もうひとつのリキ・チャンネル
八百長と fixed game の違い
長州力のチャーシュー・リキが貴闘力部屋のチャンコに入ることになった、なんて冗談言ってる場合じゃないですよ。半年ばかり前から始まったユーチューブ・チャンネル「貴闘力部屋-大相撲再生計画」がネットを席巻しております。大相撲の八百長と利権を告発・暴露し続けているのですが、相撲協会はいまのところ静観の構えを崩しておらず、TVや新聞・雑誌等のメディアも(相撲協会を怖れて)これを取り上げていません。
八百長ならプロレスだって同じだろ、という意見もあるかもしれませんが、ちょっと違う。プロレスの場合、英語の fixed game という表現がよりふさわしく、業界用語ではアングル(筋書き)とかブック(勝敗の結果)が決められているスポーツ風エンタメであり、ガチンコを売りにしたUWFやリングスも同様の fixed game だということが今はよく知られています。この問題については、もう30年以上前になるでしょうか、ミスター高橋や佐山聡が著書で露わにしたとおりです。しかしながら、カール・ゴッチが説いているように、「プロレスの勝者は試合に勝った者ではなく、会場をいちばん盛り上げた者」なんですね。会場を盛り上げて、客を集めるレスラーが偉い。いくら負けても、ブッチャーやシンは偉大だったのです。村松友視流にいうと、プロレスはジャズに似ている。テーマは決まっているが、各ミュージシャンに与えられる即興演奏の部分でどれだけ盛り上げれるか、だれがいちばん受けるか、そこが問題なわけです。
大相撲の場合はそうではない。勝ち星を売り買いするという行為が日常的におこなわれている。これについては、やはり20~30年前、板井という関取が内幕を告発し、タカジンの委員会などでその闇の部分を吐露したのですが、しばらくして身の危険から雲隠れを余儀なくされ、数年後、再び委員会に登場したときは、似ても似つかぬ風貌に変わっていた。つまり、整形していたことが明らかになりました。ですから、今回の貴闘力のユーチューブ告発でも、関係者の生命が狙われているのではないか、と危惧する向きが少なくありません。しかし、ネット盛況の今日、かりに貴闘力の暗殺されたとしても、すでに数十本アップされたネット・チャンネルが消滅するわけでもなく、相撲協会はかつてない苦境に立たされていると言えるでしょう。
ともかく、貴闘力部屋を視聴すれば、これまで理解に苦しんでいた野球賭博問題、貴の岩問題、モンゴル力士問題、床山の不審死、現理事長・理事会の利権問題などがすべて連鎖することを理解できます。点が線になり、線が面になる。そして、そのフィクサーは尾車親方(元琴風)であることが何度も強調されている。現理事長の八角親方(元北勝海)は尾車の尽力で理事になった恩がある。だから何も言えない。尾車ほどの悪ではないらしい・・・
タケシの「座頭市」(2005)を思い出します。無垢で貧乏なうどん屋の爺がくちなわ一味の親分だった。NHKの相撲解説でひょうひょうとおとぼけしている善人面の尾車がフィクサーだと気付く人はいないでしょうね。人柄がいい、とか、穏やかだとかいう評価はいかに怪しいものか、身の回りを観察しなおしてみなければなりません。