中国道蕎麦競べ(14)


「みちくさの駅」ゼミナール
11月18日(水)、平福の視察を終えた私たちは、打って返しで智頭をめざし、福原のそばカフェ「みちくさの駅」を訪問しました。みちくさの駅は国道からも鳥取自動車道(上り線)からも立ち寄れる木造の休憩所ですが、「道の駅」ではありません。地元有志が立ち上げた地産販売と食事・休憩処です。まず、ざるそば(もり)とそばがきを振る舞っていただきました。もりは喉越しが良く、清涼感溢れる味わいで、とても美味しかったです。次に、そばがき。そばがきを初めて食べましたが、食感はお餅のようであり、蕎麦の香りや味をしっかり感じることができました。教授ご指摘のとおり、そばつゆよりも生醤油をつけたほうがやや美味しいと思いました。安土桃山期に「蕎麦切り」が出現する以前の蕎麦料理を味わうことができてよかったです。


蕎麦の試食後、みちくさの駅はゼミ会場に早変わり。店長のスピーチを聞きながら、質疑を進めていきます。店長は以前京都に住んでおり、12年ばかり前にUターンで故郷の智頭町に戻ってこられたのですが、そのとき休耕地の多さに驚かれ、有志を募り、蕎麦やエゴマなどの栽培に着手されます。しかし、それらを販売する手段がなく、生産品が余ってしまう事態に陥りました。そこで自らお店を開こうと決断され、福原のパーキングに近い田地を埋め立て、みちくさの駅を建設されました。お客のターゲットを都市居住者に設定し、手作り、地元産、添加物の入っていない安全食品をアピールされています。関西で30年ばかり暮らした経験から、都会人が田舎に何を期待しているのか分かっているので、期待に反しない品物を販売・提供することを心掛けているとのことです。また、蕎麦づくりには「水」が重要であることも強調されました。

↑もり ↓そばがき


洋風の「そばカフェ」をめざして
驚いたことに、店長は関西で建設関係の仕事をされていたことから、一級建築士の資格をもっており、自らみちくさの駅の設計に携われました(2016年竣工)。新建材を使わず、木材をできるだけ自然のまま使うことにこだわりをもっておられます。材料は智頭杉を主とし、小屋組の大梁には松を用いて黒い古色塗りがなされています。また、建具・家具類は設計にとどまらず、自ら製作されたというので、さらに驚きました。「民芸調」に対してはやや反発されており、「そういうコテコテではなく、自然の素材を活かしながら、むしろ〈洋風〉をめざしたところがある」とのことです。たしかに、薪ストーブ周辺のデザインなどにそういう指向を読み取れます。また、本館は「蕎麦屋」ではなく、蕎麦を食べている隣で(地産の)紅茶を飲んでいてもおかしくない「そばカフェ(兼土産物屋)」をめざしたそうです。

器については、店長お気に入りの砥部焼を愛媛県から取り寄せています。BGMはジャズ。これは店主の好みではなく、同志たちの推薦によるものだそうです。無音にして川のせせらぎや鳥のさえずりを引き込むという意見にも頷かれましたが、なにぶん鳥取道(高速)が近いので、車の騒音を遮るためには音楽が必要だとも思いました(教授はディランやウディ・ガスリーのような50~70年代の古いフォークがむしろ合うのではないか、と提案されました)。このほかコロナの影響をお聞きしたところ、冬季は毎年1月から店を閉めており、4月に10日ほど再開したが、コロナでまた閉め、6月に規制の緩和からお店を再開。テーブルを片側坐りにするなどの感染対策をしたそうです。再開後の売り上げは上々で、昨年を上回っているとのこと。コロナで都市部の外食を避けた人たちが人里離れた地にまわってきた可能性もあるかもしれないと仰いました。
最後に、智頭町の山間地域にありながら、4年間持続させているコツをお聞きしました。すると、「そこに行かないとないものや食べられないもの、そこに行かないと体験できない環境(風景や川のせせらぎ、店のインテリアや外観)が大切であり、お客さんがない日があっても我慢しながら続けていくことが重要だ」という貴重なコメントをいただきました。
今回のみちくさの駅は蕎麦屋ではなく、そばカフェであり、洋風に近い和風の雰囲気が店内外から滲みでています。蕎麦にも紅茶にも合う、シンプルなデザインの木造のインテリアが多用されており、そばカフェとしての食の景観を学ぶことができてよかったです。今回の内容も卒業論文におおいに反映していきたいと思います。店長を始め、調査にご協力いただいた皆様に深謝申し上げます。(ころっけ)

生まれて初めて
みちくさの駅では、インタビューの前に、ざるそばとそばがきをいただきました。私は「初めて蕎麦というものを食べたのではないか」と思ったくらいにおいしい蕎麦でした。蕎麦のコシもしっかりしており、清涼感が溢れています。ざるそばの後に出てきた「そばがき」は、本当に生まれて初めていただきました。初めて感じた食感と味でした。おいしかったです。
ゼミナールでは店主の藤原さんにお話をうかがいました。藤原さんは、京田辺から12年前に智頭にUターンし、10年前に休耕田の活用のために地元の方々とともに、蕎麦と荏胡麻(エゴマ)の栽培を始めたのですが、作るだけでなく、出来上がった蕎麦と荏胡麻をどう処理するか考え続け、最終的に蕎麦を売ろうと決断したことで「そばカフェ みちくさの駅」が誕生したとのことです。そして、2016年8月に開業します。蕎麦は手作りで、蕎麦打ちや蕎麦の製法はYouTubeを利用して独学されたといいますが、それであの味になるとすれば、と驚嘆するしかありません。
蕎麦を売りにしていますが、蕎麦を啜っている隣で、紅茶を飲んでいてもおかしくない雰囲気を持たせるようにしているそうです。だから、店名も蕎麦屋ではなく、そばカフェにしていると仰っていました。藤原さんは、一級建築士の資格をお持ちで、京都時代は建築の現場監督をしていたこともあり、自ら店舗の設計に取り組まれました。店内の家具・建具の設計~製作まで、自らおこなったというから本当に驚きです。店内のBGMは、天井に木製のコンボが設置しており、ジャズが流れていました。インテリアは民芸調に流れずできるだけシンプルかつ「洋風」にしており、民芸品や展示物も比較的少なく、先週訪問した「そば切り たかや」とは立地環境以外にもかなり変わった雰囲気がありました。(天破活殺)
《関係サイト》
みちくさの駅
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1581.html
ダーナの論理
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2196.html


《連載情報》中国道蕎麦競べ
(1)安来「まつうら」
http://asalab.blog11.fc2.com/blog-entry-3057.html
(2)新見「やな木」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2275.html
(3)勝山「一心庵」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2276.html
(4)津山城東とうふ茶屋
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2277.html
(5)美作滝尾駅-木楽
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2278.html
(6)床瀬そば
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2279.html
(7)高中そば-名草神社三重塔
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2280.html
(8)EN-ナマステ
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2281.html
(9)談山神社-橘-きみなみ
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2282.html
(10)宇陀「一如庵」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2283.html
(11)再訪-ひむろ蕎麦
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2308.html
(12)そば切りたかや インタビュー
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2302.html
(13)走馬観花-平福宿の「瓜生原」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2304.html
(14)「みちくさの駅」ゼミナール
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2305.html
(15)再訪-床瀬そば
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2322.html
(16)そば処「伊とう」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2328.html
(17)そばの店「右衛門五郎」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2329.html
(18)蕎麦と旬のお料理「ろあん松田」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2333.html
(19)摩尼寺門前 門脇茶屋
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2335.html
(20)八郷の里の猫
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