鴛鴦幻想

渡り鳥の小川
秋田の友人は、毎朝五時起きで雪掻きをしている。除雪車が路肩に積み上げた雪の山を流雪溝に落としていくのだという。これは自治会をあげての仕事であり、さぼると村八分になりかねない。とんでもなくハードな作業だが、朝飯は美味いという。
その知人は20年来の東尿英機であり、じつに5種類の薬を処方されているが、なにより運動が肝要であり、そのことを思えば、朝の雪掻きも悪くはないだろう。たしかに私も雪掻きをした後、ジムでの1時間の運動よりもきついと何度か思った。しかし、今冬の鳥取は上の写真に示すとおり、雪がない。年末年始の大雪は歴史的なものだったが、自分は奈良でぽかぽか天気に恵まれていたので、なんの被害も受けなかった。今年は一度も雪掻きをしていない。暖かい冬は大歓迎である。


というわけで、家内は私を散歩に誘う。東尿英機になったのだから、散歩ぐらいしないといけないとは思うのだが、出かける前は億劫になる。歩くコースは大路川沿いの土手の道に決めている。この小川は洪水がおきやすいことで有名であり、いま土手の嵩上げ工事をしている。この季節の魅力といえば、なんといっても水鳥である。鴛鴦(おしどり)だと思い込んで、さきほどそう書いたら、関西の知人から「マガモでは?」というコメントが届いているのをアルマーレでキャッチし、帰宅早々書き直しているところです。
ヤバイ。たしかにマガモだ、間違いない。生物音痴マルだしですね。馬脚をあらわすとはこのことだ。おまけに、マガモのガモは秋田では放送禁止用語なの。菅前主将の故郷あたりで、スガモ大明神と言えば道祖伸のことです。
さて、大路川の散歩コースには少なく見積もっても、数十羽のマガモがいる。鴛鴦は暖かい春~秋には東日本にいて繁殖し、越冬のため西日本に移動してくるのに対して、マガモはどうやら北ユーラシアで繁殖し冬越えのため日本列島に飛来してくるらしい。ちなみに、鳥取は鴛鴦を「県の鳥」に指定している。姿をみるのは3月ころまでなのに。
二胡のムーンリバー。シェンリンさんから浮気してしまいました。


比翼の鳥ならず
越冬の渡り鳥といえば、ブータンのオグロヅル(black necked crane)を思い出す。映画『山の教室』でのセデュの名科白「オグロヅルが鳴くように歌って」が記憶に新しく、また、5年前に翻訳した絵本『ラジャ-天の鳥』の主役もポプジカのオグロヅルだった。オグロヅルは普段チベットを居場所としているけれども、厳寒の冬季には比較的暖かいブータンで避寒する。いちど見に行きたいですね。冬のポプジカで雪景色のなかのオグロヅルの群れを鑑賞しながら、山小屋のようなホテルでストーブを囲み、アラッを啜りながら美味しい料理を食べる。あぁぁぁ、早くブータンに戻りたい。


この週末、水鳥を撮影しようと一眼レフを持ち出して散歩にでかけた。改めて気づいたのだが、雄は頭が緑で美しく、雌はベージュの地味な色をしている。さて、県鳥の鴛鴦を例にとるならば、雄が鴛、雌が鴦であり、「おしどり夫婦」という言葉があるように、鴛・鴦仲良く群れているのかと思えば、そうではなく、雌の群れと雄の群れは別々にあるようだ。じつは比翼の鳥のように仲睦まじい「おしどり夫婦」とは幻想にほかならず、鴛・鴦は1年ごとにパートナーを変えるのだという。
大路川から水鳥が居なくなると春が来る。代わって、川岸は菜の花で埋め尽くされる。待ち遠しくもあり、淋しくもあり。


黒い種もいます。