fc2ブログ

中国道蕎麦競べ(25)-扇屋

1_202206221757168e8.jpg 3


 6月11~12日、出雲を旅してきました。昨年度末2月ころからこの出張企画はあったのですが、オミクロン株蔓延のため延期を重ねてきて、ようやく実現に至ったところです。出雲を訪問する目的は二つあり、一つは「山中の蕎麦屋はなぜ繁盛しているのか」という一昨年以来の主題の継続であり、JR木次線亀嵩(かめだけ)駅の駅舎内にある「扇屋そば」を訪問すること、また、いま河原町T01家土蔵の利活用計画を学生が考察する上で、類似する立地環境にある出雲中町商店街のジャズ喫茶「サテンドール」を視察すること参考にしてもらいたかったのである。
 いまひとつは12日のナターシャ・グジーさんの出雲公演に参加するとともに、出雲に避難してきている4名のロシア避難民と情報交換することでした。初回は、私の修士研究と係る3つの場所について報告します。(金巴克)


4 7_20220622180033427.jpg


亀嵩駅の扇屋そば

 6月11日(土)、まず奥出雲の扇屋そばを訪れました。JR木次線の亀嵩駅(無人駅)の構内をまるごとそば屋にしたお店です。昭和48年創業。昭和の時代にタイムスリップしたような空間だと先生は仰います。近年では、山間地域の過疎化に伴い、いくつかの路線は廃線の危機にさらされていますが、そば屋の店員さんが改札を担当するなどの工夫により、駅舎の運営とそば屋の経営を統合することで合理化を図り、同時に「山中の蕎麦屋」として大勢の客を与えている点、山間過疎地活性化の模範例と言えるのではないでしょうか。先生によりますと、鳥取の若桜線安部駅が似たような取り組みをしているそうです。「寅次郎の告白」(1991)の最終ロケ地としてパネル展示がなされ、美容院が駅舎内にとりこまれて、店員が改札をおこなっています。亀嵩駅駅では改札だけでなく、車両が停車するたびに握り飯弁当をプラットフォームで予約客に販売しています。注目すべき取り組みだと思います。   
 店内はレトロな良い雰囲気で、コロナ禍の影響をものともせず、この日もほぼ満席でした。店内の壁には、テレビ局や芸能人のサインが数多く飾ってあります。蕎麦は、国産の厳選したそば粉を使用しています。石臼でそば粉を挽き、奥出雲の天然水を使用し、手打ちで仕上げたこしのあるそばです。を提供しています。私は山かけそばを注文しました。そばはやや硬めで、軽い風味と歯切れの良い食感が特徴です。美味しかったです。



6_20220622180032c1a.jpg 5


旧大社駅修理中

 夕方、出雲市に戻り、旧大社駅を訪問しました。ところが、素屋根がかかって修理中です。旧大社駅は、明治45年(1912)に国鉄大社線の開通により開業され、大正13年(1924)2月に改築されました。大社線は出雲大社への参詣のために敷設された路線で、大社駅は平成2年の廃駅まで出雲大社の表玄関口として親しまれていました。JR大社線は、平成2年(1990)3月31日に廃止され、その後、旧大社駅舎は平成16年(2004)、国の重要文化財に指定されました。残念ながら現在、駅舎は素屋根で完全に隠され、中に入ることはできません。工事は令和7年(2025)12月20日まで続くそうです。
 但し、駅のホームは開いており、昭和に使われた古い機関車D51が展示してありました。見た目は新しく、周辺の学校の小学生たちが再塗装をおこなったようです。


8_20220622181148b51.jpg 10.jpg 9_20220622180036415.jpg


15.jpg 11.jpg


サテンドール(3)

 出雲市駅近くのホテルにチェックインした後、ホテルから徒歩5分のサンロードなかまち商店街の中にあるジャス喫茶を訪ねました。なかまちは大通りに直交する小路にあたり、近代的なアーケード商店街に看板建築が軒を連ねています。私たちが訪れた「サテンドール」というジャズ喫茶は、Lablogにこれまで二度登場しています。
 この路地裏小路商店街の全ての看板建築はみな伝統的な町家・土蔵のファサードを疑似的に近代化したものです。正面から視ると、伝統的な建物は「看板」にも隠れてまったく見えません。 ところが、横に駐車場がある場合、側面を覗くと、「うなぎの寝床」型の奥行き深い町家の建物配列がほとんど完全な姿で残っています。サテンドールは造酒屋に併設された土蔵を改装したカフェであり、そのファサードは例に漏れずモダンですが、内部は土蔵の木造構法がそのまま残っています。そのやわらかな空間のなかでジャズのバラードを聴けば一日の疲れが吹き飛んでいくようです。
 一般的なジャズ喫茶では、LPレコードをターンテーブルでまわして生音を再現し、冷蔵庫のように大きなスピーカーで拡声します。この店にももちろんそういうアナログ装置はそろえてありますが、売りとしているのは動画です。いつもは古いジャズライブのDVDを映すようですが、この夜はモノクロ映画の傑作「ローマの休日」を流していました。オードリ・ヘップバーンの代表作で、先生はハリウッド版『戦争と平和』のヘップバーン(ナターシャ役)を堪能されたばかりなので、すぐに気づいて喜ばれていました。こうしたモノクロ映画は木造のインテリアとすごくマッチしており、居心地が良かったです。
 こうした土蔵の再生例は、いま取り組んでいるT01家の土蔵のリフォーム計画の参考になります。伝統的な土蔵の構法を維持しながら、二階の床を撤去し吹き抜けにすることで、木造の骨組が露わになり、ひろびろとした空間を確保できます。外気や陽光は取り込みにくいですが、室温は季節を超えてほぼ一定であり、書物やレコードの保全に向いており、間接照明により幻想的な光の空間を演出することもできます。一方、2階の床を撤去せずに、2階を座敷風の座席にする例も知られています。lablog掲載の例を振り返ると、かつて松江にあったジャズ喫茶「常乃屋」はそういうリニューアルをしていたようです。T01家だけでなく、マカオの囲屋(路地裏長屋)のリノベーションにもおおいに参考になると思いました。
 最後にお酒についても一言。私たち院生は先生と同じイタリアのグラッパ(GRAPPA CELLINIという銘柄)を飲みました。です。グラッパは葡萄酒醸造の廃棄物にあたるブドウの皮と種を発酵・上流したスピリッツです。ブランデーよりも低級で、いわばブドウ焼酎というべき蒸留酒で、イタリアやクロアチアでは食前・食後に飲まれる庶民の酒だと聞きました。美味しかったですが、私にはちょっと辛口でした。お酒が苦手な私にとって38°の焼酎は少しきつかったのですが、チーズを食べながら全部飲み切りました。


