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開学20周年記念 同窓会報 挨拶文

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不思議な夏の随想

 8月上旬、浮かぬ顔で本学の玄関をくぐり、仮停めしていた車に乗り込もうとすると、ある人物が駆け寄ってきた。本学同窓会長のKさんである。今年の同窓会報の挨拶文を書いてほしい、とのことで、正直逡巡した。約一月半におよぶ病気休業の直前であり、心身とも不調に陥っていたからである。しかしまぁ、700字程度ということで、得意の短文ではあるから、当然のことながらお受けすることにした。
 〆切は8月16日。盂蘭盆会を迎えても体調は回復しておらず、とりわけ労働意欲の減退に苦しんでいた。ある夜決心し、下書きしてみたものの、家内に読んできかせると、「暗い」の一言。一両日の間に書き直して、もう一度家内に読んできかせると、「まぁいいでしょう」とのお許しを得た。それがこの挨拶文である。「不思議(不気味)な夏」を主題としている。

 10月下旬、同窓会報が届きページを開くと、この号(vol.17)は開学20周年記念号に値するものであることが分かった(20周年事業の話題をふんだんに盛り込んでいる)。私もまた、この大学で20年働いたということだ。開学当初から勤務する教員は、すでに数名にまで減っている。同窓会長に挨拶されたとき、心労の最中でもあり、いくぶん冗談混じりに「老教師は虐待されている」とこぼして驚き笑われた。そんな私に開学20周年記念の同窓会報の挨拶文がまわってきたことを少々愉快に感じている。
 とにもかくにも、ご笑覧いただければ幸いです。以下、文献情報。

  浅川(2021)「人類が現代史で経験したことのない災禍を超えて」
    『鳥取環境大学同窓会報 Re;TUES NEWS』 vol.17:p.2、鳥取環境大学同窓会、
    2021年10月 

img014同窓会報01sam img015同窓会報02sam クリックすると画像が拡大します



人類が現代史で経験したことのない災禍を超えて

 不思議な夏休みを過ごしています。お盆だというのに、これまで経験したことがないほどの豪雨が全国的に降り已まず、墓参りに行く気にもならない。ここ数年、いったい何度「経験したことがない」レベルの大雨に見舞われてきたでしょうか。いわゆる環境問題がその背景にあるのか否か知りませんが、私は熱い夏が好きです。気温が40℃を超えるバンコク、シェムレアップ、ルアンプラバンのような夏。炎天下、屋台にしけ込んで冷えたシンハでも飲み干さない限り、ミイラになってしまう。少し休んで外に出れば、またたくまに酒精は蒸発してしまいます。鳥取の夏も東南アジアに劣らぬほど猛暑の日が増えてきましたが、その一方で、線状降水帯によるゲリラ豪雨が反復的に発生し、梅雨まがいの温湿度に逆戻りするのが残念です。熱射の山陰海岸ほど夏らしい風景はありませんから。
 3年前の8月末、ブータンからバンコク経由で帰国し、1週間後には雲南・チベットに飛び立つ予定にしていたのですが、台風21号によって関空が水没し、大幅なスケジュール変更を強いられました。それでもまだ海外渡航できたことを今は幸運だと思います。昨年から、人類は現代史において経験したことのない災禍に苦しめられています。外国出張など論外であり、調査研究は滞ったまま未来予想図を描けません。新型コロナウィルスのパンデミックはこの7月より第5波に至り、過去最多の感染者・重症者数を日々更新しています。そんな状況下でオリンピックは開催されましたが、メダルラッシュに興じて良いのか悪いのか、なんとも奇妙な空気が列島を覆っていました。不気味な夏が続いています。
 同窓生のみなさん、どうか健康でお過ごし下さい。天変地異や惨禍に挫けず、前例のない渋難の隙間から射し込む光明を見い出して欲しい。それがコロナ禍後の新しい人生のどこかで実を結ぶことを祈っています。

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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