空き家探索(5)-上方往来河原宿その4


葵御紋の米蔵群
T01家の土蔵2棟についてはプロが実測してくれたので、またたくまに平面と断面が完成しました。一般に歴史的建造物は、背(丈)が低い方が古く、高い方が新しい。T01家の蔵は棟の高い建造物であり、コテ絵の図柄も派手なので、ぱっとみ明治以降という印象を受けるけれども、以前からこの家の蔵は天保ころにさかのぼるという話を聞いたことがあり、このたびプロ君が気づいたとおり、入口のマグサや妻壁に三葉葵御紋のコテ絵が残っている。三葉葵の家紋といえば、徳川家以外にないわけで、当然のことながら、江戸期の建立とみなさざるをえない。


管理人さんからの聞き取りによると、「これらの土蔵は米倉であり、徳川家に米を上納していた、という話を聞いたことがある」とのこと。コテ絵の文様なども、天保(1830~1844)という年代観にぎりぎり引っかかる様式ではないか、と思えてくる。以下、実測図に即して、平面と構造形式をまとめておく。
土蔵1: 敷地の南側、小路沿いにたつ東西棟。二階建切妻造桟瓦葺。桁行7間×梁間3間。
東側に納屋が付属する。小屋組は梁を相接して積み上げ、束を用いない。
戸口のマグサと背戸川に面する妻壁の妻飾に三葉葵家紋のコテ絵を残す。


実測図清書(土蔵1=南蔵)




土蔵1(北蔵)↑マグサ葵御紋のコテ絵 ↓小屋組




土蔵2: 敷地の西側中央、背戸川に面してたつ南北棟。二階建切妻造桟瓦葺。桁行4間×梁間3間。
三葉葵家紋のコテ絵は戸口マグサのみだが、南側の妻壁は当初ではなく、短めに切り取られ
トタン張りになっている。その妻壁の南側には2間ばかりの盛り上がりがあり、基礎の跡と
思われる。当初の桁行規模は6~7間と推定される。主屋背面のツノヤを増築する際、蔵の
一部を切除したものであろう。蔵の北側には、裏木戸・味噌蔵が連続する。
小屋組は土蔵1と同じ。


実測図清書(土蔵2=西蔵)
鳥取県内で三葉葵御紋をもつ建物といえば、東照宮と大雲院以外に思いつかない。因幡東照宮(1650頃)は徳川将軍家初代家康の御霊を祀る廟であり、大雲院は徳川廟を管理した別当寺でとりわけ三代家光との関係が深い。なぜT01家が徳川家に関わるのか、これについては文献を調べるほかなさそうだ。土蔵の内部はモノで溢れていたが、土壁で日光を遮断されたせいか、部材は式年遷宮を終えた伊勢神宮の社殿のように輝いている。リフォームにはもってこいの状態にあると言えよう。
なお、土蔵群と主屋の北側は大きな空き地になっている。ここには酒蔵があったと聞く。河原宿には四大地主がいて、いずれも造酒屋を営んでいた。いまでも主屋を残すのはT01家のみである。


土蔵2(西蔵)↑マグサ葵御紋のコテ絵 ↓小屋組


《関係サイト》
空き家探索-上方往来河原宿
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実測演習-カフェ黒田
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民家のみかた 調べかた
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フォトスキャンを活用した文化遺産の分析
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上方往来を描く-河原宿
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