四度目の大杉(3)ー学生レポート


生まれ変わることができれば
養父市大屋町大杉地区は、三階建養蚕農家が11.1ヘクタールに広がり、2001年に「景観形成重点地区」に指定された。また、この範囲の中で大屋川左岸に広がる約5.8ヘクタールが、2017年に「重要伝統的建造物群保存地区」に登録されている。大杉地区は養蚕集落であり、明治期では海外へ生糸を輸出するなど最盛期を迎えた。昭和期には三階建養蚕農家住宅は一般的な住宅建築となり、現在でも当時からの住宅が改修されながら残っている。
一階は生活空間、二階と三階が蚕室とされ、壁は温度・湿度調節のために土壁で造られた。屋根に抜気、四面の壁には掃き出し窓が設置された。住宅の造りは二種類があり、柱の見えない大壁造と柱の見える真壁造に分かれる。当家主屋において、大屋根は切妻であるが、東面二階上部は瓦庇が掛けられており、外観構成の変わるこのような屋根の構造は大きな特徴である。改修・増築された家屋は、景観維持のため土壁が使用されたり、地盤が強いため耐震補強が行われたり、住み心地を守るため床暖房や二重窓などが設置されている。


住宅の空き家を活用して彫刻や陶芸の展示が行われていたり、分散ギャラリー養蚕農家の中では芸術品が飾られたりするが、芸術のみでは町の持続可能性は難しいと河辺さん(建築家)はお考えであった。過疎地の後継ぎ不足は重要な問題であり、新たな解決策が必要になると思った。国選定を受けた保存地区に活気が戻ることを願う。
全体的に山根さん(教委)のお話は、養蚕農家住宅の歴史が古い、というものであった。江戸時代や大正時代からの伝統的な住宅、奥山川など当時の生活様式が分かる自然物が、ほとんどそのまま残っていることに感動した。また、当時からの住宅における短所は改善し、長所は活用する姿勢が素晴らしいと感じた。