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戦争と平和(2)-ソ連版Disc1

2022年 6月15日(水)鑑賞
1 動画の基礎情報

 題名 戦争と平和(ソ連版大河ドラマ、1965~67年制作)

 監督・主演(ピエール役) セルゲーイ・ボンダルチューク

2 Disc1のあらすじ
 1805年のペテルブルクの社交界。ナポレオンのフランス軍は帝政ロシアの国境に迫っていた。ピエール・ベズーホフはベズーホフ伯爵の私生児で、将来の進路を決められないまま、仲間の貴族たちとふしだらな生活に耽っていた。しかし、父の伯爵が亡くなり、莫大な財産を受け継ぐことになる。勧められるまま美女エレンと結婚するが、妻の放蕩ぶりに悩まされたピエールは、妻の愛人とされるドーロホフと些細なことで決闘し、相手に重傷を負わせてしまう。一方、ボルコンスキー公爵家の嫡子でピエールの友人、アンドレイ・ボルコンスキーは、ナポレオンのフランス軍とオーストリアのアウステルリッツで会戦し、クトゥーゾフ将軍の副官として中隊を率いて戦ったが、他国での戦争でもあって士気が上がらない。軍旗を掲げて敵中に躍り込んだものの負傷して倒れる。その姿を見た敵将ナポレオンは美しい死と讃える。命を取り留めフランス軍の捕虜となったアンドレイは人生の空しさを知る。九死に一生を得て、父のもとへ帰ってきたが、このとき彼の子を身ごもっていた妻リーザは正気を失い、出産直前に生還した夫の顔も見分けられぬまま死んでゆく。アンドレイは生きることへの望みを失い、世間から隠れて暮らそうと考える。(Wikipedia参照)

3 鑑賞を終えての感想
 戦闘シーンが印象的であった。通常の戦闘シーンであれば、主人公や重要人物を中心に描かれる。戦争と平和では、多くのエキストラを使い、現実さながらの戦闘が描かれていた。とりわけ空撮映像の戦闘シーンが圧巻であった。
 映画の登場人物が多すぎて話しているのが誰かわからないシーンが多々あった。しかし、事前に漫画やあらすじを読んで内容を少し確認していたため、話の展開は理解することができたと思う。また、第1部では、ナターシャの登場時間が少なかった。おてんば娘のナターシャが伏線として登場するのみ。漫画では、ナターシャが大人になり、可愛らしく描かれていたため、第2部以降の登場に期待したい。(滅私)


 日曜洋画劇場圧縮版


Disc1に通底する意識

【質問1】 冒頭に近い場面で、軍人たちが酒を飲んで騒ぎ、高層建物の窓を割り窓枠に乗ってラム酒をラッパ飲みする場面は何なのか?
 窓枠という危険な場所に腰かけて、酔った状態からのラム酒のガブ飲み。「俺は絶対に倒れないぞ」という意思表示にもみえる。そして次は「さぁ、女のところへ行こう」とみんなをけしかける。この男の名はドーロホフである。ドーロホフというと、映画内でピエールとの決闘に負けた人物で、その後、名声と栄誉を追う人物だが、じつは家族思いであるということが明かされている。問題のシーンはこの性格との対比になっているのではないか。「絶対に倒れないという意思表示」=「絶対に名声と栄誉を得るんだ!」という彼の人物像を描いていると同時に、彼は母親のことを「天使」というほどの家族思いであるということが分かる。酒を過剰に飲んで、次は女のところへ行くというかなり暴れ者でも、じつは大切に思っている人がいるのだということ を描きたかったのではないかと考える。

【質問2】 このDisc1が通底して語ろうとしていたものはなにか?
 「生き方」について語ろうとしていたのではないか。アンドレイは序盤、名声と栄誉を追求する人物として描かれていたが、妻に先立たれたことを受けて、家族思いな人物への心情の変化がうかがえた。自分の求めるものを追求するのではなく、自分の大切と思える人を愛していく。その生き方が良いということを語りたかったのではないか。人はいつか死ぬものだが、それがいつかは分からない。だからこそ自分が大切と思える人を愛し、その人を幸せにするために生きる。それが生きるうえで大事なことなのかもしれない。 (御前様)

死の恐怖

 Disc1を通して暗示されるのは「死(に対する恐怖)」だと思います。

・窓枠にたってラム酒を飲み干す暴挙
・ピエールの父の死とロシア正教の祭祀(死にたくない、と言って泣き叫ぶ男)
・出陣前の結杯の儀式
・リーザの出産と死
・決闘
・アンドレイの負傷(アウステリッツ戦)

 などはすべて「死」と関係しており、リーザがもたらした新しい生命と春の息吹の場面とともに「生」に転換していく。

 高層建築の窓枠に立ってラム酒を一気飲みする。「俺は死を怖れていない」と虚勢を張っているのであり、虚勢を張るのは「死を怖れている」証拠であろう。その後、女のところに行くのは、まもなく戦地で命を落とす前に最後の快楽に耽溺しようという行いである。思い出すのは、大分の漁村調査(1970年代)だ。沿岸漁民は「板子(船板)一枚向こうは地獄」という意識に支配されている。海が荒れて船が転覆すれば命を落とす。そういう不安な気持ちを押し隠すため、朝から酒を飲む。朝から晩まで酔っ払っている。
 また、漁獲も不安定であり、豊漁の日もあれば、不漁の日もある。豊漁で大金を手にすると、速攻で使い切る。江戸っ子の「宵越しの銭はもたねぇ」という価値観と同じだ。金を貯めても、命がなくなったら意味はない。だから使う。美味いモノを食べ、大酒を呑み、風俗(当時はト○コと呼ばれていた)で遊ぶ。明日の命を保証されない漁民の意識や価値観は、武士=軍人のそれと重なり合う。明治~戦前の軍人もまた出陣前は遊郭に通い詰めだった者もいると聞く。
 ロシアの軍人も同じような感覚であったと思われる。出陣前の結杯=破杯の儀式は日本にもある。出陣前に最後の盃を交わし、カワラケの杯を割る。それは、お国のために戦場で活躍して死に二度とこの場に戻ってこないという誓いであると同時に、自らの体内にある「厄」を盃に移し、それを割ることで厄除けの呪いにする信仰でもあるという。(教師)


 ご存じ『ひまわり』(1970)です。
1:27の瞬時の映像に注目してください。リュドミラ・サベリーエワという女優さんは、記憶を失ったマルチェロ・マストロヤンニがウクライナの地で結婚する若い女性を演じている。ソフィア・ローレンに決して劣らない美貌と存在感があります。この女優さんがソ連版『戦争と平和』のナターシャ役に抜擢されるんですね。選考にあたって、ハリウッド版のナターシャ役だったヘップバーンに似ていることという条件があったとか。たしかに初見時、ヘップバーンに似ているという印象がありました。『ひまわり』に出ているんだから、実績も十分ですね。


《関係サイト》
戦争と平和
(1)ヘップバーン > トルストイ
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2548.html
(2)ソ連版Disc1
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2599.html
(3)ソ連版Disc2・Disc3
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2600.html
(4)ソ連版Disc4
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2605.html

映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』感想
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2594.html
映画『ウクライナ・クライシス』感想
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2590.html

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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