12.jpg 13.jpg 14.jpg 


日御碕の工字殿

  出雲大社の北方の海沿いに境内を構える日御碕神社は、『出雲国風土記』に「美佐伎社」と記される由緒ある神社です。下の宮「日沈宮(ひしずみのみや)」と上の宮「神の宮」の上下二社からなり、両本社を総称して「日御碕神社」と呼ばれます。日沈宮という名称は伊勢神宮が日本の昼を守るのに対し、日御碕神社は日本の夜を守ることに由来します。昭和28年(1953)には、社殿や境内の石造建築物なども含め、国の重要文化財に指定されています。
 楼門をくぐって境内に入り、右側は「神の宮」への石段があり、正面は日沈宮です。院生2名はまず右側の上の宮(神の宮)に上がって行きました。そこから、下の宮(日沈宮)の全景を鮮明にとらえることができます。権現造の日御碕神社は本殿と拝殿を「石の間」とも呼ばれる幣殿(通路)で繋いでいます。その平面はカタカナの「エ」に似ていますが、漢字の「工」にもみえます。このような建物配置を中国語では「工字殿」と呼びます。権現造(日本)=工字殿(中国)ということです。

 崖下の境内を崖上の道路から俯瞰すると全景をとらえることができます。真っ赤な社殿の建物を回廊が囲み、正面に楼門を立てています。こうした回廊・楼門、そして赤色の塗装は天皇家の皇居、すなわち内裏の影響だと何度も先生に教えられました。神社の古い建築は伊勢神宮のように、茅葺き白木造掘立柱の素朴な構造であり、それらの社殿を複数の垣が囲み、正面に鳥居を設けるものですが、しだいに現人神である天皇の住まい(内裏)の影響が強くなり、全国の神社には回廊や楼門がつくられるようになったと考えるべきだということです。(金巴克)


18.jpg 16.jpg
17.jpg


《関係サイト》
サテンドール(Ⅹ)常乃家
http://asalab.blog11.fc2.com/blog-entry-2884.html
サテンドール(ⅩⅣ)常乃家(2)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-150.html
サテンドール(ⅩⅩⅦ)サテンドール
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1694.html
大根島-仏のクリスマス(2)日御碕の崖
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1672.html
奥出雲そば紀行
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1963.html

《連載情報》中国道蕎麦競べ
(1)安来「まつうら」
http://asalab.blog11.fc2.com/blog-entry-3057.html
(2)新見「やな木」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2275.html
(3)勝山「一心庵」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2276.html
(4)津山城東とうふ茶屋
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2277.html
(5)美作滝尾駅-木楽
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2278.html
(6)床瀬そば
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2279.html
(7)高中そば-名草神社三重塔
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2280.html
(8)EN-ナマステ
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2281.html
(9)談山神社-橘-きみなみ
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2282.html
(10)宇陀「一如庵」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2283.html
(11)再訪-ひむろ蕎麦
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2308.html
(12)そば切りたかや インタビュー
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2302.html
(13)走馬観花-平福宿の「瓜生原」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2304.html
(14)「みちくさの駅」ゼミナール
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2305.html
(15)再訪-床瀬そば
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2322.html
(16)そば処「伊とう」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2328.html
(17)そばの店「右衛門五郎」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2329.html
(18)蕎麦と旬のお料理「ろあん松田」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2333.html
(19)摩尼寺門前 門脇茶屋
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2335.html
(20)八郷の里の猫
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2366.html
(21)そば処「井田農園」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2377.html
(22)そば処「みのり」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2379.html
(23)やぶ月
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2380.html
(24)くれ竹
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2383.html
(25)扇屋そば(亀嵩駅舎)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2596.html
(26)やぶ勝
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2602.html

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

魯班13世

Author:魯班13世
--
魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カレンダー
04 | 2024/05 | 06
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR