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映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』感想

ウクライナ大飢餓を暴くウェールズの若手記者

2022年 6月1日(水)鑑賞
1.映画の基礎情報
  題名: 赤い闇 スターリンの冷たい大地で
  監督: アグニエシュカ・ホランド(ポーランド・ウクライナ・イギリス合作 2019年)
         
2.映画のあらすじ
 *ウェールズ出身の若きジャーナリスト、ガレス・ジョーンズは、世界恐慌の中で繁栄するソ連に疑問を抱く。スターリンの資金源の謎を解くために単身でモスクワを訪れた彼は、当局の監視の目をかいくぐって、ウクライナ行きの列車に乗り込む。そして彼は、ウクライナの小さな村に潜入する。そこで彼は、ソ連の「偽りの繁栄」を目にすることとなる。(御前様)
 *1933年、世界恐慌の中で繁栄している共産主義国家、ソ連に疑問を抱いたジャーナリストのジョーンズは、スターリンの真の姿を暴くために命懸けの取材をおこなう。ウクライナの地に潜り込んだジョーンズは偽りの繁栄を目の当たりにし、大飢餓を体験する。事実を知ったジョーンズはそれを世界中に知らしめるべく行動するが、権力や妨害工作に阻まれ、嘘つき呼ばわりされる。真実を暴くことに尽力し続けたジャーナリストの戦いを描く。(阿漕やっこ)

3.ホロドモールと大躍進-スターリンを尊敬した毛沢東の大失敗
 ホロドモールは、ソ連のおこなった「農業集団化」のシステムが原因とされている。当時のソ連は日露戦争における敗戦の後遺症などにより、世界的大国の地位が揺らいでいた。そんな状況を打開するため独裁体制の共産主義のもと、 国家成長計画の「五か年政策」をとった。この政策の中心となったのが、先述した農業集団化である。表向きは農民同士で収穫物を分配するというものだったが、実際には国家が農産物を強奪する仕組みになっており、 農民たちは必要最低限の農産物も得られない状況となった。強奪された作物は、 外貨獲得の有効手段として国外に輸出された。その輸出分は国内消費量が不足するほどの過剰なもので、これにより大飢餓が発生した。
 当時の指導者スターリンは、ウクライナで大飢餓が発生しているにも拘わらず、工業化を進めるための外貨獲得に躍起になり、農作物の輸出が続けられた。もちろんこの状況に不満を表明する農民が続出したが、政府はそれを抑圧するため、都市部から共産党のメンバーが送り込まれたり、国内パスポート制により農民の自由な移動を制限したりした。
 飢餓は深刻化し、農民はろくに食料にありつけなくなり、鳥やペット・雑草などを食べて餓えを凌いでいたが、それすらも足りなくなる。ついには動物の死骸や、人の死体までも食べるようになる。誘拐した赤ん坊を食べるケースもあったとか。飢饉によって、ウクライナでは人口の約20%が餓死。その数は400~1450万人と推計されている。家畜の被害に関しては正確な数が分からなかったが、農民が農業集団化に対抗して家畜を大量殺処分した結果、家畜は全体の約 1/8に激減したという。


