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中国道蕎麦競べ(2)

0912新見01高梁川01城山01 新見


山間過疎地と蕎麦屋の相性について

 昨日、初校を終えた。昨年来取り組んできた『鳥取県の民家』(1974)再訪、『秋田県の近代化遺産』(1991)再訪の成果をまとめた報告書の初校である。これまでは民家・町並み・近代化遺産に目をむけて、過疎地の近未来を考えてきたが、どれだけ前向きな眼差しでとらえても光明というほどのものは見いだせない。秋田遠征で秋田人の明るさに触れたことが最大の収穫だったのかもしれない。それにしても、地方の人口は減り続けており、居住地は全体として「終活」の方向に動いている。そういう予感しかしなかった。要するに、なにもかも持続不能としか思えなかったのだが、ある日、「蕎麦屋」のことを思い立った。


0912新見02町並み04つし町家01 新見中町 看板建築と度量衡の店(小路の奥に寺と墓地)


 鄙びた山間部に、美味い蕎麦屋があると聞けば訪ねてみたくなる。たとえば県内東部ならば、智頭町福原の「みちくさの駅」は岡山との境の山中にあって、鳥取-奈良往復の際には必ず立ち寄る昼食の場になっている。その味の透明感は山間部の清らかな水と空気がもたらすものだろうと思う。いずれ紹介することになるが、豊岡市竹野町の「床瀬そば」は神鍋高原の山中にぽつんとある有名な蕎麦屋であり、 奈良県宇陀市榛原の「一如庵」に至ってはミシュランガイド2017で一つ星を獲得している。しかも、こうした蕎麦屋は必ず古民家や木造建築を活用している。市街地から遠い「僻地」にありながら、持続可能な状態にあるのはなぜなのか。いちど真剣に調べたほうがいいと思うに至った。出発点は安来の「まつうら」であり、すでにLablogに報じている。それは前奏のようなものであり、今日からが本番である。


0912新見02町並み05平屋町家01 新見中町 平屋の町家


新見の町並み

 城下町と言えば、戦国時代のイメージがある。鹿野、倉吉、若桜、米子などは戦国時代の城下町に端を発し、大阪の陣後の一国一城令(1615)で廃城を強いられ陣屋町・商家町に転じる。それが鳥取城以外の辿る道筋である。新見を訪れて、高梁川支流の向こうに町並みと小高い丘陵を望んだとき、ここもまたそういう中世山城の城下町だったのだろうと思い込んでしまったが、岡山側では事情がちがった。


0912新見02町並み06本町郵便局01 新見中町 郵便局


 慶安3年(1650) 、備中松山藩の藩主水谷勝隆が高梁川から取水して新見から松山城下町までの水路を開削し、高瀬船による水運が始まる。その後、元禄10年(1697) 、徳川幕府により松山藩領が一部の領地を割かれ、 関長治が新見藩の藩主となる。しかし、すでに城を造営できる時代ではなくなっており、「御殿」が築かれた。だから、新見の旧市街地を「御殿町」と呼ぶ。
 9月12日(土)、新見を訪れた。ドローンを飛ばしたかった。空から視れば、丘陵・御殿町・濠川の関係を容易に把握できる。空間構造はあまりにも明瞭であり、濠川と山麓の間に町家が軒を連ねる。山麓・山腹には寺院があり、町並みの向こうに墓地がひろがっている。御殿町の骨格はしっかりしており、歴史的建造物が点在し、看板建築も多いので、昭和の町並みを復原しようと思えばできなくもない。しかし、正直な感想を述べるなら、すでに手遅れの状態になっている。四半世紀前から動いていれば、勝山に劣らぬ岡山県下有数の町並み保全地区になっていたかもしれない。しかし、この町場もまた「終活」の時代を迎えている。


0912新見02町並み07本町交流館01 新見中町情報館(低い屋根の痕跡が当初期か)


