fc2ブログ

フードスケープ論講義

1110 民博 外観 佐藤 1110 民博 展示品02 佐藤


コロナ禍の民博へ

 11月10日(火)、卒論ゼミの拡大バージョンとして、大阪府吹田市の万博記念公園にある国立民族学博物館(民博)を訪問しました。周知のように、民博は人間文化研究機構を構成する大学共同利用機関であり、民族学・文化人類学を中心とした研究・展示に取り組む総合型の国立博物館です。
 このたび民博を訪れた理由は、近年、フードスケープ(食の景観)研究の動向に係わる論文(「フードスケープ―『食の景観』をめぐる動向研究―」『国立民族学博物館研究報告』45巻1号:pp.83-114、2020)を発表された河合洋尚准教授の講義を拝聴するためです。それというのも、私はいま「蕎麦と蕎麦屋の風景論 ―山中の蕎麦屋はなぜ繁盛しているのか―」(仮題)という卒業研究に取り組んでおり、河合先生の論文を読むことを薦められ、強く影響を受けているからです。民博に到着すると、河合先生自らお出迎えいただき、厳重なコロナ対策を遵守しながら、2階の大きな会議室で1時間半ばかり「フードスケープの現状と展望」と題する講義を聴かせていただきました。


1110 民博 講演会01 佐藤


食をめぐるまなざし

 フードスケープという研究概念は、英語圏では21世紀以降、複数の分野に浸透しつつありますが、日本ではほとんど知られていません。ですから、フードスケープを題材にした講義は、河合先生自身、今回が「日本初」であろうとおっしゃっいました。フードスケープとは、文字通り、foodとscapeを掛け合わせた造語であり、直訳すると「食をめぐるまなざし」となり、人間が食をどのように見て、どのように意味づけているのかを問う学問分野です。
 河合先生は中華街やブルガリア・ヨーグルトなどを例にとって説明されました。たとえば、日本人にとっての中華料理のイメージはラーメンや餃子や龍など一連の要素に象徴化されており、それらを独断で組み合わせてつぎはぎし、商品にして売り出しています。さらにそのイメージを強調するかのように、中国提灯など中華風の建築・意匠・小物を内装や外観・町並みに取り込んでいます。このようにしてイメージを強化された中国的文化要素が「食」を中心に広がっていく空間的状況をフードスケープ(食の景観)とみなされています。言い換えるならば、中華街は、中国そのものを反映しているわけではなく、日本人によって中国のイメージを付与された別な景観だということです。つまり、食の景観とは、「イメージ(人間の想像力・加工)+物理的環境(非人間・物質・音・匂い)」と定義づけられるのです。


1110 民博 講演会02 佐藤 


1110 民博 展示品 佐藤 1110 民博 展示品03 佐藤


 「食の景観」に係わる調査方法もお話ししていただきました。まずは特定の場所(地域)と結びついてイメージされがちな食を選ぶ。次に、その食の基本的な情報を調べ、
  ①どのようにイメージが作られたのか? 
  ②どのように料理に反映されるのか? 
  ③どのように周囲の物理環境に関わっていくのか?
 この三つのプロセスを具体的に見ていくことで、「食の景観」がいかに創造されていくのかを明らかにできると知り、おおいに参考にして、山中に持続する蕎麦のイメージを探っていきたいと思いました。

 最後に、民博の展示を見て回り、地域展示ではオセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、日本を含むアジア各地域に分かれ、オセアニアから東回りに世界を一周するようになっていました。通文化展示は地域、民族毎に分けての展示ではなく、音楽と言語など世界の民族文化を通じて概観する展示がありました。食住などの生活用具を中心とした一万点以上の展示資料は圧巻であり、とても良い経験になりました。コロナが激増する直前の訪問であり、大阪は鳥取とは桁違いに管理の厳しい状態であり、河合先生をはじめ多くの関係者にご面倒をおかけしました。皆様に深謝申し上げます。(ころっけ)


1110 民博 集合写真 佐藤


ゴールデンカムイの展示

 河合先生は社会人類学を専門として研究されており、現在はフードスケープ(食の景観)をめぐる人類学的研究を始められたところです。フードスケープとは、フード(食)+スケープ(まなざし)という意味の学術用語であり、人がどのように食を見るのか、どのように意味づけるのかを探究する分野です。たとえば、日本人は寿司といえば日本、ヨーグルトといえばブルガリア、という風に食べ物と空間(国や地域)のイメージを結び付けて考えています。そして、このイメージが物理的環境にも変化を与えています。中華街はその典型の一つです。中華街は日本人の中国に対する食文化のイメージから形成されたもので、中国に行ってもあのような町並みはどこにもないそうです。このように食に対して私たちの持っているイメージから形成された町並みや環境のことをフードスケープというわけです。フードスケープについては、海外では近年多くの論文が発表されているようになってきていますが、日本ではまだあまり研究されていません。今回私たちはとても貴重なお話を聞かせていただくことが出来ました。
 講義後、1時間半ばかり館内展示を見学させていただきました。1時間半ではとても見切れないほどたくさんの展示があり、とても興味深かったです。現在は特別展の一部として漫画「ゴールデンカムイ」に関連する展示も含むので、「ゴールデンカムイ」ファンの方にもおすすめです。(遊民)


民博2


コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

魯班13世

Author:魯班13世
--
魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カレンダー
03 | 2024/04 | 05
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR