四度目の大杉(1)ー学生レポート


今年の人間環境実習・演習A(2年次オムニバス)は、以下のような2コマのカリキュラムを組みました。
10月19日(第4授業)
「カールさんとティーナさんの古民家村暮し(冬春篇2021)」鑑賞
10月26日(第5授業)
養父市の重伝建「大杉」の訪問
第5授業の準備は9月から始めましたが、当時の感染状況からみれば実現するとは到底思えませんでした。9月下旬からの急速な感染源により実現したことに驚きを禁じえなかったですね。それでも、密を避けるため、バスは定員の半数以下の乗車になるので、中型バス2台、小型バス1台の計3台をチャーターして高くつきましたよ。車3台なので、1台に一人の点呼者が必要なので、ゼミから滅私くんと飛来くんに参加してもらいました。感想レポートは上出来でした。建築に興味がある学生は少ないけれども、「過疎社会の問題」となると話が変わってくるからえ。今回は、優秀作を2~3作掲載します。

田舎暮らし、古民家暮らしに魅力を感じている自分
養父市大屋町の大杉地区は重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。三階建養蚕農家の近代の集落である。養父市には495戸の三階建養蚕住宅がある。三階建養蚕住宅は全国的にみても数少ない建物だ。大杉地区は、二階建と三階建の養蚕住宅が混在した集落景観をなしており、養蚕業の最盛期の状態を保っている。二階建てや三階建ての住宅には、切妻造瓦葺屋根に抜気(ばっき)と呼ぶ大型の越屋根(換気装置)があり、外壁は柱が見えない大壁づくりとして、長方形の掃き出し窓が採用されている。現在では空き家となった建物が多いが、一部は宿泊施設などに活用されている。


大杉に暮らす建築家、河辺さんのお話の中で最も印象に残っているのは、「コロナ禍だからこそ都会と田舎での暮らし方の違いがさほど出ないことから、大杉の住宅を活かしてほしい」ということだ。私にはコロナが流行し始めてから、生活に関してデメリットしかないと思っていた。リモート授業になって、自由に外出が出来なくなって、帰省することも困難になった。しかし、デメリットばかりだと思っていたのは、私自身が田舎に住んでいたために感じたことなのだと分かった。都会に住む人は、人が多い暮らしから離れたいと考えている人も少なくはない。実際に都会に移住した知人に話を聞くと、コロナ流行後には外出が少なくなり、田舎に住んでいたころと生活はあまり変わらないため、田舎に帰って仕事をしたいと言っていた。コロナを通して田舎の良さに気付くことが出来るのかと思った。コロナを期に田舎での暮らしに憧れを抱く都会の人々に大杉での暮らしの魅力を伝えていくべきだと感じた。
養父市教育委員会の山根さんの話を聞いて、やはり、過疎化地域では空き家の問題が深刻化しているのだなと感じた。住宅の後継人や跡継ぎが減ることにより空き家が増えている。空き家は地震などの自然災害が発生したときに二次被害として多大な被害を及ぼす。だから、空き家問題は早急に解決するべき問題だと感じた。また、重要伝統的建造物であるため、大杉地区の住宅の魅力を発信することができれば移住者が現れ、空き家問題の解決に貢献できるのではないかなと感じた。


カール・ベンクスさんの古民家再生と養父市大杉地区の近似する問題は住宅の後継者、跡継ぎがいないことであると思う。しかし、カールさんの古民家は年々移住者が増加している。集落の見学者も多い。大杉地区との違いは、いかに時代に沿いながら古いものを守っていくことが出来ているかどうかにあると思う。カールさんの古民家は、古民家の景観や造りを残しながら、その地域の気候や周りとの景観との融合、また、「和」と「洋」、「新」と「古」の絶妙なバランスがとられている。どちらの魅力も兼ね備えているため、「一風変わった外観・造り」、「暮らしやすい造り」という魅力にひかれる人が多いため集落の人口は年々増えている。大杉地区でも、大杉地区特有の魅力を残しながらも時代に沿った魅力を取り入れる必要があると考える。

やはり自分は田舎暮らし、古民家暮らしにとても魅力を感じているのだなと今回大杉地区を訪れてみて改めて感じた。また、河辺さんのお話に加え、大杉地区の宿泊施設やギャラリーについて知っていくうちに、住宅は住む人の暮らしが大きく表れるものだと感じた。建物と人が互いを生かす関係になれば、ともに生き残ることが出来ると思う。その土地に合った暮らし方をそこに住む住民がすることでさらに魅力的な場所になると気づいた。(MH)

↑↓江戸期の茅葺平屋建から明治期の2階、3階の増改築で養蚕場へ

