを「いかに(安寧に)終わらせる」かについて真剣に考察することではないか。まず報告書の追跡調査自体が稀であり、そこから保全ではなく「終活」について検討・提案しようとする研究は全国的にみてもきわめて例外的であり、今後、県内外の行政・学術研究に与える影響は小さくないと自負している。

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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