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 一方、中国では、毛沢東が国家主席に就いた当時、中国は欧米諸国に比べて経済が停滞しているのに加え、日中戦争などにより国土が荒廃していた。経済の立て直しを図る中国だったが、盟友ソ連との対立が深まる。ソ連では、フルシチョフ時代を迎え、スターリンの個人崇拝が批判され始める。毛沢東はスターリンを尊敬し、国家運営もスターリンを模倣しようとしていたため、フルシチョフのスターリン批判は、中国の批判に他ならなかった。「ソ連は農業・工業生産で15年後にアメリカを追い越せる」と宣言したフルシチョフに触発された毛沢東は、世界第2位のイギリスを15年で追い越そうと、「大躍進」政策を開始する。
 政策の主な内容に三つある。1つ目は製鉄を中心とした重工業政策だった。 しかし、指導者は製鉄の知識が皆無であり、製鉄所・溶鉱炉もないような状態。鉄を溶かす耐火煉瓦焼成のために、多数の歴史的建造物が破壊され、燃料の木炭のために大量の森林木材が伐採。極めつけは鉄鉱石の供給不足であり、家庭の農機具・炊事用具など鉄製のありとあらゆるものが解体されることとなった。2つ目は四害駆除運動で、農作物に影響のあるハエ・カ・ネズミ・スズメを捕獲して、農作物の生産を高めるといったものだったが、農作物を荒らすイナゴが大量に発生して大打撃となり、農民は飢えに苦しむこととなった。3つ目は農法についての政策である。 手本となったのはソ連の農業集団化であり、中国は人民公社を設立した。これを中心に集団的な農業をおこない、生産効率を高めようとしたが、農作物収穫の激減に拍車がかかった。
 中国政府の中には大躍進政策の問題点を指摘する者もいたが、裏切り者扱いされ失脚。毛沢東に逆らうことはできなくなってしまった。加えて、党員が出世のために農作物の生産高を水増しすると、毛沢東は農民から搾取する農作物の量を増やし、最終的には大飢饉を招いてしまった。この政策における被害者数は、餓死者を含めると3500~7000万人にものぼった。(御前様)

4 感想-ジャーナリストはいかにあるべきか

カニバリズムの衝撃 
 映像の衝撃からもカニバリズムのシーンの印象が強かった。それほどまでに飢餓状態になっていた時代があることは知ってはいたものの、ストーリーを立てて順に見ていくとその非常事態さが良く分かった。いまでは多くの人がスマホでいつでも現場の写真を撮ることができ、SNSなどに掲載することも容易な世の中だが、情報はメディアがすべて握っていた時代は真の事実を拡散することがいかに困難であったかが良く分かった。
 ジャーナリズムにおいて最も重要なことは真実を伝えることだと考える。しかし、ジャーナリストを仕事とする場合、必然的に視聴率の競争や、他者との競争が起こる。すると話を盛ったり、変えたり、捏造したりといった事が引き起こされる。また、メディアが発信力を持つと権力者の力によって真実を報道できない場合もある。つまり、テレビのニュースや新聞などは真実の報道がなされているか怪しい状況にある。幸い今はインターネットが普及した時代にあるため、営利を目的とせず、使命感や信念によって行動することは可能だ。現代において重要なのは、多くの情報を知った上で、何を信用するかを見極めることだと思う。(阿漕やっこ)

真実を暴く記者は蒼いのか
 ジョーンズ記者がウクライナ行きの列車に乗ってから色彩がモノ(白黒)になった。全く異なる世界に入りこんだのだと思った。そこから、ソ連軍に追われ雪原の中を延々とさまようシーンが続く。赤ちゃんが死人を運ぶ台車に乗せられた場面は特に心に残っている。現代に生きる私たちは、この惨劇を忘れてもならず、ホロドモールような悲劇を繰り返してはいけないと強く感じた。
 この映画は、真実を取材し記事にしようとしたジャーナリスト、ガレス・ジョーンズのストーリーである。真実を暴いて知らせたとしても、信じてもらえないかもしれないし、潰される可能性もある。その可能性の方がかなり高い。彼の正義感と執念ある行動には心を打たれる部分があった。しかし、ジョーンズは、満州で盗賊に襲われ、30歳で暗殺されてしまう。真実を求めたジャーナリストは悲惨な末路が待っている。真実を伝えないNYポストのデュランティ記者はピュリッツァー賞を取り消されないまま天寿を全うしている。ホロドモールを世界が知るのは第二次世界大戦後のスターリン批判以降であり、ジョーンズが生きている時代には隠蔽されていた。なんとも悲しい結末というほかないが、彼の勇気ある行動は尊重されるべきである。真実が明るみに出るまで戦う、それが真のジャーナリストとしての姿であり、この映画を通して報道の本質がいかに大切であるか、教えられた。(滅私)


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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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