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美山紀行(Ⅰ)

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謎の埋もれ木

 教授のお姉さまは彫刻家であり、アトリエが京都府南丹市美山にある。そこに長径約180㎝の埋没木材の根っこが保管されており、年代を調べて欲しいという依頼があった。この材は、山口県阿武の圃場整備で出土し、鎌倉時代に東大寺大仏殿を復興した重源(山口出身)が用材として使用したヒノキ材の残りだと新聞報道されたいる(1996発見・1998報道)。6月16日(金)午後、野口家アトリエで放射性炭素年代測定ためのサンプル採取をおこなった。この大木の根っこが、重源の活動時期と重なるかどうか、確認するためである。調査には、年輪幅の変動による年輪年代測定の専門家、H室長(奈文研)も参加されたが、年輪が鮮明で均一ではなかったため、その方法は途中で断念した。鉋やカッターなどで木材の木口面を削ったが、木材が湿っていたという理由などもあり、上手くいかなかったのである。結果、放射性炭素年代測定のためのサンプル採取のみ実施することになった。放射性炭素年代測定は、C14の半減期(Libbyの半減期5568年)を利用して木材の年代を推定する方法である。

野口家 木材 概念図sam

放射性炭素年代測定のためのサンプル採取

 調査対象の木材を「一般部」「突起部」に分け、年輪サンプルを採取した。まず、どちらも木材の外側から内側に向かって5年輪間隔でマチ針を打ち、その合計(確認可能な総年輪数)を数えた。ただし一般部は、木材の中心部分の年輪が鮮明ではなかったため、年輪が肉視で確認できる範囲にとどめた。結果、マチ針の合計は65本を数え、これは325年輪に相当する。また、年輪不鮮明の中心部分は、最も内側のマチ針から樹心までの距離を測った。その測定値は12㎝。その後、木材の長さ・幅等を測った。一般部と突起部を含めた全体の長さはおよそ190㎝で、一般部の横幅の最も長いところはおよそ110㎝(髄を通る部分の長さは101.5㎝)、横幅の最も長いところはおよそ92㎝(髄を通る部分の長さは約95㎝)であった。


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米粒大の年輪サンプルを採る方法

 寸法計測後は、サンプルを削り出す作業へと移った。今回は1点計測のAMS法ではなく、3点計測のウィグルマッチ法で年代を推定するため、年輪サンプルは確認された325年輪のうち、最も外側、中心部、内側の3点で採取する。ただし、この木材の表皮に近い部分が劣化しており、その部分の年輪データが不安定であるとして、年輪数を確認の上、少し内側の年輪サンプルも採取した。計4か所である。
 年輪サンプルは米粒大のチップを彫刻刀などで削りとる。原則1年輪だが、このたびは年輪幅が短かったので、①最外1~2年輪、①’最外よりやや内側8~10年、②中心93~95年輪、③内側222~224年輪となった。彫刻刀を2本使い、年輪の線に沿って切り込みを入れ、掬い上げるようにしてチップを得た。それらのチップはアルミホイルで丁寧に包み、アルミホイルとラベルに、
  ① 2023年6月16日 野口家 木材 一般部 上から1~2年輪目
  ①' 2023年6月16日 野口家 木材 一般部 上から8~10年輪目
  ② 2023年6月16日 野口家 木材 一般部 上から93~95年輪目
  ③ 2023年6月16日 野口家 木材 一般部 上から222~224年輪目
と記して写真撮影し、ジップロックに収めた。これで作業は終わり。

一般部の調査を終えて

 初めて年輪差プル採取に携わった。一般部はとくに年輪数が多く、年輪が見えにくい箇所が少なくなく、ライト付ルーペなどを駆使して、なんとか成し遂げた。大変な作業だと感じるとともに、やりがいのある調査でもあった。なお、調査対象の木材は、教授のお姉さまが「鎌倉時代説」を頑なに信じておられたが、調査の途中で、日本海側に点々と分布する縄文時代の埋もれ木ではないか、と年代学の専門家、H室長が閃かれた。縄文の埋もれ木が彫刻できるほどの硬さを有するという点、にわかには信じがたいけれども、どういう結果であっても相当古い木材であるのは間違いなく、測定結果を待ち遠しく感じた。(アープ)


野口アトリエ集合写真01


《連載情報》 美山紀行
(Ⅰ) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2687.html
(Ⅱ) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2683.html
(Ⅲ) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2695.html
(Ⅳ) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2696.html

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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