 ただ、質の高い町家も姿をとどめている。これを地元では「世間遺産」と呼んで観光の売りにしている。わたしは中町の情報館あたりをぶらついた。情報館は二階の高い大きな建物で、「昭和戦前でしょう?」と訊ねると、管理人さんは「いや、江戸です」と強く否定されたが、周辺には低いつし二階の町家も多く、これだけ高い二階の町家が江戸時代にあったとは考え難い。なまこ壁の土蔵造風の壁もいかにも明治風である。側面の妻壁をみると、低いつし二階屋根の痕跡じみた部分があり、1階の腕木も明治風なので、おそらく当初は明治のつし二階建、それが昭和になって高二階に建て増しされたのだろうと思う。


0912新見02町並み07本町交流館02内部01
↑情報館内部 ↓情報館の腕木
0912新見02町並み07本町交流館04腕木


0912新見03やな木00


手打ち蕎麦とフレンチのやな木 ★★★★☆

 新見で「蕎麦屋」を検索し、圧倒的に最高評価を得ているのがこのお店。電話で事前予約すると、「11月中旬まで予約でいっぱいです」とのお返事に絶望してしまったが、「遠くから行くんで明日・・・」とこぼすと、「明日ですか・・・ちょうどキャンセルが入ったので大丈夫です」と仰いましてね。幸運にも2ヶ月前からの予約が必要な店でフルコースをいただけることとなりました。場所は町外れです。新見御殿町からみれば4kmばかり南郊。昭和の木造住宅に小ぶりのレストランを新設したのかな。
 蕎麦屋ではありません。フレンチ・レストランで、締めの一品を手打ち蕎麦にしています。大変美味しく、量も十分。新見を訪れた甲斐がありました。

岡山県新見市新見720-1
フルコース 4500円/人
4.2 ★★★★☆

0912新見03やな木01料理01
スモークサーモンのマリネにシャインマスカットのサラダ 
クリームチーズソース

0912新見03やな木01料理02サングリア01
ノンアルコール・スパイシー・サングリア
(コースとは別注文)

0912新見03やな木01料理03
国産豚ヒレのロースト ビーツのピュレを添えて

0912新見03やな木01料理04ワイド01
↑↓秋刀魚のテリーヌ グリーンオリーブとトマトのドレッシング
0912新見03やな木01料理05さんまテリーヌ01


0912新見03やな木01料理06安納芋ポタージュ
安納芋のポタージュ ライ麦の自家製パンのカナッペ
フムスとマンゴーを添えて

0912新見03やな木01料理07なす01
鯛のポワレ エシャロットと人参の赤ワインソース
米茄子にスパイスピュレ

0912新見03やな木01料理08千屋牛
千屋牛のロースト 青林檎とバルサミコのソース 
香草とパルメジャーノのディップ

0912新見03やな木01料理09蕎麦
茄子せいろ(盛り、おろし、かけ、茄子せいろ から1品選ぶ)

0912新見03やな木01料理10マリアージュとデザート01 0912新見03やな木01料理10マリアージュとデザート02アップ
ピオーネのマリネのパルフェ 本日のティー(マリアージュ)
 
以上、*9月のメニュー


《連載情報》中国道蕎麦競べ
(1)安来「まつうら」
http://asalab.blog11.fc2.com/blog-entry-3057.html
(2)新見「やな木」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2275.html
(3)勝山「一心庵」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2276.html
(4)津山城東とうふ茶屋
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2277.html
(5)美作滝尾駅-木楽
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2278.html
(6)床瀬そば
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2279.html
(7)高中そば-名草神社三重塔
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2280.html
(8)EN-ナマステ
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2281.html
(9)談山神社-橘-きみなみ
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2282.html
(10)宇陀「一如庵」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2283.html
(11)再訪-ひむろ蕎麦
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2308.html
(12)そば切りたかや インタビュー
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2302.html
(13)走馬観花-平福宿の「瓜生原」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2304.html
(14)「みちくさの駅」ゼミナール
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2305.html
(15)再訪-床瀬そば
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2322.html
(16)そば処「伊とう」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2328.html
(17)そばの店「右衛門五郎」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2329.html
(18)蕎麦と旬のお料理「ろあん松田」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2333.html
(19)摩尼寺門前 門脇茶屋
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2335.html
(20)八郷の里の猫
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2366.html

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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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