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ウクライナ・ロシアを訪ねる出雲の旅(1)

ロシア避難民との交流
 
 ナターシャ・グジーさんの出雲公演の前にロシア避難民と情報交換をしました。早くから出張伺を申請し出雲調査の準備を進めていたところ、出雲に避難してきたロシア人が4名いるという衝撃的な報道に接し、先生がコンサート主催者にメールで問い合わせされました。すると、主催組織の重鎮Sさんがロシア避難民のアパートの世話などをしていることが分かり、急遽面談が決定したしだいです。面談の会場は、発達障害・不登校の子供たちを支援するスタンドバイYouです。面談には、コンサート主催会社のSさん、4名のロシア人をサンクトぺテルブルグで雇用していたMさん、スタンドバイYouの代表者も同席されました。
 Mさんはロシアに拠点を置く日系ITコンサルティング会社SAMIのCEOです。今回避難してきた4人はこの会社で働いています。避難民の一人はモスクワで反戦デモに参加したため拘留され、その懲罰としてウクライナ最前線に派兵される可能性が高くなっていました。Mさんは社員の身の安全を考えて、4人をロシアから出国させることにしました。友人のツテを頼り、たどり着いたのが出雲市であり、Mさんがアパートの家賃を支払い、4人を住まわせています。
 今回避難してきた4人のロシア人とMさんは日本に1,000人以上移住してきているウクライナ避難民の支援サイト「ドポモーガ(Dopomoga.jp)」を立ち上げています。避難生活に必要な住居や仕事を提供する自治体とか企業を分かりやすく地図にして掲載しています。
 
 面談では、先生とMさんを中心に避難民の日本語習得、雇用と就学、居住地など「居場所」に係る包括的な話し合いが行われました。Mさんは、ウクライナ避難民支援とのコミュニケーションが進んでおり、避難民の意識と課題について貴重なお話を聞くことができました。

①日本語習得
 まず日本語習得の問題が取り上げられました。先生はこれを大変重視されています。各地の避難民が正式な日本語教育を受けることなく、就学したり、働き始めることに懸念を抱かれているのです。実際、避難民の日本語習得方法は、自治体によって対応がばらばらであり、国の方針も決まっていません。幼稚園・保育所、小学校、中学校、高校、大学、社会人、それぞれどうすればよいのか。日本語だけを集中的に学ぶ期間を作るのか、日本語を学びながら働くのか、日本語は学ばず通訳で済ませるのか。言語の問題は雇用や就学など生活に直結しています。Mさんは、幼稚園・保育所については問題ない、とされました。しかし、小学校以上になると、授業を受けるためにも日本語の教育が必要です。

②雇用・就学
 日本語を話せない避難民は雇用・就学に問題を抱えています。Mさんは、雇用の場合、リモートワークができない人材が問題だと指摘されました。ウクライナのIT専門家は非常に優秀です。この優秀な人材をめぐって欧米では争奪戦が発生しているほどです。彼らは、パソコン1台あれば、事務所がなくとも、どこでも働くことができます。日本にいながら欧米の仕事ができるため、問題は小さいと言われます。ところが、日本ではIT技術者がハローワークを訪ね、日本語コミュニケーションができないから、と雇用を拒否された事例などが報じられています。こういう技術者は、上記ドポーモガのサイトを利用することで、自分の技能を活かせる雇用先をみつけることができるでしょう。ドポーモガはウクライナ語とロシア語で就職先を紹介しているからです。
 問題は、母子や高齢者の組み合わせで避難してきた方たちです。これらの方々はリモートワークに馴染んでいないのが一般的でしょう。そういう避難民は優秀な人材であっても、日本語会話ができないので、どのような仕事を選ぶべきか困惑しています。こうした避難民には、事実上、仕事の選択肢がありません。

③都会と地方と
 現在、避難民のほとんどは大阪や東京など大都市に集中しています。大都市は人が集まりやすく、便利ではありますが、欠点ももちろんあります。実際、避難民にとって都会のほうが大変だとMさんは指摘されます。地方では製造や一次産業など語学力が高くなくてもとっつきやすい仕事があるのに対して、大都市はサービス業が多いため、会話能力を要求されるからです。また、都会の方が生活費・家賃が高く、地方は避難民の数が少ないから支援も手厚く受けられます。その一方で、避難民が地方に住む場合、近隣に友達がいなくなってしまいます。Mさんはこのトレードオフ(両立できない関係性)を解決するのが難しいと仰います。地方に移住したその後が大事であり、たとえば誰かとご飯を食べに行こうとなっても人がいない、生活の悩みを誰に相談するのかなどサポートができないといけません。
 先生はここでも日本語学校が重要な役割を果たす、とお考えです。いろんな国からやってきて日本語を学ぶ人たちがコミュニティをつくる。自ずと友達はできるでしょう。日本語学校のなかに支援の窓口を設ければ、いろいろな相談にのってもらうこともできます。先生はまた過疎地の地域振興と避難民の支援を連動されることを考えられています。農業を始め、働き場所はいくらでもあるので、生活費が安く暮らしやすい地方で積極的に避難民を受け入れる努力をすべきだと仰います。


④避難民の方の支援状況
 ウクライナ避難民はどういうルートで来たかによって財政の動きが違います。二つのルートに大別されます。身元保証人がいるタイプと保証人がいないタイプです。保証人がいる人たちは、いったん保証人が渡航費や滞在費の全額を負担し、日本財団などに還付してもらうプロセスをとります。しかし、現在はそれがうまく回っていません。保証人がいない避難民は現地の大使館に行き、ホテルなどで待機している間に、自治体がマッチングを図り、移住先を手配する仕組になっています。日本財団の仕組がうまく回っていないため還付が遅れ、保証人がいる人たちの方が生活が苦しかったりします。逆に、身元保証人がいない避難民は政府や自治体のバックアップが厚く、支援金ももらえたりします。しかし、マッチングが決まるまで時間がかかり、ホテルなどで滞留するといった問題点もいくつかあります。

⑤ロシア避難民の苦労
 ロシアの避難民の方は自治体の支援をあまり受けておらず、働きながら自力で生活していると話していました。市から支援を受けると、ウクライナの避難民の方に申し訳ないという気持ちがあるそうです。
 避難民支援のため「ドポーモガ」でマッチングするにあたり、ロシア人のいかなるサポートも受けないというウクライナ人の反応は当然あり、きついことも言われるそうです。しかし、Mさんは、そこに向き合っていかないといけないと話します。対話を恐れて腫れ物に触るような感じになると、ウクライナ避難民の考えていることはわからないし、できることも少なくなります。実際、そういった連絡はあるが恐れず向き合って、きちんと話し合いうことで分かり合うことができると確信されています。

⑥居場所と生きがい
 Mさんが接してきたウクライナ避難民の心情には驚かされました。「寄付や補助金で生活していることが情けない、居心地がわるい」と思っている避難民が多いようなのです。たしかに、寄付等だけで生活するのならば、ニートと変わりません。やはり、自分で働いてお金を稼ぎ、自立した生活をしたい、という思いが強いのです。もちろん、そのためには日本語の習得が前提になります。日本語を学びながら、バイトでもいいから働いて生活費を得たいということです。そのようにして「生きがい」を探し、適切な雇用先をみつける。その結果として、自分の「居場所」を確保できるようにしなければなりません。避難民には避難民にふさわしい「居場所」があります。その居場所は一人ひとり異なっています。そこに辿り着くのを補助するのが、避難民支援の正しい姿だと思いました。(滅私)


0612ロシア避難民記念撮影@スタンバイユー出雲
会談後の記念撮影
ロシア避難民との交流

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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