fc2ブログ

行基縁りの地を往く (7) -土塔と頭塔

大野寺土塔 大野寺土塔2


 昨年の11月5日(金)に始まった旅の最初の訪問地は堺市大野寺の土塔であった。その翌日には、奈良市の東大寺頭塔も訪れた。復元設計との絡みで八角円堂をこれまで紹介してきたが、この二つの異色の仏塔を紹介し、旅日記のフィナーレとしたい。


大野寺土塔

 『行基年譜』によれば、神亀4年(727)行基は大野寺を創建し、同時に土塔も築いたという。大野寺は行基建立四十九院の一つに数えられ、現在も法灯を絶やしていないが、中世の一時期中断しており、江戸時代になって土塔の前に伽藍を再興した。ただし、奈良時代当初の伽藍位置はわかっていない。『行基年譜』は鎌倉時代の成立なので、神亀4年(727)という造営年代については信頼性が高いとはいえないけれども、発掘調査では、文字瓦が多数出土し、神亀4年の銘を有するものを含むので、反体制的活動をしていた若かりし行基の造営である蓋然性は高いと思われる。
 大野寺の土塔は十三重塔の最上部に円形の粘土ブロックを残すモニュメントであり、屋根も壁も本瓦を直葺きにしていた。日本建築史上類をみないこの建築は、インド的な巨大ストゥ-パを和風化したようにもみえる。とくに頂部の円形構造物(おそらく伏鉢)の「円」はサンスクリット語のマンダラに相当し、9世紀以降に隆盛する真言密教の曼陀羅との関係を想起させる。


東大寺頭塔 東大寺頭塔2


東大寺頭塔

 行基の入滅(749)後しばらくして、東大寺別当良弁が弟子の実忠に命じて造らせたのが頭塔である。南大門の正面(南方)約1kmのところに所在する五重の土塔であり、壁面に44体の石仏を貼り付けている。いわばボロブドール(8世紀後半)の日本版というべきモニュメントであり、大野寺の土塔をさらに南アジアの立体マンダラ風に仕上げたもののようにみえる。
 東大寺頭塔の形状や配置はチベット・ブータン地域の伽藍とよく似ている。戒壇状テラスの壁面に多数の仏像を配し、その頂部に円形のストゥーパ(舎利塔)を置く立体マンダラの造形はもちろんのこと、伽藍正門の正面から一定の距離を隔てて立地する配置も類似しており、宝塔/多宝塔以前の密教的シンボルと言えるのかもしれない。(小霞)


東大寺頭塔3 東大寺頭塔4



【関係サイト】
行基縁りの地を往く-土塔と八角円堂
(1) 法隆寺東院夢殿
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2468.html
(2) 栄山寺八角堂 
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2473.html
(3) 法隆寺西円堂
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2474.html
(4) 興福寺北円堂・南円堂
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2475.html
(5) 薬師寺玄奘三蔵院玄奘塔
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2477.html
(6)記者発表と報道
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2491.html
(7)土塔と頭塔
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2497.html

復元検討web会議(第1回)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2415.html
復元検討web会議(第2回)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2419.html
復元検討web会議(第3回)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2428.html
復元検討web会議(第4回)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2439.html

行基の長岡院-菅原遺跡訪問記
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2414.html
栄山寺八角堂
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2417.html
広隆寺から興福寺へ
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2423.html
奈良新聞の報道(菅原遺跡)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2429.html
法隆寺西円堂・夢殿と喜光寺
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2436.html

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

魯班13世

Author:魯班13世
--
魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カレンダー
09 | 2023/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR