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日本のなかのブータン(3)

やぶつき02リモート


 1月26日(火)、先日のリモート面談で、ティンプーの佛子園所長、中島事務所長からご紹介いただいた広島県安芸太田月ヶ瀬温泉施設長とのwebex面談が実現した。
 加藤さんは、これまで公益社団法人青年海外協力協会(JOCA)の職員として人材育成や学校でのワークショップなどの教育活動に携わってこられた方で、安芸太田町には昨年の6月に着任したばかりとのこと。前回同様、私の卒論と関わる部分に焦点を当て、成果を報告する。

月ヶ瀬温泉-佛子園が輸入するブータン蕎麦実の活用

 佛子園は長年「ごちゃまぜ」のまちづくりに取り組んでおり、その活動を通してブータンとのつながりを持っていた。そしてJICA(独立行政法人国際協力機構))北陸と協力して、ブータンへの技術協力プロジェクトを実施した。その際に、日本から一方通行で提供し続けるのではなく、ブータンからも何か提供してもらうことでお互いの関係性を向上させていこうということになった。そこで、ブータンの高山地域で栽培されており、日本の食文化にも馴染み深い蕎麦に注目が集まった。
 蕎麦の実をブータンから輸入することによって、蕎麦を栽培する農村の収入は以前の2倍かそれ以上になったという話もあり、収入の向上によって医療処置を受けられる人も増え、ブータン人の健康の向上にもつながっていると仰った。

お食事処「やぶ月」のブータン蕎麦

 月ケ瀬温泉には「やぶ月」というお食事処が併設されており、そこでブータン蕎麦実を製粉・製麺したそば料理を提供している。 蕎麦のメニューにはすべてブータンから輸入した蕎麦が使用されている。ブータン蕎麦を目当てにして来客するのではなく、食べてから初めてブータン産の蕎麦が使われていることを知るお客さんの方が圧倒的に多いとのこと。また、ブータン甘蕎の質が日本のものと遜色なく、味覚に驚くお客さんもいると教えていただいた。
 月ケ瀬温泉の運営は、佛子園の手法をモデルにしており、店名の「やぶ」とは佛子園のブランドのようなものである。そのため、いくつかのメニューは佛子園のレシピを覚えて提供されているのだが、まったく同じというわけではなく、地域独特の食材を使用した料理や季節のメニューなどの月ケ瀬温泉独自のメニューも提供されている。
 やぶ月で提供される蕎麦は、すべて製粉製麺機を使用して作られている。その理由には、月ケ瀬温泉がモデルとする佛子園の「ごちゃまぜ」の概念が関係している。ごちゃまぜのまちづくりとは、障がいのある人もない人も、日本人も外国人も皆が活躍できるまちをなんでもかんでもやっていこうという考え方である。製粉製麺の過程は敢えて手作りにしていない。その工程を機械でおこなうことによって、障がい者も蕎麦づくりに参加できる。つまり、誰でも蕎麦を作れるように機械による製粉製麺がおこなわれており、障がい者の就労事業に蕎麦は役立てられているのである。


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ごちゃまぜのまちづくり-蕎麦と温泉と

 温泉と蕎麦は、ごちゃまぜのまちづくりを進めていく上で重要な役割を果たしている。
 月ケ瀬温泉では、障がい者もそうでない人も、地域の人も観光客も、その場所を楽しみに来てくれて、そこでくつろげるような場所サードプレイス(第3の場所、を目指している。社会福祉施設と聞くと、一般的には障がい者の方がいる場所という印象を受ける。しかし、温泉や美味しい蕎麦がある場所と聞くと、蕎麦を食べたいという楽しみや温泉に入って安らぎが欲しいという欲求を満たすために一般の方も集まりやすい。そういった場所づくりをすすめていくことで、地域住民と障がい者の交流の場にもなるという発想を基点にされている。
 月ケ瀬温泉がモデルとしている佛子園では、誰もがくつろげる空間づくりに長年取り組んできたためノウハウが豊富である。このような空間づくりをすることによって、認知症の症状の緩和や身体障碍の改善につながったという事例だけでなく、町内会への参加者の増加、若者のUターンの増加などの効果があったと紹介していただいた。高齢者の割合が5割を超える安芸太田町でも、これをモデルに新たな人と人とのつながりをつくり、人口流出や若者の移住を増やして安芸太田町の人が元気になればと加藤さんは仰った。
 月ケ瀬温泉のある加計地区では、これまで蕎麦屋がなかったらしく、昨年8月のオープン当初はさまざまなメディアに取り上げられ、多くの来客で賑わった。その後、10月から11月の紅葉のシーズンでは、GoToの刺激もあり、広島市内や他県からの旅客が休日に観光客が多く訪れたという。安芸太田町には風光明媚な名勝地が多く、名勝観光の旅行者が蕎麦屋があると聞いて店は繁盛したそうである。また、冬になってからはスキー場帰りの地元の方が温泉と蕎麦屋をよく利用されているという。

 お話を聞いて、ブータンの蕎麦が日本で障がい者の就労支援や、地方創生に活用されていることに驚いた。可能であれば、実際に訪れてみたい。また、宮城県岩沼市や鳥取県南部町など、今後も各地にブータンの蕎麦を活用する施設が構想がされている。地方創生を通じて、ブータンとの交流が活発になっていくことに期待したい。

 最後に、お忙しい中面談を引き受けていただいた施設長の加藤さんにお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
(月市)


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《連載情報》日本のなかのブータン
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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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