中国道蕎麦競べ(17)-右衛門五郎

12月18日(続)。昼食の後、チェックインまで少々時間があったので、JR竹田駅周辺を散歩した。コンビニやスーパーの割箸が我が家で圧倒的多数を占めるようになっており、海砂利水魚という名の土産物店(町家活用)で夫婦箸を買ったりしてぶらぶらした。午後3時ころ、ホテルenの別館sakuraにチェックインした。このホテルについては、次回まとめて記す。
夕食も蕎麦屋を予約していた。7年前に開業した「右衛門五郎」という割烹居酒屋風の蕎麦屋であり、ホテルからやや離れた円山川対岸の山麓にあるということで、料亭のマイクロバスで送迎してくれるという。飲食を制限されている今から思えば、古き良き時代の送迎スタイルであり、頬が緩む。


そばの店「右衛門五郎」
兵庫県朝来市山東町迫間字右衛門五郎825-1
新型木造建築(別荘風) 民芸本格系 椅子座+小上げ+個室
創業:2013年 営業11:00~15:00 18:00~23:00(月曜定休) ★3.8
右衛門五郎という店名は、なにやら由緒がありそうな匂いをふりまいているが、上にみるとおり、地名をそのまま取ったものである。戦国時代には武家屋敷があったのかもしれない。山腹の傾斜地に建つ店舗は7年前の創業時の新築であり、夕暮れの闇に隠れて全貌を把握しえなかったが、山荘または別荘の趣がある。内部は「伊とう」以上に木造の小屋組を強調しており、あたかも民家の梁組をおもわせるが、すべて新材の古色塗りである。新材とはいえ、新設の蕎麦屋にかくも古式の梁材等を使いたがるところをみると、古民家「終活」にともなう解体部材の転用/売却に一筋の光明を見出せるような気持ちにもなった。


料亭の規模を有する割烹居酒屋兼そば屋であり、座席は椅子座、イロリ椅子坐、小あげ座、個室に分かれている。師走18日の夜、通常ならば忘年会等で満席でもおかしくない時期だが、個室に1~2組の予約客がいて奥のほうから声は聞こえたけれども、フロアに客はいなかった。わたしたちの貸し切りであり、イロリ椅子坐でセットをいただいた。夕食のセットは3,300円からだが、予約が必要。わたしももちろん予約をいれた。多少高くなってもかまわないから、煮魚をいれてほしい、と注文したところ、釜炊きご飯とともに、香住産のカレイの煮つけが出て、そのあとに定番のヤマメの塩焼きまで卓に並び、腹が膨らんだ。





コースは、まず刺身の盛り合わせを中心とする前菜から始まる(↑)。刺身のなかでは、左端にみえるバイガイにこりこりとしたたまらぬ食感があり、思わず唸ってしまった。こりこり感といえば、手前の付きだしの左側に於かれたヤマメの卵はバイガイ以上であり、これも経験したことのない珍味である。外観はイクラと似ているが、ヤマメ卵のほうが小粒であり、ぬるりとした感触はなく、さっぱりこりこりしている。酒のアテに極上の品であろう。ちなみに、酒は蕎麦焼酎の湯割りから始め、朝来梁瀬の地酒「竹泉」に変えた(地酒に関しては「弁天娘」を凌ぐものに出会わない)。

このあと釜飯の煮炊きに入る。てっきり混ぜ飯だと思っていたが、新米だそうで、つまりカレイの煮つけとヤマメの塩焼きを純白の新米で食べなさい、ということである。たしかに美味しいごはんだったが、あとで蕎麦がでてくるわけだから、ここは酒だけでよかったような気もする。魚が終わり、天ぷらがでてきた。岩津ネギとバイガイの天婦羅(↓)。またしてもバイガイにやられた。岩津ネギとの相性も抜群である。

最後はもちろん、ざるの大盛。これだけは、どれだけ腹一杯でもぺろりといけます。こちらも大変清涼感のある味がした。そして、蕎麦湯、珈琲でセット終了。大満足の夕食になった。昼の店もそうだが、だれが来ても美味しいと感じる大衆的な美食の味がして、つまり肩ひじはったところがなく、非常に好感をもった。下手に創作系に流れることなく、大衆料理の王道としてのレベルの高さを感じさせてくれるところに昼夜両店の共通点がある。それこそが実力なんだ。

ちなみに、BGMはアコギのソロから始まって、途中ユーミンに変わり、またアコギに戻って、竹内まりやも流してくれた。よい選曲だと思う。とくに、アコギソロは蕎麦にあうし、個人の趣味としても至高のチョイスであった。
メニュー(↓)をみると、ほかにもいろんな料理があり、季節限定の蕎麦もあるので、もういちど訪ねようと思っている。おそらく、これからも但馬を訪ねるだろうから、機会は何度でもあるだろう。









《連載情報》中国道蕎麦競べ
(1)安来「まつうら」
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(2)新見「やな木」
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(3)勝山「一心庵」
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(4)津山城東とうふ茶屋
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(5)美作滝尾駅-木楽
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(6)床瀬そば
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(7)高中そば-名草神社三重塔
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(8)EN-ナマステ
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(9)談山神社-橘-きみなみ
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(10)宇陀「一如庵」
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(11)再訪-ひむろ蕎麦
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(12)そば切りたかや インタビュー
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(13)走馬観花-平福宿の「瓜生原」
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(14)「みちくさの駅」ゼミナール
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(15)再訪-床瀬そば
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(16)そば処「伊とう」
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(17)そばの店「右衛門五郎」
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(18)蕎麦と旬のお料理「ろあん松田」
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(19)摩尼寺門前 門脇茶屋
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(20)八郷の里の猫
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