空き家探索(4)-上方往来河原宿その3


長押のない書院
5月18日(水)、全体ゼミにOBまで参加して、大所帯での河原宿T01家の調査に取り組みました。実測・採寸の対象は主屋と土蔵2棟であり、さらにドローンによる空撮もおこないました。
主屋の平面については、前日、4年生以上がカフェ黒田で経験したばかりです。私たち3年生は4年以上の先輩とペアを組みました。院生・4年生も茶室と黒田家で訓練してきたものの、まだまだ初心者で不慣れな中、後輩を指導しつつ自分も間取りを描くので大変だと思いました。ペアになった一組で1枚の実測図を仕上げるのではなく、全員が画板と方眼紙をもって間取りを描いていきました。この間、先生は主屋全体の平面図を描いていかれましたが、柱筋のずれが激しく、予想以上に苦戦されている模様。


平面図を作成していて分かったのは、前日のカフェ黒田がそうであったように、農家の前側に武家屋敷(書院造)の要素を大々的に取りこんでいることです。オクノマの座敷飾は、黒田家と同じく、左から平書院・床・棚と並びます。欄間も類似のものが入っていますが、長押を全く使っていません。これは古式であり、ひょっとすると、葵御紋のコテ絵を残す土蔵の年代と一致し、幕末まで遡る可能性もありますが、とりあえず今回は幕末~明治前期(推定)としておきます。


↑(左)平書院の裏側に残る古い壁 (右)仏間



この二つの座敷(ブツマとオクノマ)だけ古式を保っていて、それ以外の土間や納戸は何度かの改修や増築で大変わりしています。オクノマの背面側にまわると、古い間仕切り壁が残っていました。その壁より奥は基本的に昭和以降の改築もしくは増築ととらえるべきです。そのなかで、奥側中央のツノヤは端部の和室に緩い傾斜の天井があり、ひょっとすると戦前の増築かもしれません。その造築にあわせて、西側の土蔵を切り縮めたものと思われます。他のモダンな部屋やキッチン、廊下、玄関などは昭和戦後の改築と思われます。


休憩時に先生の描いた間取図(途中)をみせていただき、全体平面の全体像を把握したうえで、各部屋の柱間等の採寸に移行した。その後、男子はドローンを飛ばして多重空撮、女子はスケッチした各部屋を繋ぎあわせて1枚の方眼紙に清書し始めた。夕方になって浄書の作業を中断し、奥の土蔵2棟を見学させていただいた。土蔵はまたたくまに研究室OBの先輩が平面図と断面図を仕上げられた。土蔵のマグサや妻壁には葵御紋のコテ絵があり、米を幕府に上納していたとする伝承もあるらしい。土蔵の中には明治12年の『文選字解』や当時の卒業アルバムなどがあり、目を奪われた。主屋と違い、土蔵の保全状況が素晴らしくよい。(3年 豊後葵)


歴史を部屋の構造で読み解く楽しさ
5月18日(水)、河原町河原にT01家住宅にゼミ生全員でうかがった。主屋は木造平屋建茅葺で、幕末までさかのぼりうる和室2部屋と大改装した4部屋で構成される。和室2部屋はいずれも書院造の座敷であり、奥の一部屋には座敷飾の3点セットを設える。そのうち付書院は、前日の黒田家と同じ平書院とする。T01の2室には長押がなく、黒田家よりも農民の姿に近い。この書院造の2室は、本来書斎であったが、農家に波及するころには接客の座敷となっていた。床は、唐物をかざる用途であり、違棚には巻物を収めた。床柱は面皮柱とする。黒田家は南蛮系の奇怪な木材を使っており、やはりT01家の方が古式にみえる。欄間は財を誇示する装飾品である。家紋をかたどる場合もある。この和室の欄間に家紋はなかったが、瀟洒な彫り込みがあった。
改装された奥側と古い2室をつなぐ廊下の左右の柱がずれている。扉などを作るため、古い柱の隣に新しい柱を立てているところも散見された。T01家住宅のこれまでの歴史を部屋の構造で読み解く楽しさを学ぶことができた。
私は就職活動のため、午後4時には早退し、JR河原駅から津ノ井駅に列車で戻った。(4年先っぽ)




↑間取り合成図(左から豊後・丹波・安芸)
《関係サイト》
空き家探索-上方往来河原宿
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(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2584.html
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実測演習-カフェ黒田
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民家のみかた 調べかた
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フォトスキャンを活用した文化遺産の分析
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2010.html
上方往来を描く-河原宿
(6)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-824.html