実測演習(2)-カフェ黒田


農家に定着した書院造の諸要素
5月17日(火)。先週の茶室での実習に引き続き、郡家の古民家カフェ黒田にて実測・採寸に取り組みました。4年生以上の5人で、一人が2部屋ずつ描き、キッチン部分を除く平面図を完成させました。
私が今回担当したのは仏間とその隣の旧板間(広間=玄関横の部屋)の2部屋です。測量するにあたって建物の造りを細かなところまで見ていくと、いくつか発見をしました。仏壇は半間の押入(片開戸)横の中央奥に位置し、仏壇の前に新しい板材が上下にh張ってありました。かつては、この部分に引き違い戸(襖?)があり、敷居・鴨居を新材で隠した可能性があります。また、旧板間の前方には板間が残っていました。板材は比較的古く、増設ではなく、当初材の可能性があります。


↑(左)床と平書院 (右)棚と長押と床柱
休憩時間には、民家(農家)における書院造、すなわち武家屋敷の影響を学びました。まずはいわゆる「座敷飾の3点セット」から。座敷飾の3点セットとは、押板(床)・棚・付書院のことです。このうち付書院は出文机、棚は巻物棚を原型としており、つまり「机+本棚」であることから、書院は「書斎」のことであったことが分かります。押板(床)は、唐物数奇(中国の骨董や絵巻物)の展示棚です。カフェ黒田の場合、付書院は机を縁に出さない平書院の簡略形式になっています。このような座敷飾は武家屋敷の書院に特徴的なものですが、江戸期には豪農の住まい、明治期以降、小作農の住まいに波及していきます。





↑旧板間から式台相当部分を望む
これと関連して、長押(なげし)という建築部材にも注目しなければなりません。黒田家の場合、仏間と奥座敷の2室のみ4面に長押がめぐらされており、さらに建具に襖を使い、竿縁天井にしています。一方、旧板間は土間境を板戸、根太天井を使い、長押はなく、差鴨居を露出させています。旧板間の正面には、一般的に式台があります。式台は武家屋敷の正式な玄関であり、高位の来客は式台を通って家に入ってきました。このように、今回の実習では、古い農家に取り込まれた武家屋敷(書院造)の要素を詳しく学びました。
茶室実測から一歩前進したのは、以上の認識とともに、図面上での長押と天井の表記方法です。このたびは5人で分担して実測図を描きましたが、その日のうちに先っぽさんが合成してくださいました。私がやらなければいけないところを先に完成させていただき、感謝しています。(4年 こしひかり)


二人とも初心者としては上々の出来だと思います。若干の寸法修正が必要で、長押の位置表示があるとなお良いです。
《関係サイト》
空き家探索-上方往来河原宿
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2565.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2570.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2584.html
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実測演習-カフェ黒田
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民家のみかた 調べかた
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フォトスキャンを活用した文化遺産の分析
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上方往来を描く-河原宿
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