追悼 チック・コリア
ジャズ・ピアノの巨匠、チック・コリアが9日に亡くなった。享年79歳。
チック・コリアとキース・ジャレット(75)はビル・エヴァンス後の二大ジャズ・ピアニストと評価される偉大なミュージシャンである。ここに書いた3名のピアニストは、いずれもマイルスのコンボにいた経歴が共通している。チックが他の2名のピアニストとイメージを異にするのは、当時のマイルスの動きと同調していたのではあろうが、最初期からエレクトリックを指向していたことである。スタンリー・クラーク(b)やアル・ディメオラ(g)などの若手の有望株を擁した「リターン・トゥ・フォーエヴァー」がエレクトリック・バンドのはしりであったが、従来のジャズ愛好家からはむしろ敬遠される傾向にあった、間違いなく。平岡正明が「(韓国じゃなく)プエルトリコ出身なのに、コリアって何だ」と息巻いていたのを記憶している。
しかし、多くのジャズ・ミュージシャンにとって、電化は自ら好んだものではなく、セールス上強制されたものであったことが今はだいたい分かっている。チック・コリアも、エレクトリック・バンドをときおり復活させてはいたけれども、やはり根本はアコースティックを愛好していた。上下の動画をみていただければ、それは明らかであろう。
わたしにとって、チック・コリアはビル・エヴァンスほどのフェイヴァリットではなかったが、自分がジャズを聴き始めたころの若手の代表的ミュージシャンであり、懐かしさと切なさを感じてしまう。時は流れる。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。